70 / 97
第2章
069
しおりを挟む
ベギーネルは演習場の正門を目指しながら、妙に甘えたような第一声を告げた。
「こんばんはー。月がキレーですね、オニーサン」
『……夜分遅くに悪戯電話とは。恐れ入ります』
「だしょ? そんで、かなりわりー知らせと、とってもわりー知らせ。どっちから聞いちゃう?」
『もう何でも構いませんが』
「じゃ、超わりー知らせから聞けよ」
そんな選択肢はなかっただろう、と言いたそうにしているのが、顔を見なくてもわかる。
ベギーネルは躊躇いなく続けた。
「聖杯のヤツ、闇のオネーサン持って来た。意外に美人じゃね? あれ」
唐突な報告に、ケータイの向こうで空気が硬直するのがわかった。
沈黙を通り越して何も返せずにいる。
思考そのものが止められたように窺えたが、それもほんの一瞬のことだ。
電話相手は、すぐに動揺のない声音を返してきた。
『……それでどうされたんです? 大人しく頂いて帰ったんですか』
「じゃ、とってもわりー知らせ。横取りされちった。ごめんちゃい」
捨て鉢もいいところなベギーネルの言い草に、電話の彼は何を思ったのだろう。
返す言葉もないといった空白。
やがて、男の声は低い声で応じた。
『なるほど。では、かなり悪い知らせというのは?』
「そーそー。聖杯のおっちょこちょいの所為で、取引おじゃんなのに。こっちのプレゼント、返って来ねんだわ」
『何をおっしゃっているんですか』
「あの0番の毒、聖杯のヤツが使っちった」
ガエブルグが毎度押し付けようとする度、グラールが否認したり破棄してきた取引材料だ。
0番の血液から抽出したという、試験管に込められた毒。
イルエが聖剣の少年に叩き付けたのは、アタッシュケースの中に安置されていたそれだった。
あの少年にどんな悪影響を及ぼすか。
研究員いわく、以前取引を邪魔された際に持って行ったのものよりは質が悪く、効果も劣る代物らしいので、紋章術との相性が特別悪くない限り、二度と紋章術が使えなくなったり、気が狂ったりということはないだろう。
しかし、一定期間、あるいは一定時間、使い手の体に何らかの支障を来たす可能性はある。
ベギーネルにとっては、その様子を目の前で観察できないということ以外、大して悪い知らせでもないのだが、電話相手にとっては違う。
何度目のだんまりだろう。
疲れたようなため息が聞こえた。
『……貴重な原液だと、事前に申し上げた筈なのですが』
「いーっしょ? 別に減るもんじゃねんだ」
『もう結構。取引材料に用いるのは、今後一切やめて頂きたい』
「怒んなって、オニーサン。それよか、聖杯のヤツ、別の交換条件出してきたんだわ」
相槌のないケータイに、続きを促される。
彼女は引きずるスーツの襟首を持ち直して、あくびの後に付け足した。
「カリバーンの赤毛リーダー、殺しゃいーって」
今までの聖杯より、話通じんじゃね?
反応を試すように言い足された、ベギーネルの一言。
だが、電話の声は、そうですか、と平淡な返事を口にした。
『悪い知らせは以上ですか? こちらも忙しいもので、失礼したいのですが』
特に感慨もない応対だった。
ベギーネルはふと立ち止まると、辿り着いた演習場の正門に背を預ける。
ガシャリ、と夜の静粛に金属音が響く。
常に感情が抜け落ちたように、どうでもよさげに話す彼女の割りには、不自然な間だった。
ベギーネルは真っ赤なケータイに、問い掛ける。
「止めねーの? オレ、冗談で言ってんじゃねんだ」
確認とも取れる言葉だ。
彼女が言っただけに、意外に思ったのかもしれない。
毎度落ち着き払っている彼にしては、珍しく驚いたような静黙が置かれた。
ベギーネルは、相手が何か言う前に続ける。
「だってオニーサン、聖剣とお友達っしょ」
やけに冷静な、確信のこもった口上だった。
今更、容易く情報を漏らすグラールでもないし、ガエブルグもまたそこまで迂闊ではない。
取引の情報がカリバーンに渡った経緯を考えていた彼女だったが、それも無駄に終わった。
闇の紋章術師の身柄を横取りされたことを告げた時、彼はそれ以上の疑問を口にしなかった。
どこの誰に横槍を入れられたのか。
闇の紋章術師の身柄は無事で済みそうなのか。
電話相手は生真面目な男だ。
常ならば、真っ先に聞いてくるのが当然の筈だった。
しかし、彼は深く問い掛けることをしなかった。
それは何故か。理由があるとすれば、ひとつしかない。
聞くまでもなく、知っていたからだ。
カリバーンに取引の情報を流したのは、恐らくこの男だろう。
それなら、横槍を入れてきた相手など改めて聞く意味がないし、カリバーンがどういった組織なのかを知っていれば、闇の紋章術師をどう扱う相手なのかも自ずとわかる。
こいつしかいない、と。
ベギーネルは、確信にも似た推測を脳裏に、電話相手の返事を待つ。
だが、返ってきた反応は、少女を少なからず驚かせた。
『仮にそうだとして、何故止める必要が? そもそも、止めても止まらないでしょう』
動揺も焦燥もない。
妙に静かな返答に、ベギーネルはカラスマスクの内で、思わず口元を吊り上げた。
「……ちょい寝ぼけてね? オニーサンって、もっとお友達思いっしょ?」
『では、寝ぼけるような時間に連絡しないで頂きたい。失礼します』
「あータンマ。勝手に切んないでチョ。殺しに行っちゃう」
語尾にハートでも付けそうに、ちゃらけた口調で言うベギーネル。
紋章術の使い手の「殺す」宣言が、どれほど他人に圧迫感を与えるものなのかを、彼女はわかっていないのかもしれない。いや、わかっていてあえて言っているのか。
図らずも電話を切るタイミングを逃した彼に、ベギーネルは真っ平らな声で話し続ける。
「今から飯行かね? オニーサン。オレ、緊張して小腹減っちったんだわ」
『貴方でも緊張という単語をご存知でしたか。丁重にお断りします』
「お断りとかお断り。いーっしょ、今日は、眼鏡ぶっ壊さねーどいてやんよ」
『そう言って、会う度に叩き割りますがね』
「気のせいじゃね? ホント、オレ今日はいー子にしとく」
何かあったのか、と聞きたげな沈黙。
ベギーネルは月のない真っ暗な空を見上げると、ふと漏らした。
「昔の友だち、引き止めらんなかった。柄じゃねーけど、ご傷心中なんだわ」
まるで遠い思い出話でもするような、抑揚のない声音。
逆に痛々しくさえ思えるほどだった。
呟いた彼女に、ケータイは何も返さなかった。
それを肯定と取ったのか、少女はぽつぽつと待ち合わせ場所を付け足す。
眼鏡を奪い取って叩き割ってみせた際の、彼の眉間のしわを思う。
ベギーネルは片手に青年を引きずったまま、静々と演習場を後にした。
「こんばんはー。月がキレーですね、オニーサン」
『……夜分遅くに悪戯電話とは。恐れ入ります』
「だしょ? そんで、かなりわりー知らせと、とってもわりー知らせ。どっちから聞いちゃう?」
『もう何でも構いませんが』
「じゃ、超わりー知らせから聞けよ」
そんな選択肢はなかっただろう、と言いたそうにしているのが、顔を見なくてもわかる。
ベギーネルは躊躇いなく続けた。
「聖杯のヤツ、闇のオネーサン持って来た。意外に美人じゃね? あれ」
唐突な報告に、ケータイの向こうで空気が硬直するのがわかった。
沈黙を通り越して何も返せずにいる。
思考そのものが止められたように窺えたが、それもほんの一瞬のことだ。
電話相手は、すぐに動揺のない声音を返してきた。
『……それでどうされたんです? 大人しく頂いて帰ったんですか』
「じゃ、とってもわりー知らせ。横取りされちった。ごめんちゃい」
捨て鉢もいいところなベギーネルの言い草に、電話の彼は何を思ったのだろう。
返す言葉もないといった空白。
やがて、男の声は低い声で応じた。
『なるほど。では、かなり悪い知らせというのは?』
「そーそー。聖杯のおっちょこちょいの所為で、取引おじゃんなのに。こっちのプレゼント、返って来ねんだわ」
『何をおっしゃっているんですか』
「あの0番の毒、聖杯のヤツが使っちった」
ガエブルグが毎度押し付けようとする度、グラールが否認したり破棄してきた取引材料だ。
0番の血液から抽出したという、試験管に込められた毒。
イルエが聖剣の少年に叩き付けたのは、アタッシュケースの中に安置されていたそれだった。
あの少年にどんな悪影響を及ぼすか。
研究員いわく、以前取引を邪魔された際に持って行ったのものよりは質が悪く、効果も劣る代物らしいので、紋章術との相性が特別悪くない限り、二度と紋章術が使えなくなったり、気が狂ったりということはないだろう。
しかし、一定期間、あるいは一定時間、使い手の体に何らかの支障を来たす可能性はある。
ベギーネルにとっては、その様子を目の前で観察できないということ以外、大して悪い知らせでもないのだが、電話相手にとっては違う。
何度目のだんまりだろう。
疲れたようなため息が聞こえた。
『……貴重な原液だと、事前に申し上げた筈なのですが』
「いーっしょ? 別に減るもんじゃねんだ」
『もう結構。取引材料に用いるのは、今後一切やめて頂きたい』
「怒んなって、オニーサン。それよか、聖杯のヤツ、別の交換条件出してきたんだわ」
相槌のないケータイに、続きを促される。
彼女は引きずるスーツの襟首を持ち直して、あくびの後に付け足した。
「カリバーンの赤毛リーダー、殺しゃいーって」
今までの聖杯より、話通じんじゃね?
反応を試すように言い足された、ベギーネルの一言。
だが、電話の声は、そうですか、と平淡な返事を口にした。
『悪い知らせは以上ですか? こちらも忙しいもので、失礼したいのですが』
特に感慨もない応対だった。
ベギーネルはふと立ち止まると、辿り着いた演習場の正門に背を預ける。
ガシャリ、と夜の静粛に金属音が響く。
常に感情が抜け落ちたように、どうでもよさげに話す彼女の割りには、不自然な間だった。
ベギーネルは真っ赤なケータイに、問い掛ける。
「止めねーの? オレ、冗談で言ってんじゃねんだ」
確認とも取れる言葉だ。
彼女が言っただけに、意外に思ったのかもしれない。
毎度落ち着き払っている彼にしては、珍しく驚いたような静黙が置かれた。
ベギーネルは、相手が何か言う前に続ける。
「だってオニーサン、聖剣とお友達っしょ」
やけに冷静な、確信のこもった口上だった。
今更、容易く情報を漏らすグラールでもないし、ガエブルグもまたそこまで迂闊ではない。
取引の情報がカリバーンに渡った経緯を考えていた彼女だったが、それも無駄に終わった。
闇の紋章術師の身柄を横取りされたことを告げた時、彼はそれ以上の疑問を口にしなかった。
どこの誰に横槍を入れられたのか。
闇の紋章術師の身柄は無事で済みそうなのか。
電話相手は生真面目な男だ。
常ならば、真っ先に聞いてくるのが当然の筈だった。
しかし、彼は深く問い掛けることをしなかった。
それは何故か。理由があるとすれば、ひとつしかない。
聞くまでもなく、知っていたからだ。
カリバーンに取引の情報を流したのは、恐らくこの男だろう。
それなら、横槍を入れてきた相手など改めて聞く意味がないし、カリバーンがどういった組織なのかを知っていれば、闇の紋章術師をどう扱う相手なのかも自ずとわかる。
こいつしかいない、と。
ベギーネルは、確信にも似た推測を脳裏に、電話相手の返事を待つ。
だが、返ってきた反応は、少女を少なからず驚かせた。
『仮にそうだとして、何故止める必要が? そもそも、止めても止まらないでしょう』
動揺も焦燥もない。
妙に静かな返答に、ベギーネルはカラスマスクの内で、思わず口元を吊り上げた。
「……ちょい寝ぼけてね? オニーサンって、もっとお友達思いっしょ?」
『では、寝ぼけるような時間に連絡しないで頂きたい。失礼します』
「あータンマ。勝手に切んないでチョ。殺しに行っちゃう」
語尾にハートでも付けそうに、ちゃらけた口調で言うベギーネル。
紋章術の使い手の「殺す」宣言が、どれほど他人に圧迫感を与えるものなのかを、彼女はわかっていないのかもしれない。いや、わかっていてあえて言っているのか。
図らずも電話を切るタイミングを逃した彼に、ベギーネルは真っ平らな声で話し続ける。
「今から飯行かね? オニーサン。オレ、緊張して小腹減っちったんだわ」
『貴方でも緊張という単語をご存知でしたか。丁重にお断りします』
「お断りとかお断り。いーっしょ、今日は、眼鏡ぶっ壊さねーどいてやんよ」
『そう言って、会う度に叩き割りますがね』
「気のせいじゃね? ホント、オレ今日はいー子にしとく」
何かあったのか、と聞きたげな沈黙。
ベギーネルは月のない真っ暗な空を見上げると、ふと漏らした。
「昔の友だち、引き止めらんなかった。柄じゃねーけど、ご傷心中なんだわ」
まるで遠い思い出話でもするような、抑揚のない声音。
逆に痛々しくさえ思えるほどだった。
呟いた彼女に、ケータイは何も返さなかった。
それを肯定と取ったのか、少女はぽつぽつと待ち合わせ場所を付け足す。
眼鏡を奪い取って叩き割ってみせた際の、彼の眉間のしわを思う。
ベギーネルは片手に青年を引きずったまま、静々と演習場を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
〖完結〗終着駅のパッセージ
苺迷音
恋愛
分厚い眼鏡と、ひっつめた髪を毛糸帽で覆う女性・カレン。
彼女はとある想いを胸に北へ向かう蒸気機関車に乗っていた。
王都から離れてゆく車窓を眺めながら、カレンは夫と婚姻してから三年という長い時間を振り返る。
その間、夫が帰宅したのは数えるほどだった。
※ご覧いただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いいたします。
さようならの定型文~身勝手なあなたへ
宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」
――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。
額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。
涙すら出なかった。
なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。
……よりによって、元・男の人生を。
夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。
「さようなら」
だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。
慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。
別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。
だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい?
「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」
はい、あります。盛りだくさんで。
元・男、今・女。
“白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。
-----『白い結婚の行方』シリーズ -----
『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる