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第2章
085
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「こちらこそ。これからよろしくお願いしますね」
にこにこと微笑むワズサに、にこりと笑い返すビビアン。
未だ同盟に乗り気ではないクロノだったが、社長が頷いた以上口を挟むわけにもいかず、複雑な気持ちのまま、ソファの背もたれに体を預け、天井を仰ぐ。
少年の心情を感じ取ったらしいミントがどこか不安そうな視線を向けてきたのに気付きながらもクロノは、もしこの場にいたら自分と同じく明白は否定をしたであろう旧友を思う。
部屋に充満した毒を、引っ張り連れた相棒の紋章術で一掃させた後、満身創痍のクロノたちには見向きもせず、彼女の首根っこを掴んだまま早々に立ち去った銀髪。
ミントの話だと、ミラノは何かに気付いて慌てていたらしく、更にナツメの話によれば、その慌て気味のミラノが社長に何か伝えているところでシグドに拉致られたとのことだ。
何故だろうか、嫌な予感しかしない。
「あら、シグドくん」
丁度良かったわ、とワズサが声を上げた。
クロノは、ソファに寄り掛かったまま、視線だけ部屋の入口へ向ける。
控えめなゴシック服と言う普段着にしっかりネクタイまでしただけではなく、エンブレムのついたチョーカーと武器装備という完璧な外装をしたシグドとミラノがそこに立っていた。
ミラノをそこに待たせ、シグドだけが部屋に入る。
「ついさっき、カリバーンとの同盟が決まったのよ」
「は? 何だそれ。……いや、その話は後で聞く。それより、さっさと行って来る」
「ええ、わかったわ。二人共、気を付けるのよ。あと建物を壊さないように」
ワズサの言葉に、シグドとミラノは同時に頷く。
不穏極まりない注意だが、社長はこれを言わないと気が済まないらしい。どこかの誰かさんのように意図的にする人はいないが、基本的に対紋章術の設備のない街中では、術戦で暴れただけでも尋常じゃない被害が出る。
「……って、お前。何しに行くんだよ」
思わずクロノは体を起こした。
普段の調査程度ならば、使い手相手に暴れることは滅多にないわけで。彼女のあの忠告は、最初から戦闘がわかっている時のみのものだ。
こんな時に、リアフェールに残っていて動ける戦力であるシグドとミラノの二人を同時に駆り出すなんて、それほど大変な、もしくは危険な仕事なのだろうか。
「仕事だ」
「見ればわかる。内容だよ」
「『赤頭巾』及び『茨姫』の保護」
その言葉に、クロノだけでなく他のカリバーンメンバーも表情を変えた。
「どういう事なの、一体……?」
「ついさっき、『赤頭巾』と『茨姫』の魔導反応を感知したって報告があったのよ。もしかしたら交戦中かもしれないって判断したから、二人に行ってもらうのよ」
見知らぬ『茨姫』はともかく『赤頭巾』はカリバーン本部で保護されているはずだ。
それはつまり、どっかの結社が鍵を奪いに来たのか、それとも例の条件達成のため聖槍が強襲に来たのか。どちらにしろ言えるのは、カリバーン本部が攻撃を受けた、ということだ。
誰がどうやってあの隠れ屋敷の場所を突き止めたのかわからない以上、いくらシグドたちが行くと言っても安心は出来ない。というか、シグドたちが行くこと自体が安全とは言い難い。
ただでさえカリバーンはリーダーが倒れて戦力が壊滅的だというのに、その上あの屋敷が壊されでもしたら、本格的に結社存続が危うくなってしまうではないか。
クロノは立ち上がるとシグドに詰め寄った。
「俺も行く」
「足手まといだ」
「シグド」
「うるせえ」
「俺も行く」
「来んな」
短い問答を繰り返し、クロノとシグドは睨み合う。
その視線を遮るように、着物の袖をヒラヒラさせながらナツメが二人の間へと割り込んだ。
「行く行かないよりもさ、そんな重要な話を隠されるなんて、せっかく条約結んだのにあんまりじゃないかな?」
普段と変わらない口調だったけれど、その奥に見える怒りの色。
じろりとワズサを見るナツメ。
「あら。共有する情報は、自分たちにとって有害にならない程度のはずでしょう?」
口調こそは困り果てたものではあったが、ワズサは白々しく答えた。
屁理屈で返されたからか、ナツメはぷくりと頬を膨らます。
だが、ビビアンのわざとらしい咳払いが全員の注目をかっさらった。
「有害か無害かで考えるよりも、損か得かで考えるべきだわ。…………だから、私からひとつ提案があるの。カリバーンとリアフェールの使い手で合同編成チームを作って、そのチームに今回の仕事をやらせましょう」
「そうね。せっかくの同盟ですもの。賛成よ」
カリバーンとリアフェールが、合同で仕事を行う。
立候補したいクロノではあったが、この場の決定権はビビアンも持っていかれた。
リアフェール側にシグドがいるのなら連携面でクロノが有力だろうが、何しろ少年はビビアンに戦力外通告をされている。現存しているカリバーンの戦力はナツメだ。ここでクロノが手を上げれば、触発されたナツメに対抗される。
確実にクロノが同行するためには、カリバーン側の立候補よりも、リアフェール側から指名される方が確率は高い。と言うか、それしか可能性はない。
「あの」
そろりと、ミントが手を上げた。
「わたしが、一緒に行っても良いですか」
クロノとナツメが同時にミントを見た。
先を越された悔しさと、彼女の身の心配で、二人は言葉が出て来ない。
しばらく考え込んでいたビビアンだったが、ひとつ頷いてワズサを見る。
「彼女が同行したいらしいけれど、どうかしら?」
「二人はどう?」
「別に誰でも構わねえよ」
ため息混じりに答えるシグドを、クロノは睨んだ。
戦力が不安だの何だのと断ってくれれば良いのに、とのぼやきはクロノの胸中のみだ。
「じゃあ決まりね」
「えー。ミントちゃんだけじゃ危ないよー」
「相手が鍵かもしれないなら、もう一人いた方が良いと思いますよ」
ビビアンの言葉に、ナツメとクロノが噛み付く。
呆れた表情で二人を見やった彼女は、盛大なため息をひとつ零した。
「じゃあ、彼女の同伴者も付けるわ」
その同伴者と言うのはクロノのことで良いのだろうか。
呆気に取られている少年の視界で、ナツメがつまらなさそうにソファへと戻った。
「ナビィにはこちらから連絡して別ルートで離脱してもらうから、貴方たちは『赤頭巾』の方をお願い。屋敷と直結しているドアが近くにあるはずだから、そこを使ってちょうだいね」
「了解」
ビビアンの言葉を聞きながらクロノは簡単に身支度をチェックする。
そして隣に立つミントを見やる。
「大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です」
力強く頷いたミントは、心無しかこの仕事に意欲的にも見える。
本当に大丈夫なのかと一抹の不安を覚えるクロノが、準備を終えたと言わんばかりにシグドを見やれば、彼は至極面倒そうな表情を浮かべていたが、少年の視線に気付くと、さっさと踵を返して歩き出した。
クロノとミラノ、そして少し遅れてミントがその背を追い掛ける。
リアフェール本部を出てからは、クロノの先導でカリバーン直結のドアをくぐった。
その途中で、シグドがクロノへ声を掛ける。
「先に言っておくが、鍵の魔導反応を感知したってことは、異空間が開いたってことだ。今まで通りには戦えないから、覚悟はしておけよ」
あの空間では紋章術を使えない。
以前『赤頭巾』と戦った時に身を持って体験したし、後でミントにも告げているので彼女も知っている。それをシグドが知っているとは思えないから、単純な気遣いだったかもしれないが、わざわざそれを内緒話のしにくい静かなこの通路で、全員に聞こえるように伝えたことに別の意図があるように思えた。
例えばクロノが紋章術を使えないことを隠すためとか。
まさかな、と胸中で一蹴したクロノの目の前に、シグドが小瓶を付き出した。
「お前に渡しておく」
「何だこれ」
「社長特製の紋章石」
中には飴玉みたいなものが入っていて、それぞれ白と青と緑と赤とカラフルな彩りだ。
紋章石とは、紋章術を凝縮して固形化したもので、投げつけて発動するちょっとした護身用アイテムである。リアフェールは使い手よりも一般人が多い結社なので、こういう調査員用の戦闘アイテムは意外と重宝されているのだ。
「ああ、ありがとう」
とは言え、これは『人魚姫』の鍵を持つシグドやミラノには関係ないはずだ。
これをシグドが持っていたということはつまり、最初からクロノに渡すためだったということであり、もしかしたら、少年の同行を見越した上で持っていたのではないだろうか。
さすがに考えすぎだったかもしれないが、それでもクロノは、胸中でもう一度感謝した。
にこにこと微笑むワズサに、にこりと笑い返すビビアン。
未だ同盟に乗り気ではないクロノだったが、社長が頷いた以上口を挟むわけにもいかず、複雑な気持ちのまま、ソファの背もたれに体を預け、天井を仰ぐ。
少年の心情を感じ取ったらしいミントがどこか不安そうな視線を向けてきたのに気付きながらもクロノは、もしこの場にいたら自分と同じく明白は否定をしたであろう旧友を思う。
部屋に充満した毒を、引っ張り連れた相棒の紋章術で一掃させた後、満身創痍のクロノたちには見向きもせず、彼女の首根っこを掴んだまま早々に立ち去った銀髪。
ミントの話だと、ミラノは何かに気付いて慌てていたらしく、更にナツメの話によれば、その慌て気味のミラノが社長に何か伝えているところでシグドに拉致られたとのことだ。
何故だろうか、嫌な予感しかしない。
「あら、シグドくん」
丁度良かったわ、とワズサが声を上げた。
クロノは、ソファに寄り掛かったまま、視線だけ部屋の入口へ向ける。
控えめなゴシック服と言う普段着にしっかりネクタイまでしただけではなく、エンブレムのついたチョーカーと武器装備という完璧な外装をしたシグドとミラノがそこに立っていた。
ミラノをそこに待たせ、シグドだけが部屋に入る。
「ついさっき、カリバーンとの同盟が決まったのよ」
「は? 何だそれ。……いや、その話は後で聞く。それより、さっさと行って来る」
「ええ、わかったわ。二人共、気を付けるのよ。あと建物を壊さないように」
ワズサの言葉に、シグドとミラノは同時に頷く。
不穏極まりない注意だが、社長はこれを言わないと気が済まないらしい。どこかの誰かさんのように意図的にする人はいないが、基本的に対紋章術の設備のない街中では、術戦で暴れただけでも尋常じゃない被害が出る。
「……って、お前。何しに行くんだよ」
思わずクロノは体を起こした。
普段の調査程度ならば、使い手相手に暴れることは滅多にないわけで。彼女のあの忠告は、最初から戦闘がわかっている時のみのものだ。
こんな時に、リアフェールに残っていて動ける戦力であるシグドとミラノの二人を同時に駆り出すなんて、それほど大変な、もしくは危険な仕事なのだろうか。
「仕事だ」
「見ればわかる。内容だよ」
「『赤頭巾』及び『茨姫』の保護」
その言葉に、クロノだけでなく他のカリバーンメンバーも表情を変えた。
「どういう事なの、一体……?」
「ついさっき、『赤頭巾』と『茨姫』の魔導反応を感知したって報告があったのよ。もしかしたら交戦中かもしれないって判断したから、二人に行ってもらうのよ」
見知らぬ『茨姫』はともかく『赤頭巾』はカリバーン本部で保護されているはずだ。
それはつまり、どっかの結社が鍵を奪いに来たのか、それとも例の条件達成のため聖槍が強襲に来たのか。どちらにしろ言えるのは、カリバーン本部が攻撃を受けた、ということだ。
誰がどうやってあの隠れ屋敷の場所を突き止めたのかわからない以上、いくらシグドたちが行くと言っても安心は出来ない。というか、シグドたちが行くこと自体が安全とは言い難い。
ただでさえカリバーンはリーダーが倒れて戦力が壊滅的だというのに、その上あの屋敷が壊されでもしたら、本格的に結社存続が危うくなってしまうではないか。
クロノは立ち上がるとシグドに詰め寄った。
「俺も行く」
「足手まといだ」
「シグド」
「うるせえ」
「俺も行く」
「来んな」
短い問答を繰り返し、クロノとシグドは睨み合う。
その視線を遮るように、着物の袖をヒラヒラさせながらナツメが二人の間へと割り込んだ。
「行く行かないよりもさ、そんな重要な話を隠されるなんて、せっかく条約結んだのにあんまりじゃないかな?」
普段と変わらない口調だったけれど、その奥に見える怒りの色。
じろりとワズサを見るナツメ。
「あら。共有する情報は、自分たちにとって有害にならない程度のはずでしょう?」
口調こそは困り果てたものではあったが、ワズサは白々しく答えた。
屁理屈で返されたからか、ナツメはぷくりと頬を膨らます。
だが、ビビアンのわざとらしい咳払いが全員の注目をかっさらった。
「有害か無害かで考えるよりも、損か得かで考えるべきだわ。…………だから、私からひとつ提案があるの。カリバーンとリアフェールの使い手で合同編成チームを作って、そのチームに今回の仕事をやらせましょう」
「そうね。せっかくの同盟ですもの。賛成よ」
カリバーンとリアフェールが、合同で仕事を行う。
立候補したいクロノではあったが、この場の決定権はビビアンも持っていかれた。
リアフェール側にシグドがいるのなら連携面でクロノが有力だろうが、何しろ少年はビビアンに戦力外通告をされている。現存しているカリバーンの戦力はナツメだ。ここでクロノが手を上げれば、触発されたナツメに対抗される。
確実にクロノが同行するためには、カリバーン側の立候補よりも、リアフェール側から指名される方が確率は高い。と言うか、それしか可能性はない。
「あの」
そろりと、ミントが手を上げた。
「わたしが、一緒に行っても良いですか」
クロノとナツメが同時にミントを見た。
先を越された悔しさと、彼女の身の心配で、二人は言葉が出て来ない。
しばらく考え込んでいたビビアンだったが、ひとつ頷いてワズサを見る。
「彼女が同行したいらしいけれど、どうかしら?」
「二人はどう?」
「別に誰でも構わねえよ」
ため息混じりに答えるシグドを、クロノは睨んだ。
戦力が不安だの何だのと断ってくれれば良いのに、とのぼやきはクロノの胸中のみだ。
「じゃあ決まりね」
「えー。ミントちゃんだけじゃ危ないよー」
「相手が鍵かもしれないなら、もう一人いた方が良いと思いますよ」
ビビアンの言葉に、ナツメとクロノが噛み付く。
呆れた表情で二人を見やった彼女は、盛大なため息をひとつ零した。
「じゃあ、彼女の同伴者も付けるわ」
その同伴者と言うのはクロノのことで良いのだろうか。
呆気に取られている少年の視界で、ナツメがつまらなさそうにソファへと戻った。
「ナビィにはこちらから連絡して別ルートで離脱してもらうから、貴方たちは『赤頭巾』の方をお願い。屋敷と直結しているドアが近くにあるはずだから、そこを使ってちょうだいね」
「了解」
ビビアンの言葉を聞きながらクロノは簡単に身支度をチェックする。
そして隣に立つミントを見やる。
「大丈夫なのか?」
「はい、大丈夫です」
力強く頷いたミントは、心無しかこの仕事に意欲的にも見える。
本当に大丈夫なのかと一抹の不安を覚えるクロノが、準備を終えたと言わんばかりにシグドを見やれば、彼は至極面倒そうな表情を浮かべていたが、少年の視線に気付くと、さっさと踵を返して歩き出した。
クロノとミラノ、そして少し遅れてミントがその背を追い掛ける。
リアフェール本部を出てからは、クロノの先導でカリバーン直結のドアをくぐった。
その途中で、シグドがクロノへ声を掛ける。
「先に言っておくが、鍵の魔導反応を感知したってことは、異空間が開いたってことだ。今まで通りには戦えないから、覚悟はしておけよ」
あの空間では紋章術を使えない。
以前『赤頭巾』と戦った時に身を持って体験したし、後でミントにも告げているので彼女も知っている。それをシグドが知っているとは思えないから、単純な気遣いだったかもしれないが、わざわざそれを内緒話のしにくい静かなこの通路で、全員に聞こえるように伝えたことに別の意図があるように思えた。
例えばクロノが紋章術を使えないことを隠すためとか。
まさかな、と胸中で一蹴したクロノの目の前に、シグドが小瓶を付き出した。
「お前に渡しておく」
「何だこれ」
「社長特製の紋章石」
中には飴玉みたいなものが入っていて、それぞれ白と青と緑と赤とカラフルな彩りだ。
紋章石とは、紋章術を凝縮して固形化したもので、投げつけて発動するちょっとした護身用アイテムである。リアフェールは使い手よりも一般人が多い結社なので、こういう調査員用の戦闘アイテムは意外と重宝されているのだ。
「ああ、ありがとう」
とは言え、これは『人魚姫』の鍵を持つシグドやミラノには関係ないはずだ。
これをシグドが持っていたということはつまり、最初からクロノに渡すためだったということであり、もしかしたら、少年の同行を見越した上で持っていたのではないだろうか。
さすがに考えすぎだったかもしれないが、それでもクロノは、胸中でもう一度感謝した。
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