今更ながらダンジョンに潜る事になりまして

名嵐

文字の大きさ
24 / 42

23話

しおりを挟む
 人事部に確認を取った上でダンジョンに潜る前に撮った写真を送ってから一週間以上経った頃、説明会も終わって今度は会社見学を行うという通達が全社員宛に送られた。
 ちらりと噂を聞いた話だとやはり探索者志望の学生はほぼ居なかったらしい。それでも資格持ちは何人かいたようで通常の業務と合わせた説明で何個かの質問が出るなど人事部的にはいい感触だったとか。

「だから、期待してるのか?」

「そういう訳では無いんですが、増えてくれるならそれはそれで良いと思いますし」

 ダンジョンに潜って最下層を目指してみたい気持ちは確かに有る。でも、あの時に諦めた俺にそれを本当に目指していいのかと悩んでしまう時も有る。
 それとは別にしても今後の事を考えれば人が増えるに越したことはないと思う。だって、人が増えれば増えるほどテストを同時にできて、その分だけ新商品の開発が進むんだから。
 ……そうすれば今みたいに先輩たちから異様に押し付けられそうになる事も無くなるだろう。

「まぁ、別に良いけど、午後からはどうする気だ?」

「午後からは探索者部門の部屋に顔を出しますよ。見学の事でどうするかとか話さないといけないので」

 現状の日程だと水曜日だから話し合ってダンジョンに行く予定を考えないといけないんだよな。
 まぁ、いなくても問題は無いんだろうけど、来てくれる学生の中に資格持ちがいる可能性を考えるとその日だけはダンジョンから戻ってた方が良いだろう。
 そんな事を考えながら俺は残っていた報告書を書き上げるのだった。



 送られてきたメールを見た私はそのまま顔を幸太へと向けた。すると私と同じように画面から顔をこちらに向けていた。
 どうやら幸太も同じようにメールを見たらしい。

「これ、私たちもいないといけない感じなのかしら?」

「さ、さぁ?」

「まぁ、進が来たら確認してみましょう」

「そうですね。でも、これだと探索の予定が変わっちゃいますね」

 頭の片隅で予定変更が無かった場合を考えながら幸太と話していると扉が開く。

「「「おはようございます」」」

 部屋に入ってきた進とお互いに挨拶しあうと進の後ろに誰かいる事に気が付く。

「幸は知ってると思うけど、今日から探索者部門に配属になった桐野霧江さんだ」

「桐野霧江です。これからよろしくお願いします!」

 ニコっと笑いながらも私を見てくる霧江は過去を感じさせないような明るい雰囲気をまとっていた。

「久しぶり、霧江。元気にしてた?」

「幸もね。これからは私が後方業務っていうか備品の購入とかしてくからよろしく。そっちの少年もね」

「はい、財前幸太です。よろしくお願いします」

 どうやら探索者として動けなくなった事をそこまで気にしていないのか入社してから何か良い事でも有ったのか……。
 幸太と話す霧江の姿に安心しながら私は席についた進に声を掛けた。

「霧江が言ってたのは本当?」

「あぁ、今後の事も考えての異動らしい」

「そう、でも備品関係とかが楽になるならそれに越した事は無いわ」

「それで今後の事についてだけど、メールは見た?」

 進の言葉に私は頷く。

「見た通りなんだけど、ここに来る前に相模部長に確認したら探索者部門も一応参加してほしいって言われたから」

「幸太とも話してたけど、参加しないといけないのね」

 ため息してしまう私の姿に進は申し訳ないと思ったようで謝ってきた。
 別に進に謝られたところで変わる訳でも無いからそこまで気にしてはいないのだけど。まぁ、霧江に引継ぎとか頼みたい事とか有る事を考えるとこの予定変更はちょうど良かったかも知れないわね。

「それで予定はどうするつもりなの?」

「それだけどまた三十階まで行けるけど、そこから更に進むとなっても戻る事を考えたらそこまで深く潜れないよな?」

「えぇ、潜れたとしても三十一階で止めておくべきよ。それも昼には戻り始めるようにしないとダメね」

「そうか。なら、最初から三十階までで止めておこう」

 進はそう言うと直ぐに予定を立て始めたようで消耗品の申請を霧江に教えるために二人で話していた霧江に声を掛けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺だけ✨宝箱✨で殴るダンジョン生活

双葉 鳴
ファンタジー
俺、“飯狗頼忠(めしく よりただ)”は世間一般で【大ハズレ】と呼ばれるスキル【+1】を持つ男だ。 幸運こそ100と高いが、代わりに全てのステータスが1と、何をするにもダメダメで、ダンジョンとの相性はすこぶる悪かった。 しかし世の中には天から二物も三物ももらう存在がいる。 それが幼馴染の“漆戸慎(うるしどしん)”だ。 成績優秀、スポーツ万能、そして“ダンジョンタレント”としてクラスカースト上位に君臨する俺にとって目の上のたんこぶ。 そんな幼馴染からの誘いで俺は“宝箱を開ける係”兼“荷物持ち”として誘われ、同調圧力に屈して渋々承認する事に。 他にも【ハズレ】スキルを持つ女子3人を引き連れ、俺たちは最寄りのランクEダンジョンに。 そこで目の当たりにしたのは慎による俺TUEEEEE無双。 寄生上等の養殖で女子達は一足早くレベルアップ。 しかし俺の筋力は1でカスダメも与えられず…… パーティは俺を置いてズンズンと前に進んでしまった。 そんな俺に訪れた更なる不運。 レベルが上がって得意になった女子が踏んだトラップによる幼馴染とのパーティ断絶だった。 一切悪びれずにレベル1で荷物持ちの俺に盾になれと言った女子と折り合いがつくはずもなく、俺たちは別行動をとる事に…… 一撃もらっただけで死ぬ場所で、ビクビクしながらの行軍は悪夢のようだった。そんな中響き渡る悲鳴、先程喧嘩別れした女子がモンスターに襲われていたのだ。 俺は彼女を囮に背後からモンスターに襲いかかる! 戦闘は泥沼だったがそれでも勝利を収めた。 手にしたのはレベルアップの余韻と新たなスキル。そしてアイアンボックスと呼ばれる鉄等級の宝箱を手に入れて、俺は内心興奮を抑えきれなかった。 宝箱。それはアイテムとの出会いの場所。モンスタードロップと違い装備やアイテムが低い確率で出てくるが、同時に入手アイテムのグレードが上がるたびに設置されるトラップが凶悪になる事で有名である。 極限まで追い詰められた俺は、ここで天才的な閃きを見せた。 もしかしてこのトラップ、モンスターにも向けられるんじゃね? やってみたら案の定効果を発揮し、そして嬉しい事に俺のスキルがさらに追加効果を発揮する。 女子を囮にしながらの快進撃。 ステータスが貧弱すぎるが故に自分一人じゃ何もできない俺は、宝箱から出したアイテムで女子を買収し、囮役を引き受けてもらった。 そして迎えたボス戦で、俺たちは再び苦戦を強いられる。 何度削っても回復する無尽蔵のライフ、しかし激戦を制したのは俺たちで、命からがら抜け出したダンジョンの先で待っていたのは……複数の記者のフラッシュだった。 クラスメイトとの別れ、そして耳を疑う顛末。 俺ができるのは宝箱を開けることくらい。 けどその中に、全てを解決できる『鍵』が隠されていた。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

異世界帰還者の気苦労無双録~チートスキルまで手に入れたのに幼馴染のお世話でダンジョン攻略が捗らない~

虎柄トラ
ファンタジー
 下校帰りに不慮の事故に遭い命を落とした桜川凪は、女神から開口一番に異世界転生しないかと勧誘を受ける。  意味が分からず凪が聞き返すと、女神は涙ながらに異世界の現状について語り出す。  女神が管理する世界ではいま魔族と人類とで戦争をしているが、このままだと人類が負けて世界は滅亡してしまう。  敗色濃厚なその理由は、魔族側には魔王がいるのに対して、人類側には勇者がいないからだという。  剣と魔法が存在するファンタジー世界は大好物だが、そんな物騒な世界で勇者になんてなりたくない凪は断るが、女神は聞き入れようとしない。  一歩も引かない女神に対して凪は、「魔王を倒せたら、俺を元の身体で元いた世界に帰還転生させろ」と交換条件を提示する。  快諾した女神と契約を交わし転生した凪は、見事に魔王を打ち倒して元の世界に帰還するが――。

親友と婚約者に裏切られ仕事も家も失い自暴自棄になって放置されたダンジョンで暮らしてみたら可愛らしいモンスターと快適な暮らしが待ってました

空地大乃
ファンタジー
ダンジョンが日常に溶け込んだ世界――。 平凡な会社員の風間は、身に覚えのない情報流出の責任を押しつけられ、会社をクビにされてしまう。さらに、親友だと思っていた男に婚約者を奪われ、婚約も破棄。すべてが嫌になった風間は自暴自棄のまま山へ向かい、そこで人々に見捨てられた“放置ダンジョン”を見つける。 どこか自分と重なるものを感じた風間は、そのダンジョンに住み着くことを決意。ところが奥には、愛らしいモンスターたちがひっそり暮らしていた――。思いがけず彼らに懐かれた風間は、さまざまなモンスターと共にダンジョンでのスローライフを満喫していくことになる。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』

チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。 その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。 「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」 そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!? のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。

【完結】元ゼネコンなおっさん大賢者の、スローなもふもふ秘密基地ライフ(神獣付き)~異世界の大賢者になったのになぜか土方ばかりしてるんだがぁ?

嘉神かろ
ファンタジー
【Hotランキング3位】  ゼネコンで働くアラフォーのおっさん、多田野雄三は、ある日気がつくと、異世界にいた。  見覚えのあるその世界は、雄三が大学時代にやり込んだVR型MMOアクションRPGの世界で、当時のキャラの能力をそのまま使えるらしい。  大賢者という最高位職にある彼のやりたいことは、ただ一つ。スローライフ!  神獣たちや気がついたらできていた弟子たちと共に、おっさんは異世界で好き勝手に暮らす。 「なんだか妙に忙しい気もするねぇ。まあ、楽しいからいいんだけど」

処理中です...