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35話
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伊織の耳かきが垢を取り除き、ティッシュの上に落としていく。2度、3度と繰り返し、薫の耳から垢が取れると伊織の表情がゆがむ。
「これは・・・!?」
「なに?そんなに珍しい耳ではないと思うけど。」
「くッ・・・いえ。少し驚いただけです。耳毛、切りますね。」
耳かきを置き、鋏に持ちかえ、慎重に耳毛を切っていく。サクサクとした音が試合会場に響く。
「伊織は何を・・・?」
「なんだろうね。彼の実力で難しいと感じるような耳ってそうそうない気がするけど。」
伊織は耳毛を切り終えると、鋏を耳から抜き取り、綿棒を手に取る。
「毛と小さな粉を綿棒で取っていきますね。」
「うん。」
綿棒を耳にいれ、小さく小さく動かしていく。もともと伊織の耳かきは繊細な動きだが、いつにもましてこじんまりとした動きだ。
まるでなにかを傷つけまいとするかのように。そしてそれを5回ほど繰り返して回すと綿棒を引き抜いた。
「最後、軽くマッサージして終わりにしますね。」
「なに?もう終わり?」
「はい。」
宣言通り綿棒を引き抜くと耳をふたたび指でつまみ、軽く伸ばして終わりにした。
「んっ、気持ちよかったけど、何のつもり?」
表示されるタイムは3:40、「大物、10」「粉、5」、「リラックストーク、7」「快感値、80」「タイムスコア+20」
「こんな、こんな耳を僕はできない・・・。なんで耳鼻科にいかないんです!?自分で掻きむしりたくなる程の痛痒のはず!」
「実力のない人は傷つけてでも取ろうとして、点数がさがる。あなたみたいに勝つ気持ちに中途半端な人はためらって取り切れずに点数が下がる。なにをしてでも勝つのはスポーツをやるなら当たり前のこと。」
「違う!耳かきは、耳かきは楽しいことです!こんな・・・!こんな傷ついてまでやることじゃない!!」
言葉から察するに薫の耳の中は相当ひどい状態らしい。耳鼻科通院が必要なほどの。
「外耳炎かな?なんにせよ、ケガをしたまま試合に出ているんだね・・・」
「ガンぎまってんなー。」
先輩の反応から言って耳かきの世界ではいないわけではないのだろうが、ケガをしていること自体を戦略に組み込むという発想は、元居た世界のスポーツではおおよそ考えられない思考だ。
「私は耳かきで勝つのが好き。そのために私は勝つためにできることはなんでもする。耳のケガをそのままにすることも、必要なら深くすることも。ああ、でも伊織だっけ?安心していい。ケガをするのは私だけ。攻めに回った私はケガをさせたりしない。痛みがあると点が下がって負けるから。存分にリラックスしていい。」
薫は椅子に座ると伊織を膝にのせる。
「僕は、あなたを好きになれそうにないです。」
「私は、そういって負けてくれる相手は嫌いじゃない。」
無表情に応える薫に伊織は顔をゆがめ、膝に体重を預ける。
「男子も大したことなさそうね。じゃ、また始めるよ!」
3,2,1
「スタート!」
耳かきを薫が手に取った。
「これは・・・!?」
「なに?そんなに珍しい耳ではないと思うけど。」
「くッ・・・いえ。少し驚いただけです。耳毛、切りますね。」
耳かきを置き、鋏に持ちかえ、慎重に耳毛を切っていく。サクサクとした音が試合会場に響く。
「伊織は何を・・・?」
「なんだろうね。彼の実力で難しいと感じるような耳ってそうそうない気がするけど。」
伊織は耳毛を切り終えると、鋏を耳から抜き取り、綿棒を手に取る。
「毛と小さな粉を綿棒で取っていきますね。」
「うん。」
綿棒を耳にいれ、小さく小さく動かしていく。もともと伊織の耳かきは繊細な動きだが、いつにもましてこじんまりとした動きだ。
まるでなにかを傷つけまいとするかのように。そしてそれを5回ほど繰り返して回すと綿棒を引き抜いた。
「最後、軽くマッサージして終わりにしますね。」
「なに?もう終わり?」
「はい。」
宣言通り綿棒を引き抜くと耳をふたたび指でつまみ、軽く伸ばして終わりにした。
「んっ、気持ちよかったけど、何のつもり?」
表示されるタイムは3:40、「大物、10」「粉、5」、「リラックストーク、7」「快感値、80」「タイムスコア+20」
「こんな、こんな耳を僕はできない・・・。なんで耳鼻科にいかないんです!?自分で掻きむしりたくなる程の痛痒のはず!」
「実力のない人は傷つけてでも取ろうとして、点数がさがる。あなたみたいに勝つ気持ちに中途半端な人はためらって取り切れずに点数が下がる。なにをしてでも勝つのはスポーツをやるなら当たり前のこと。」
「違う!耳かきは、耳かきは楽しいことです!こんな・・・!こんな傷ついてまでやることじゃない!!」
言葉から察するに薫の耳の中は相当ひどい状態らしい。耳鼻科通院が必要なほどの。
「外耳炎かな?なんにせよ、ケガをしたまま試合に出ているんだね・・・」
「ガンぎまってんなー。」
先輩の反応から言って耳かきの世界ではいないわけではないのだろうが、ケガをしていること自体を戦略に組み込むという発想は、元居た世界のスポーツではおおよそ考えられない思考だ。
「私は耳かきで勝つのが好き。そのために私は勝つためにできることはなんでもする。耳のケガをそのままにすることも、必要なら深くすることも。ああ、でも伊織だっけ?安心していい。ケガをするのは私だけ。攻めに回った私はケガをさせたりしない。痛みがあると点が下がって負けるから。存分にリラックスしていい。」
薫は椅子に座ると伊織を膝にのせる。
「僕は、あなたを好きになれそうにないです。」
「私は、そういって負けてくれる相手は嫌いじゃない。」
無表情に応える薫に伊織は顔をゆがめ、膝に体重を預ける。
「男子も大したことなさそうね。じゃ、また始めるよ!」
3,2,1
「スタート!」
耳かきを薫が手に取った。
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