愛されなければお飾りなの?

まるまる⭐️

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第3話

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 さて、陛下から思いどおりの、満額回答とも呼べる結果を貰った父だったが、そこは陛下のやる事だ。素直に信じて後で火傷しても困る。何より王家にとっては本来ならとても飲めるはずのない条件なのだ。

 父は翌日、この回答が出た背景を探る為王宮へと向かった。

 そして私はその夜、王宮から帰った父から執務室に呼ばれたのだ。

「お前は王家に嫁ぐ。だからお前の耳にも入れておいた方が良いと思ってな」

 父はそう言って私を席へと即した。

「それでだな、ざっくりと言うならば、この回答の理由は王妃への償いだ。陛下は彼女への償いとして、何が何でもエドモンドを王太子にしてやりたいそうだよ」

 父はそう前置きして話し始める。

 父の話はこうだった。

 陛下と王妃の間にはエドモンドが生まれ、嫡男を授かった2人は幸福に包まれた……はずだった。その後直ぐに、陛下と側妃の間に王子が生まれなければ…。

 そう…。あれ程盛大にやらかした末に結ばれた陛下と王妃の蜜月は、1年と持たなかったのだ。

 見目は良い陛下は、その立場も相まって兎に角モテる。その結果、彼は直ぐにまたやらかした。夜会で新たな伯爵令嬢を見染め、あろうことかその令嬢を孕らませた。あの騒動から1年も経っていないのに…だ。これが父が陛下を馬鹿だと言う所以だ。彼は一度の失敗では全く懲りていなかったのだ。

 だがそんな陛下を変えたのは王妃の涙だった。何しろ自分が嫁いで1年足らずの出来事だ。彼女はプライドをズタズタにされ、嘆き悲しんだ。

 流石に此処でやっと陛下も反省の色を見せる。彼はこれ以降、令嬢は見染めてもには注意するようになった。

 全く呆れたものだが、そこは王家の血を引く子供だ。放ってはおけない。陛下は仕方なくその令嬢を側妃として娶った。

 こうなると否が応にも2人は比べられる。

 正妃と側妃。同じ伯爵令嬢。陛下との出会い方も同じ。そして生まれたのは息子。立場の違いは陛下との出会いの早さだけ。よく似た境遇の2人は陛下の寵を求め激しく争いあった。仕方なく陛下は2人を同列に扱った。

 しかし悲しいもので、年を追う事に2人の間には明確な違いが出て来た。

 王妃の実家が没落したのだ。

 娘の破談の原因を作った王妃をオスマンサスは許さなかった。彼女の実家との取引を全て取りやめたのだ。

 オスマンサスの言い分も最もだとは思う。陛下とオスマンサスの令嬢との間に縁談が持ち上がっている事は貴族なら誰もが知っていた。それに王妃の懐妊が分かった時、伯爵家は殊更騒ぎ、吹聴し、娘の縁談を破談に追い込んだ。

 伯爵家としては娘を日影者にしたくは無かったし、あわよくばと言う目論見もあったのだろう。しかし、相手が悪すぎたのだ。

 実家が没落すると、王妃は王宮での立場を失っていった。

「どうして、私だけがこんな目に遭わなければいけないの?」

 王妃は更に嘆き悲しんだ。

 此処に来て陛下は、そんな王妃に同情した。

 何しろ彼女の実家が没落したのは、自分のせいでもあるのだ。それなのに自分は直ぐに側妃に惹かれ、子を宿し王妃を苦しめた。

 何とかしてやりたいとは思うものの、いかんせん王家には金が無い。

 そんな陛下が王妃への償いの為にやった事。

 それはエドモンドを盛大に甘やかせる事だった。

 そんな時、王宮に不穏な噂が流れた。次の王太子は王妃の産んだエドモンドでは無く、実家からの支援が得られる側妃の産んだリシャールだと。

 確かに妻の実家の援助は必要だ。今の王家がこれ程困窮しているのは、オスマンサスと言う巨大な後ろ盾を失ったからに他ならない。

 ならばエドモンドに皆が納得するような巨大な後ろ盾を用意しよう。

 こうして選ばれたのが我が家だった。

 つまり、我が家と言う後ろ盾が得られなければエドモンドは王太子にはなれないと言う事だ。

「ですがそれでは側妃様は黙ってはおられないでしょう?」

 私の問いかけに父は頷いた。

「それも含めての我が家なのだよ。陛下は我が家に側妃の実家を黙らせよと仰せだ。実際、我が家にはその力がある。だが問題はお前だ」

「私…ですか?」

「ああ。今、実質後宮の権力は側妃に集中している。その中にお前は飛び込むのだ。側妃は面白くないだろうな。お前にどんな嫌がらせをしてくるやも知れん」

 何と言う事だ。ただでさえ恋人のいる好きでもない男に嫁ぐのだ。それに加え、側妃の嫌がらせ付きだなんて…。

 お先真っ暗とはこの事だった…。


























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