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第4話
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「しかし、どちらか一方の妃に肩入れするとは、陛下も酷な事をする。これで側妃は全てを失った。自分の子が王になる夢も、自身の立場も権力も…。恐らくこれ以降、彼女の側からはどんどん人が離れて行くだろう。近いうち、王妃と彼女の立場は逆転するはずだ。そうなると、彼女のお前への恨みは相当なものになるだろう。心して励めよ」
父は口角を上げて笑いながら、尚も私に追い打ちをかける。完全に私を怖がらせて面白がっている。
だが、この後直ぐに父が声音を変えて私に語りかけた。
「だが、これからそんな争いはいつでも起こると考えよ。今回、例えそれが陛下の王妃への同情だったのだとしても、この争いは王妃の勝ちだ。良いか、リベリア。お前はこのルクソール公爵家の娘だ。そして王家に嫁ぐのだ。どんな事があっても人にも、己にも負けてはならん。分かったな?」
父の言葉に私は黙って頷いた。
「まぁ、側妃に何かされたら王妃を頼れ。我が家が後ろ盾になったからこそエドモンドは王太子になれたのだ。流石に悪い様にはせんだろう」
父はこの時、そう言って最後に私を慰めたけれど、もしこの時に戻れるなら私は父にこう言いたい。
「お父様もまだまだ甘いわね」と…。
*****
それから暫くして、エドモンドと私の婚姻の儀が盛大に執り行われた。勿論、費用は全て我が家持ちだ。王家から申し入れた縁談にも関わらず、巫山戯た話だ。だが、この日父は朝からご満悦だった。
「娘が嫁に行くのよ? 嬉しいじゃない。そこは素直に受け取ってあげて。こんな形で嫁いで行く事になったけれど、私達家族はいつでも貴方の味方よ? リベリア。幸せになってね」
朝、家を出る私を、母はそう言って目に涙を浮かべながら抱きしめた。
教会で誓いの言葉を述べ、誓いのキスをした私とエドモンドは、この日晴れて夫婦となった。
その後、王宮の広間にて、新たに王家の一員として加わる私のお披露目パーティーが催された。
私とエドモンドは国中の貴族が集まるこの場所でファーストダンスを踊った。
陛下と王妃は一段高くなった席で誇らし気に笑っている。ふと気になって、側妃とリシャール様を探したが見つからなかった。本来なら側妃は陛下の隣に控えているはずなのに…。
気にはなったが次々に祝いの言葉を掛けてくる貴族達の対応に追われ、それどころでは無かった。
小さな疑問はあったものの、何もかもが順調だった。だから私は思ってもみなかったのだ。
エドモンドが初夜の床であんな事を言い出すなんて…。
確かに私はエドモンドを別に好きな訳ではない。だが嫌いでも無かった。それどころか政略とはいえ夫婦となったのだ。彼とはお互いを尊重し合い、共に生きていけたら良いなと真剣に考えていた。
夫婦の寝室で私はエドモンドが来るのをドキドキしながら待っていた。
だが、なかなかエドモンドは現れない。遅いなと思いながら待つ事2時間。
やっと現れたエドモンドはいきなり告げた。
「僕がお前を愛する事はない。母上が言ってたぞ。お前、相当な悪女だな。王家の乗っ取りを考えているんだろう!?」
「はい? 乗っ取りですか…」
彼は一体何を言っているのだろう…。訳が分からない。
「そうだ! だからお前とは子を作ってはならないと母上が言ってたぞ。それにお前とそう言う事をするのをルルナレッタが嫌がるんだ!」
流石に怒りが湧いた。子を作ってはならない? それなら何故私は王家に嫁いできたの?それに…
「ルルナレッタ様とはお別れになったのではなかったのですか?」
確かに陛下は私にそう約束した。
「お前は何を言っている? ルルナレッタは近いうち、側妃として娶る事が決まっている」
「そんな…陛下はお許しにならないわ」
「いや、父上も知っての事だ…」
騙された…。そう悟った時、私の頭の中は真っ白になった。
父は口角を上げて笑いながら、尚も私に追い打ちをかける。完全に私を怖がらせて面白がっている。
だが、この後直ぐに父が声音を変えて私に語りかけた。
「だが、これからそんな争いはいつでも起こると考えよ。今回、例えそれが陛下の王妃への同情だったのだとしても、この争いは王妃の勝ちだ。良いか、リベリア。お前はこのルクソール公爵家の娘だ。そして王家に嫁ぐのだ。どんな事があっても人にも、己にも負けてはならん。分かったな?」
父の言葉に私は黙って頷いた。
「まぁ、側妃に何かされたら王妃を頼れ。我が家が後ろ盾になったからこそエドモンドは王太子になれたのだ。流石に悪い様にはせんだろう」
父はこの時、そう言って最後に私を慰めたけれど、もしこの時に戻れるなら私は父にこう言いたい。
「お父様もまだまだ甘いわね」と…。
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朝、家を出る私を、母はそう言って目に涙を浮かべながら抱きしめた。
教会で誓いの言葉を述べ、誓いのキスをした私とエドモンドは、この日晴れて夫婦となった。
その後、王宮の広間にて、新たに王家の一員として加わる私のお披露目パーティーが催された。
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エドモンドが初夜の床であんな事を言い出すなんて…。
確かに私はエドモンドを別に好きな訳ではない。だが嫌いでも無かった。それどころか政略とはいえ夫婦となったのだ。彼とはお互いを尊重し合い、共に生きていけたら良いなと真剣に考えていた。
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だが、なかなかエドモンドは現れない。遅いなと思いながら待つ事2時間。
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