5 / 38
第5話
しおりを挟む
「父上には別かれろって言われたんだけどね? そんな事、出来ないよ。だって僕はルルナレッタを愛しているからね。だから母上と一緒にお願いしたんだ。その時、母上は言ってたよ? お前の父親は野心家だ。だからお前と僕の子が出来たら、その子を王にするために父上も僕も母上も、皆んな排除されるって…」
ぐうの音も出なかった。確かに父はそうするだろう。父はそう言う人だ。と言うか、最初から父の狙いはそこだった。
「そしたらさ。お前が嫁いで来た後でなら良いって…そう言われた」
彼は笑顔でそう報告した。
「…だからって…。側妃は正妃が3年間子を授かる事が出来なかった時に迎えられるのが般例です!」
「でも例外はあるでしょう? だってリシャールの母親は、父上と母上が結婚して1年もたたない内に父上に嫁いで来ただろ?」
「…確かにそうですが、それは特別な理由があったから…」
リシャール様が側妃のお腹に宿ったからだ。すると、したり顔でエドモンドが言う。
「僕にだって特別な理由はあるよ?」
「まさか! ルルナレッタ様に既にお子が…?」
私の言葉にエドモンドは慌てて首を振る。
「まさか…。そんな事をしたらお前の父親が黙っていないだろ?」
は? いやいや。今でも充分黙っってはいないと思いますが…。
エドモンドが嬉しそうに鼻を伸ばしながら続ける。
「ルルがさ。そんなに待てないって言うんだ。ルルはさ、可愛いよね? 僕とそんなに離れたら死んじゃうって甘えるんだ」
「はい?」
思わず変な声が出た。私は何を聞かされているんだろう? ここは一応、初夜の床だよ? そんな場所で新妻を前に他の女の事を惚気る旦那様ってどうなの? てか、特別な理由ってそれかよ!? 然もいきなりのルル呼び始まったよ!
「そんなに愛しておられるなら何故、そのルル様とご結婚ならさなかったのです!? 彼女は伯爵家のご令嬢です。立派に貴方の正妃として立てる立場におられると思いますが…」
折角だから、私もそのルル呼びに乗っかってみた。
「…だって…お前と結婚しないと王太子にはなれないって父上が言うんだもん。それにルルもさ。王太子の僕の方が好きなんだって」
何がだもんだよ。てか、貴方一体幾つです? 父上が…母上が…ルルが…って貴方に意思はないの? 然もルル様。彼女だって明らかに国母の座狙ってますよね?
「分かりました。もう戻って良いですよ!」
呆れた私は冷たく言い放った。
「え? もういいって何が?」
彼は私の放つ怒気を受けオロオロし出した。
「だから、私と同衾する気はないんでしょう? だったら別々に眠った方が良く眠れるでしょう?」
「それもそうだね」
エドモンドはいきなり笑顔を見せて頷くと、夫婦の寝室からそそくさと立ち去った。
さて、これからどうしよう…。1人残された寝室で私は呆然とする。
いきなり前途多難だ。頭を悩ませて眠った私の前に、翌朝大量の書類の山が積み上がった。
それを見て私は思った。ごめんなさい、お母様。私、此処で幸せになれそうにないですと…。
ぐうの音も出なかった。確かに父はそうするだろう。父はそう言う人だ。と言うか、最初から父の狙いはそこだった。
「そしたらさ。お前が嫁いで来た後でなら良いって…そう言われた」
彼は笑顔でそう報告した。
「…だからって…。側妃は正妃が3年間子を授かる事が出来なかった時に迎えられるのが般例です!」
「でも例外はあるでしょう? だってリシャールの母親は、父上と母上が結婚して1年もたたない内に父上に嫁いで来ただろ?」
「…確かにそうですが、それは特別な理由があったから…」
リシャール様が側妃のお腹に宿ったからだ。すると、したり顔でエドモンドが言う。
「僕にだって特別な理由はあるよ?」
「まさか! ルルナレッタ様に既にお子が…?」
私の言葉にエドモンドは慌てて首を振る。
「まさか…。そんな事をしたらお前の父親が黙っていないだろ?」
は? いやいや。今でも充分黙っってはいないと思いますが…。
エドモンドが嬉しそうに鼻を伸ばしながら続ける。
「ルルがさ。そんなに待てないって言うんだ。ルルはさ、可愛いよね? 僕とそんなに離れたら死んじゃうって甘えるんだ」
「はい?」
思わず変な声が出た。私は何を聞かされているんだろう? ここは一応、初夜の床だよ? そんな場所で新妻を前に他の女の事を惚気る旦那様ってどうなの? てか、特別な理由ってそれかよ!? 然もいきなりのルル呼び始まったよ!
「そんなに愛しておられるなら何故、そのルル様とご結婚ならさなかったのです!? 彼女は伯爵家のご令嬢です。立派に貴方の正妃として立てる立場におられると思いますが…」
折角だから、私もそのルル呼びに乗っかってみた。
「…だって…お前と結婚しないと王太子にはなれないって父上が言うんだもん。それにルルもさ。王太子の僕の方が好きなんだって」
何がだもんだよ。てか、貴方一体幾つです? 父上が…母上が…ルルが…って貴方に意思はないの? 然もルル様。彼女だって明らかに国母の座狙ってますよね?
「分かりました。もう戻って良いですよ!」
呆れた私は冷たく言い放った。
「え? もういいって何が?」
彼は私の放つ怒気を受けオロオロし出した。
「だから、私と同衾する気はないんでしょう? だったら別々に眠った方が良く眠れるでしょう?」
「それもそうだね」
エドモンドはいきなり笑顔を見せて頷くと、夫婦の寝室からそそくさと立ち去った。
さて、これからどうしよう…。1人残された寝室で私は呆然とする。
いきなり前途多難だ。頭を悩ませて眠った私の前に、翌朝大量の書類の山が積み上がった。
それを見て私は思った。ごめんなさい、お母様。私、此処で幸せになれそうにないですと…。
2,184
あなたにおすすめの小説
わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。
朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」
テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。
「誰と誰の婚約ですって?」
「俺と!お前のだよ!!」
怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。
「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」
【完結】婚約者の義妹と恋に落ちたので婚約破棄した処、「妃教育の修了」を条件に結婚が許されたが結果が芳しくない。何故だ?同じ高位貴族だろう?
つくも茄子
恋愛
国王唯一の王子エドワード。
彼は婚約者の公爵令嬢であるキャサリンを公の場所で婚約破棄を宣言した。
次の婚約者は恋人であるアリス。
アリスはキャサリンの義妹。
愛するアリスと結婚するには「妃教育を修了させること」だった。
同じ高位貴族。
少し頑張ればアリスは直ぐに妃教育を終了させると踏んでいたが散々な結果で終わる。
八番目の教育係も辞めていく。
王妃腹でないエドワードは立太子が遠のく事に困ってしまう。
だが、エドワードは知らなかった事がある。
彼が事実を知るのは何時になるのか……それは誰も知らない。
他サイトにも公開中。
【完結】そんなに好きなら、そっちへ行けば?
雨雲レーダー
恋愛
侯爵令嬢クラリスは、王太子ユリウスから一方的に婚約破棄を告げられる。
理由は、平民の美少女リナリアに心を奪われたから。
クラリスはただ微笑み、こう返す。
「そんなに好きなら、そっちへ行けば?」
そうして物語は終わる……はずだった。
けれど、ここからすべてが狂い始める。
*完結まで予約投稿済みです。
*1日3回更新(7時・12時・18時)
【完結】私の婚約者はもう死んだので
miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」
結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。
そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。
彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。
これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。
【完結】愛していないと王子が言った
miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。
「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」
ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。
※合わない場合はそっ閉じお願いします。
※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです
との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。
白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・
沈黙を続けていたルカが、
「新しく商会を作って、その先は?」
ーーーーーー
題名 少し改変しました
あなたの破滅のはじまり
nanahi
恋愛
家同士の契約で結婚した私。夫は男爵令嬢を愛人にし、私の事は放ったらかし。でも我慢も今日まで。あなたとの婚姻契約は今日で終わるのですから。
え?離縁をやめる?今更何を慌てているのです?契約条件に目を通していなかったんですか?
あなたを待っているのは破滅ですよ。
※Ep.2 追加しました。
マルグリッタの魔女の血を色濃く受け継ぐ娘ヴィヴィアン。そんなヴィヴィアンの元に隣の大陸の王ジェハスより婚姻の話が舞い込む。
子爵の五男アレクに淡い恋心を抱くも、行き違いから失恋したと思い込んでいるヴィヴィアン。アレクのことが忘れられずにいたヴィヴィアンは婚姻話を断るつもりだったが、王命により強制的に婚姻させられてしまう。
だが、ジェハス王はゴールダー家の巨万の富が目的だった。王妃として迎えられたヴィヴィアンだったが、お飾りの王妃として扱われて冷遇される。しかも、ジェハスには側妃がすでに5人もいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる