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伊織の隠し事と本音 1
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(やってしまったああああああ)
昨日の夜は急遽寧々ちゃんが1人で暮らす家に泊まらせてもらった。
私と伊織くんの結婚のことを知っている寧々ちゃんは快く迎え入れてくれた。
今日の夜も仕事帰り寧々ちゃんの家に帰るつもりだ。
昨日は夜だったためそこまで話切ることができず、また今日続きを聞いてもらう予定だった。
「あの⋯どうかしました?」
「こはるんからありえないほどの黒いオーラが見えるんですが⋯」
自分の席で机に突っ伏していると出社した尚くんや雛菊ちゃんに朝からとても心配された。
自分のせいだということは分かってはいるが、好き勝手言って出てきてしまったことに後悔している。
私が勝手に伊織くんを好きになってしまって、彼から与えられる言葉や行動に好きの気持ちが溢れてしまっただけなのにそれを伊織くんにぶつけてしまった。
自分の中で消化できなかった私のせいだというのに、頭ごなしに伊織くんにぶつけたことを後悔している。
だけど私は知らなかった。
好きという感情を隠すことがこんなにも辛いなんて。
その気持ちに気づいてから触れられるのもキスされるのも嬉しいけど、その真意が分からないからこそ溢れ出る想いを留めるのに苦労したものだ。
「伊織くんと⋯ケンカしちゃって」
「あー⋯夫婦喧嘩ですね」
「夫婦喧嘩なんて乙女ゲームでもよくある展開ですよ!」
自分のデスクの席に座り3人向かい合うように井戸端会議を始める。
尚くんは出社時に購入してきたのかアイスコーヒーをストローでちゅーと吸い上げていた。
メガネの奥で私を見つめる瞳はまるで興味なさそうにも見えるがそうではなく、いつも真剣に話を聞いてくれる。
2人とも年下だというのにそんなの気にならないくらい助けられていた。
「というより私が一方的に言いたいこと言っちゃっただけなんだけど」
「それ多分、東雲専務は嬉しいと思いますけどね」
「ん?どういうこと?」
尚くんと雛菊ちゃんはお互い顔を見合わせて様子を伺っているようだ。
私だけが取り残されている気がしてぽかんとそんな2人を眺める。
何か答えが出たのか今度は肩でお互いを指すように合図を送りあっている。
そっちが話してよ、みたいなやり取りを多分無言でしているんだろう。
根負けしたのか尚くんが小さなため息をついて黒縁メガネの端を指で上げると、私に向き直りゆっくりと話を始めた。
雛菊ちゃんはどこかホッとしたかのように満足気に微笑んでいる。
「あの⋯怒らないで聞いて欲しいんですけど」
「うん」
「俺や雛菊さん、東雲専務にたまに心春さんの様子聞かれてたんですよね。特に入社当初はしょっちゅう聞かれました。心春さんはうまくやってるか、困ってそうなことはないかとか」
「え⋯⋯」
(そんなこと知らない⋯⋯)
尚くんから話された内容は私自身初めて知ることで、そんな話今まで全く聞いたことがなかった。
私の知らないところでそんなふうに気にかけてくれていたなんて。
「最初はなんで聞いてくるのかなって思ってたんですけど、1回2回じゃなかったのでなんか知り合いとかなのかなって思ってました」
「ちなみに私はその段階で気づいてましたよ!東雲専務がこはるんのこと好きなんじゃないかってことに!」
伊織くんが私を好きなのかは別として、契約結婚する前から気にかけてくれていたのは事実だ。
それはやはり同級生としてこの会社にスカウトした責任からなのだろうか。
それとも何かほかの気持ちからなのかは分からない。
だけど私がいないところでもそうやって想ってくれることを知れて、やっぱり私は伊織くんのそういう所が好きなんだと思い知らされる。
昨日の夜は急遽寧々ちゃんが1人で暮らす家に泊まらせてもらった。
私と伊織くんの結婚のことを知っている寧々ちゃんは快く迎え入れてくれた。
今日の夜も仕事帰り寧々ちゃんの家に帰るつもりだ。
昨日は夜だったためそこまで話切ることができず、また今日続きを聞いてもらう予定だった。
「あの⋯どうかしました?」
「こはるんからありえないほどの黒いオーラが見えるんですが⋯」
自分の席で机に突っ伏していると出社した尚くんや雛菊ちゃんに朝からとても心配された。
自分のせいだということは分かってはいるが、好き勝手言って出てきてしまったことに後悔している。
私が勝手に伊織くんを好きになってしまって、彼から与えられる言葉や行動に好きの気持ちが溢れてしまっただけなのにそれを伊織くんにぶつけてしまった。
自分の中で消化できなかった私のせいだというのに、頭ごなしに伊織くんにぶつけたことを後悔している。
だけど私は知らなかった。
好きという感情を隠すことがこんなにも辛いなんて。
その気持ちに気づいてから触れられるのもキスされるのも嬉しいけど、その真意が分からないからこそ溢れ出る想いを留めるのに苦労したものだ。
「伊織くんと⋯ケンカしちゃって」
「あー⋯夫婦喧嘩ですね」
「夫婦喧嘩なんて乙女ゲームでもよくある展開ですよ!」
自分のデスクの席に座り3人向かい合うように井戸端会議を始める。
尚くんは出社時に購入してきたのかアイスコーヒーをストローでちゅーと吸い上げていた。
メガネの奥で私を見つめる瞳はまるで興味なさそうにも見えるがそうではなく、いつも真剣に話を聞いてくれる。
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「というより私が一方的に言いたいこと言っちゃっただけなんだけど」
「それ多分、東雲専務は嬉しいと思いますけどね」
「ん?どういうこと?」
尚くんと雛菊ちゃんはお互い顔を見合わせて様子を伺っているようだ。
私だけが取り残されている気がしてぽかんとそんな2人を眺める。
何か答えが出たのか今度は肩でお互いを指すように合図を送りあっている。
そっちが話してよ、みたいなやり取りを多分無言でしているんだろう。
根負けしたのか尚くんが小さなため息をついて黒縁メガネの端を指で上げると、私に向き直りゆっくりと話を始めた。
雛菊ちゃんはどこかホッとしたかのように満足気に微笑んでいる。
「あの⋯怒らないで聞いて欲しいんですけど」
「うん」
「俺や雛菊さん、東雲専務にたまに心春さんの様子聞かれてたんですよね。特に入社当初はしょっちゅう聞かれました。心春さんはうまくやってるか、困ってそうなことはないかとか」
「え⋯⋯」
(そんなこと知らない⋯⋯)
尚くんから話された内容は私自身初めて知ることで、そんな話今まで全く聞いたことがなかった。
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「最初はなんで聞いてくるのかなって思ってたんですけど、1回2回じゃなかったのでなんか知り合いとかなのかなって思ってました」
「ちなみに私はその段階で気づいてましたよ!東雲専務がこはるんのこと好きなんじゃないかってことに!」
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それはやはり同級生としてこの会社にスカウトした責任からなのだろうか。
それとも何かほかの気持ちからなのかは分からない。
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