年下上司の溺愛は甘すぎる

春野カノン

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任される喜び3

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「またすごいデザイン考えましたね瀬奈さん」

「早川さんらしいかなり繊細なデザインですけど、こんだけ想い込められてるものなのでこのまんま作りますよ」

「できそうですかね⋯」

「やってみせます。安心してこのまま進めてください」


なんて心強い職人たちなんだろう。
二人がいてくれればできないことはないんじゃないかと思わせてくれた。


「ならこれでいってきます」


再び松山さんたちの元へ戻ろうとすると丁度夏樹も事務所に戻ってきたため、商談の結果とデザインを見せる。
するとみんながいるこの場で人目をはばからずぎゅっと抱きしめてきた。


「えっ!?」

「おめでとう瀬奈さん。デザインもやっぱ瀬奈さんに任せてよかった、本当に素敵なデザインだよ」


すぐに身体を離し、私の肩を掴んで自分の事のように嬉しそうに話す夏樹を見ると自然と私も笑顔になる。
夏樹やみんなも喜んでくれて私自身もすごく嬉しかった。


事務所を出て松山さんご夫婦の元に戻る。
職人の確認も済み、このデザインで作成可能なことを伝えると二人で顔を見合って喜んでくれた。


その後必要な書類を準備し、今後のスケジュール確認、そしてお支払いを済ませたおふたりが帰るタイミングとなったため入口までお見送りをする。
最後まで二人はニコニコと笑顔で終始幸せそうだった。


「ではおふたりとも、作成を開始いたします。途中経過もまた確認いただきたいので連絡しますね」

「はい。早川さんよろしくお願いします。すごく楽しみにしてますね」

「よろしくお願いします早川さん」


おふたりの姿が見えなくなるまでお辞儀をして見送る。
今まで感じたことのないほどの達成感に満ち溢れていた。


誰かの大切なタイミングにジュエリーを任せてもらえることなこんなに喜びを感じるなんて。
この会社に来なければ知らないままの感情だった。


「お疲れ様です⋯瀬奈さん」

「ありがとう菜々子ちゃん」


おふたりが帰ったあとの片付けをしてくれる菜々子ちゃん。
夏樹が担当しているお客様との商談も丁度終わったようで全員でお客様を見送った。


「みんなひとまずお疲れ様!瀬奈さんも受注おめでとう」

「ありがとう。気に入っていただけてよかったよ」

「瀬奈さんが魂込めて描いてくれたこのデザイン、今度は俺と遠藤さんできっちり作っていきますんで」


真斗くんと遠藤さんは早速私が描いたデザインを元に作成に入るため工房へと戻っていく。
そして菜々子ちゃんも書類の処理などの仕事にそれぞれ戻った。


ひと段落ついた私と夏樹はメインスペースで少しだけ談笑をする。
私が描いたデザインの控えを見ながら夏樹は何度もうなづいていた。


「うんうん何度見てもすげーいいデザイン。ほんと瀬奈さんをスカウトして良かった」

「こちらこそだよ夏樹。夏樹がスカウトしてくれたからこうしてこんな素敵な仕事ができてる。本当にありがとう」


みんなは自分の事のように受注を喜んでくれて、全員一緒にひとつの作品を作ろうと意思がひとつになっている感じがした。
それにもすごくやりがいを感じるし、みんなのためにも頑張りたいと思える。


ここでもっとみんなと一緒に働きたいと強く思えた一日だった。
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