年下上司の溺愛は甘すぎる

春野カノン

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年末への招待1

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少し時が流れ今年も終わりを告げようとしている。
年末らしさが街中を歩くだけで感じられた。


"Pensiero"は年末の休みに入っていて次の出勤は年明けになる予定だ。
私は夏樹と一緒にソファに座り、年末の予定の話をしていた。


「瀬奈さんって31日なんか予定あるの?」

「毎年沙也加と飲んでたから今年もそうしようと思ってるよ」

「へえそうなんだ。俺もね実は毎年その日は真斗と過ごしてたんだよね」

「仲良しだねほんと」

「あれれ瀬奈さん嫉妬かな?」

「いや違うから」


恋人同士となってはまだ一ヶ月も経っていないが付き合う前に一緒に暮らし始めていたせいか、もっと長く付き合っている感じがする。
順番がいろいろと間違えてはいるが、順調に私たちは交際していた。


付き合いたての初々しさは正直ないが、彼の優しさを素直に受け止めることができている。
改めて彼氏として夏樹を見るとかっこいいし身体も筋肉ついてて好みだし優しいし、今のとこ欠点が見つからない。


「お互い友達と予定あるってことね。ならいっそ四人一緒にここで31日過ごさない?」

「えっ?それはどういう繋がりで??」

「んー深い意味は無いけど⋯」


突然の提案に驚いてしまう。
まさかそんなことを言われるなんて思ってもいなかったし考えてもなかった。


「年末で俺も真斗と会ってると瀬奈さんのこと迎えに行けないし、タクシーだって年末捕まりにくいだろうし、年末なだけで変なやつウロウロしてそうだし遅いと危ないから」

「でも沙也加もいるよ?」

「それでも心配なの。瀬奈さんかわいいからナンパされちゃうよ。そんなの俺許せない」

「夏樹みたいにね」

「⋯それは言わない約束だろ?」


私たちの始まりも夏樹が声をかけてきてくれたことからだった。
そのため何も言い返せないのかバツが悪そうに視線を泳がせている。


そんな姿にクスッと自然に笑ってしまった。
私は声をかけてくれたのが夏樹でよかったと本当に思っている。


「それに沙也加さんって瀬奈さんの親友でしょ?二回目のBARの時言ってたよね、親友も俺と同じこと言ってたしって。瀬奈さんの親友にも会ってみたいと思って」

「夏樹に会えるって言ったら絶対喜ぶだろうな沙也加」

「真斗も意外とコミュ力高いからなんとかなるよ」


そんなこんなで夏樹からの提案により年末は四人で過ごすことになる、しれなかった。
まぁおそらく沙也加は絶対二つ返事でいいよって言うだろうし。


「今日沙也加に話してみるね」

「うん。俺も言ってみる。今日送り迎えするよ」

「え、いいの?」

「うん。俺用事ないし、帰りまた連絡して」


付き合ってからというもの夏樹の過保護さがさらに加速したような気がする。
元々優しかったけど更に甘やかされているし、このまんまだと何もできない人間になりそうだ。


だけどこの優しさや行動が全て私への愛だと思えばこんな幸せなことはない。
夏樹の気持ちがちゃんと伝わってきて安心できる。


今日はたまたま沙也加と会う日でいろんなことを報告しようと思っていた。
十二月は沙也加の仕事が忙しいため今月は初めて会えるのがこの年末だ。


夏樹と付き合うとこになったことすら言えてないくらい沙也加には会えていなかった。
妹よりもずっと家族みたいな存在だからこそ、少し会えないだけで寂しい。


夕方になった私は夏樹に車で目的地の居酒屋まで送ってもらった。
普段仕事には歩いて行ってるため夏樹が車を持っていることにそこまで触れたことがなかったが黒いスポーツカーを乗りこなしている。


そういえば引越しを手伝ってくれた時も背の低い車に乗ってるんだなと思った記憶はある。
だけどその時は触れる余裕がなくスルーしてしまっていた。


「ありがとね夏樹」

「帰り連絡しろよ?あと変な男についてかないように、気をつけること」

「分かってるよ」


最後までまるでお母さんのように私のことを心配してくれる。
そんな夏樹の過保護も彼なりの愛ですごく幸せだった。
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