年下上司の溺愛は甘すぎる

春野カノン

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年末への招待2

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***


年末のため繁華街自体が賑やかで予約しておいてよかったと思い、冷たい手を擦りながら一足先にお店の中へと入った。
すると五分と経たないうちに沙也加もお店に到着したようで入口から手を振って歩いてくる。


「なんかいつも瀬奈を待たせてる気がする」

「たまたまだよ」


賑やかな店内につられて私たちの話す声も自然に大きくなった。
久しぶりに沙也加に会えてやっぱり心底安心する。


「瀬奈、今日は生から飲みたい」

「いいね付き合うよ」


生ビールを二つとその他のいくつかのつまみを頼み早速話に花を咲かす。
言いたいことがありすぎて、テーブルに身体を乗り出し前のめりに口を開いた。


「話したいことがありすぎて待ち遠しかったの」

「うん、だと思った。聞かせてよ瀬奈」

「まずはね、あのイケメンと付き合うことになりました」

「あら、やっと、って感じだね」


思いのほか驚いてない沙也加の様子に拍子抜けしてしまう。
もっと付き合うという報告に驚くかと思っていたが、想像通りと言いたげな表情だった。


頼んだ生ビールと順番に複数のおつまみが私たちのテーブルに運ばれてきた。
ジョッキを合わせて二人で乾杯をする。


「え、予想通りって感じ?」

「いやまぁね、ワンナイトした相手と一緒に住んでて更にはその相手がイケメンって好きにならない方がおかしいでしょ」

「いやーほんとねまんまと好きになっちゃったよ」

「私は時間の問題かなって思ってたから、聞けて良かった。おめでとう瀬奈」


あの時、沙也加に夏樹を好きになってしまう気持ちを止めてほしかった自分もいた。
だけど沙也加は私の気持ちを知ってか知らずか、あえて後押ししてくれたのを覚えている。


そんな沙也加の言葉があったからこそ夏樹への想いに怖がることなく向き合うことができたんだ。
味方でいてくれたことが本当に心強かった。


「⋯⋯心配だったの。その、光輝くんのこと。瀬奈がどれだけ光輝くんを想っていたか知ってたからさ⋯」

「ありがとう。でも今はもう大丈夫」


「本当に良かった」

「彼のおかげでもあるかな。本当にこっちが恥ずかしくなるくらい大事にしてくれるんだよね」


そんな私の顔を見て沙也加は嬉しそうに微笑んでいた。
無意識のうちに惚気けてしまったと思い、思わず口元を手で抑える。


そんな私のテンパった姿を見た沙也加は声を出して笑っていた。
沙也加には本当に隠し事ができないし、私も自然と話してしまうため完全に無意識の出来事だ。


「瀬奈の惚気、いただきました」

「やだ、恥ずかしい」

「いいじゃんたくさん聞かせてよ!はいカンパーイ!」


無理やりジョッキで乾杯をさせられる。
お酒も進み私たちの話もどんどん盛り上がった。


***


「へえ九条夏樹くんって言うんだ。年下とはやるじゃん瀬奈」

「年下とは思えない大人っぽさなんだよね。あとほんと普通に顔面がイケメンすぎる」

「わ~惚気じゃん。いいな実際見てみたい」


三杯目の生ビールをグイッと飲み干し私たちは次のドリンクとしてハイボールを注文する。
酔いも回ってきたタイミングで気分もだいぶ気持ちよくなってきた。


「そういえば夏樹が沙也加に会いたいって言ってたよ。31日、私たちの家で過ごさないかって。夏樹の幼なじみも来るらしいから四人でって」

「え、行く。まず九条くんにも会ってみたいし。幼なじみも美味しい展開すぎる」

「沙也加ならそう言うと思ってた。夏樹にも伝えておくね」


前髪をかき分けスマートフォンにスケジュールを入力する沙也加の姿がめちゃくちゃかっこいい。
同性の私から見ても沙也加はかっこいい憧れる女性だった。


楽しい気分のまま終わろうと思っていたが、沙也加には話しておいた方がいい事がほんのり心にしこりになって残っている。
妹のことが気がかりだった。


「楽しい気持ちで終わりたかったんだけど、沙也加にも伝えておきたいことがあって」

「ん、どうした?」

「ちょっと前に夏樹と住んでるポストに盗撮された写真が入ってて、どうやら美玲の仕業みたいだったの。私を貶めるためにやったみたいで光輝のことも私から婚約者を奪うために近づいたって確証を得た」
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