【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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上司と部下(4)

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「理玖くんもしかして待っててくれたの?」

「繁華街行くのに陽葵ちゃん1人なんて危ないでしょ?変な男が陽葵ちゃんに近づかないように牽制しないと」

「何それ牽制はいらないでしょ。でも待っててくれてありがとう。あー楽しみ!早く行こう!」

「いーえ。はいはいちょっと待って」


理玖くんと2人並んで歩くと、すれ違う人たちからチラチラと視線が集まる。
それは付き合っていた頃からで理玖くんの高身長で整った顔立ちが目を引くんだろう。


(相変わらず目立つな~理玖くんは)


「なんかあった?」

「え?」

「顔、暗いよ」

「気のせいじゃない?別に普通だよ」

「俺これでも2年ちょっと付き合ってた彼氏だよ。他の人より陽葵ちゃんのこと理解してるつもりなんだけど」


隣を歩く彼から真剣な眼差しを向けられ気持ちがこれ以上バレないように視線を逸らした。
私の横顔を見つめる理玖くんの視線は熱く熱を帯びている気がする。


「陽葵ちゃん、落ち込んだりした後ってそれが人にバレないようにわざと明るくテンション上げて話すよね。無理やり心配かけないように悟られないように」


2年ちょっとという時間はそんな隠したい癖を知られるには十分で、私の癖や特徴なんかを理玖くんはしっかりと把握していた。
それは理玖くんが付き合っていた頃、私の変化に敏感になってくれていたからなのかもしれない。


大切にされていたんだと改めて実感すると、バレたくなかったのに気づいてくれたことが嬉しいと思ってしまった。
落ち込んだ心にその優しさが染み渡り弱音を吐きそうになる。


だけど元彼に弱音を吐くのは甘えている気がして私の中に残る理性がそれを許さなかった。
甘えていいのは昔だからこそで、今の私たちはただの上司と部下なのだから。


「今付き合ってる彼と来週会う約束してたんだけど、仕事でなくなっちゃったの。そんだけだよ」

「⋯⋯⋯」

「2週間ぶりに会えると思ってたから寂しかっただけ。それだけだからほんとに大丈夫」


精一杯大丈夫という気持ちを込めて理玖くんに笑いかけるものの、彼が私に向ける視線は寂しげで悲しそうだった。
どうして理玖くんがそんな顔するのか私には分からない。


「無理やり笑わないでよ。俺そんな風に陽葵ちゃんに笑って欲しくない」

「⋯⋯」

「寂しい時は寂しいって悲しい時は悲しいって言わないと。陽葵ちゃんいつも1人で抱え込むんだから」

「もしそれを言うとしても理玖くんには言わないよ。理玖くんは元彼で、そんな弱音を元彼の理玖くんに吐いたらずるいと思う」

「ずるくていいじゃん。俺は利用される形でもいいよ」


元彼に弱音を吐くなんて元彼を利用しているみたいでそれは嫌だった。
いつまでも縋っているようにも見えるし、彼氏のことを他の男の人に泣きつくなんてそんなことできない。


利用される形でもいい、なんて理玖くんが言う真意が分からないしそんなのいいわけない。
私はこれ以上この話を広げないように目的地の場所まで先を歩いた。


「陽葵ちゃん⋯⋯」

「ほら、もうすぐ着くよ。主役の理玖くんがいないなんてありえないから、早く行くよ!」

「ねぇ陽葵ちゃん」


私の腕をグッと掴んで引き止められそのまま整った顔立ちが目の前に広がる。
距離の近さに思わず息を飲んだ。


「ちゃんと陽葵ちゃんが幸せでいてくれないと、ただの上司と部下の関係になった意味がない。陽葵ちゃんが幸せだって言いきれる状態でいてくれないと。じゃないと俺⋯⋯」

「理玖、くん?」


何かを言いかけて理玖くんはその先の言葉をグッと飲み込んだ。
そのまま私の手を離した理玖くんはさっきまでの表情が嘘のように、真意を隠した柔らかい笑みを浮かべて歩き出す。


(何を言いたかったんだろう⋯⋯)


いくら考えても答えは出なくて、私たちはそのまま無言でお店へと向かう。
既に宴会場には人が集まっており、少し遅れて現れた主役を前にみんなのボルテージがマックスになった。


華乃子ちゃんの姿を見つけるとこっち、と口パクで私を手招きしてくれるため人の合間を縫って席に座る。
なぜか私の隣には笠井さんが腕を組んで座っており、向かい側には華乃子ちゃんが座っていた。


(何この配置は⋯⋯)


「なんで私たちはいつもセットなんですかね」

「知るか。俺が聞きてぇよ」

「笠井さんを喋らせるためには陽葵が必要だってエンジニアの先輩が言ってましたよ」

「あはは、なるほどね」


おそらくこの機をチャンスと捉え、笠井さんにアプローチしたい女性社員にとっては喋りやすい雰囲気が必須なのだろう。
私を利用することによりそれをクリアしようとしているんだ。


笠井さんを喋らせるための駒として私は今日徹しようと思う。
机に設置されたタブレットで注文する方式のようで、私と華乃子ちゃんは2人で画面を覗き込んだ。


「笠井さん何飲みます?」

「生だな」

「了解です。華乃子ちゃんは?」

「私も生にしようかな~。陽葵はカシスウーロンかな?」

「さすが分かってるね華乃子ちゃん。そうする」


よく飲みに行くからこそ私が1番最初に頼む飲み物も熟知した華乃子ちゃんが人数分の飲み物を頼んでくれた。
他の席にも順番にお酒が届いているようでわいわいと盛り上がりが高まっていく。


理玖くんは女性社員に囲まれており、それを当たり障りのない笑みを浮かべてあしらっていた。
あの笑顔の時はそういう時だ。


唯斗もまた理玖くんと同じ席に座ることになってしまい、そのテーブルだけ女性率が非常に高い。
まるで合コンのようになっている。
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