【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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上司と部下(5)

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「はいではみなさん!飲み物もテーブルにやってきた所で乾杯しましょう!四ノ宮さんの歓迎会を祝して~かんぱーーい!」

「かんぱーーい!」


各々の飲み物を持ち近くの同僚たちとグラスをそれぞれ重ね合わせる。
みんなすごく楽しそうに笑い合う光景が目に焼き付いた。


私自身も大勢でワイワイはそこまで得意ではないが今日は純粋に楽しめそうだ。
私の隣でおつまみを食べながら生ビールを飲む笠井さんは、黙っていればかっこいいしやはり目立つ存在に変わりない。


矢継ぎ早に次々と女性社員が私たちのテーブルにやって来る。
みんな笠井さんとお近付きになろうと必死だが全員玉砕していた。


「俺のとこには来なくていいから、四ノ宮の所にでも行ってこい」

「笠井さん冷たいですよ~。みんな笠井さんと話したいのに」

「俺は話すより飲みたいタイプなんでね。さっさと別の男探してこい」


軽くあしらっているし口も悪いにも関わらずみんな嫌な気はしていないのは日頃の笠井さんの仕事ぶりや人柄を知っているからだろう。
だから何度も諦め悪くアタックする女性陣が多いんだ。


そんな様子を私と華乃子ちゃんは料理を食べながら眺めていた。
居酒屋のコースメニューはどんどん運び込まれてきて机の上は大量の料理で埋め尽くされている。


「陽葵こっちも食べる?」

「食べる。お刺身美味しそう」


華乃子ちゃんが取り分けてくれたお刺身を醤油をつけて食べると自然と口角が上がった。
仕事終わりの美味しいご飯とお酒はやっぱり最高に美味しい。


お刺身を頬張って美味し~と呟くと私の隣でクスッと笠井さんに笑われた。
声が聞かれていたことが恥ずかしくなり身体を縮こませる。


「気にせず好きなだけ食べろ」

「あんまり見ないでくださいよ食べにくいので」


華乃子ちゃんが焼き鳥を片手に生ビールを飲む姿はかっこよすぎて女の私でも惚れてしまいそうだ。
お酒の強い華乃子ちゃんだからか生ビールをぐびぐび飲んでいるにも関わらず顔色ひとつ変わらない。


一気に飲み干し空いたグラスを交換するように華乃子ちゃんは新しい生ビールを注文していた。
ハイペースに飲んでいるように思えるが華乃子ちゃんはいつもこんな感じだ。


「ねえ陽葵。今度は2人で飲みに行こうね」

「そうだね最近行ってないもんね」

「積もる話、しに行こう」

「ふふ華乃子ちゃんの話聞くの楽しみ」


しばらくお酒を飲んでいるとプログラマーの同僚に呼ばれたため華乃子ちゃんが席を移動した。
残された私と笠井さんは静かに料理を楽しむ。


チラッと理玖くんの姿を確認すると相変わらず周りには女性社員で埋め尽くされており、とても近づける状況ではない。
さっきのこともあるため今はあまり顔を合わせたくないため丁度良かった。


「理玖さ、すごいモテるだろ?」

「あ、まぁ今もあんなに女性社員に囲まれてますしね」


チラッと横目でそんな姿を確認しながらごく当たり前のように呟く。
昔からモテてたのは知ってたし今更驚くことではなかった。


「けど、最後に付き合った彼女と別れてから誰とも付き合ってないんだってよ」

「へぇそうなんですね」

「すげー好きだったんだろうな、その子のこと」

「どうなんでしょうね。私じゃ分からないです」

「あいつ、あー見えて意外と一途だからなぁ」


笠井さんは遠目で理玖くんを見つめてぼんやりと呟いた。
どうしてそんな話を私にするのかは分からない。


でも最後に付き合っていた彼女というのはおそらく私のことだ。
理玖くんも私と別れてから彼女はいないと言っていたし。


だけどそんな話を今聞いたところで私にはなんの関係もない。
理玖くんはただの元彼で、今の私たちはただの上司と部下なのだから。


飲み会もしっかり楽しみ、みんなだいぶ酔っ払い始めた頃、女性社員から逃れた唯斗が私たちの座る席にやって来た。
楽しい歓迎会なのになぜか彼はやつれているような気がする。


「おいおい陽葵~。楽しそうに笠井さんと飲んでるじゃん。俺はどっと疲れたっていうのに。俺も混ぜろ~」

「ふふっお疲れ様。まぁここならゆっくりできるから」

「陽葵は飲んでる?いつもみたいにカシスウーロンか?」

「うん、3杯目のカシスウーロン飲んでるよ」


そろそろお酒をセーブした方がよさそうだ。
これ以上飲むとふらふらして家に帰れなくなりそうだった。


「確か、副島と百瀬は同期だったよな」

「そうなんですよ!あとプログラマーの華乃子も同期で仲良いんですよ俺たち」

「確かによく一緒にいるもんな」


お酒が進みいろんな話をしているうちにあっという間に時間は過ぎていく。
飲み放題の時間も終わりを迎え、いよいよ帰宅時間がやって来た。


歓迎会は無事大成功に終わったようでみんな各々楽しめたようだ。
一部の社員は二次会に行くようだが私はお酒が強くないため、ここでお暇しようと思っている。


「えーー笠井さんも四ノ宮さんも帰るんですか~」

「あとは若いもんで楽しんでこい。俺らは先帰るよ」

「あははごめんな。みんなは楽しんできて」

「分かりました~。副島くんは行くよね~」

「え、俺も帰ろうかと⋯⋯」

「はーい行くよ~」


唯斗の首に腕を回した同僚に連れられ彼は夜の街に消えていった。
華乃子ちゃんも二次会に参加するようで、彼女もいれば唯斗は大丈夫だろう。


私は数人の帰る予定の社員たちと残り、それぞれ別れの挨拶をし帰路に着いた。
残されたのは私と笠井さんと理玖くんだけだ。


「百瀬、1人で帰れるか?」

「はい。大丈夫です」

「部屋隣だから俺が送ってくよ」

「おー頼んだぞ理玖。あ、送り狼になんなよ」

「ならないよ。余計なこと言ってないで圭哉も帰りな」


笠井さんは私たちに手を振って1人背中を向けて歩いていった。
私はと言うと理玖くんと並んでゆっくり歩き出す。


歩道を歩く時に自然と車道側を歩いてくれたりするのは昔からでそれは今も健在なようだ。
何も言わずともそういう事が出来る部分がモテるんだろう。


「お酒けっこう飲んだの?」

「そんなに飲んでないよ。3杯くらい」

「あんまり強くないんだから飲みすぎちゃダメだよ」

「分かってるよ。そんな心配しなくたってセーブできるから」

「⋯⋯部屋が隣だとこういう時に自然と送ってあげられるから良かったよ。他の誰でもなく、俺が陽葵ちゃんを送れるし」


その言葉の真意を私は考えないようにした。
少しだけ含みを持たせたようにも聞こえるが、考えれば考えるほど心を乱されてしまう。


今の私には必要のない感情で、知る必要のない気持ちだ。
隣を歩く距離感は肩が少し触れ合うくらい近いというのに、私は心の距離を自ら無意識のうちに離そうとしていた。
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