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その時、隣にいるのは(2)
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「あの⋯陽葵、聞いて」
「いいよ聞こうか。どんな言い訳してくれるわけ?」
「その⋯最近忙しくて陽葵に全然会えてなかっただろ?それで寂しくて、その会えない時間を彼女が埋めてくれたというか⋯⋯でも!好きなのは陽葵なんだよ」
「寂しさって何?身体ってこと?所詮性欲に負けたってことだよね」
「⋯そうじゃない!」
「近づかないで」
距離を詰めようとする健二くんを言葉で制する。
未だにベッドの上で硬直し布団に包まれる女に視線を向けた。
「で、あなたは何か言うことないの?」
「⋯⋯」
「そんなとこでいつまでも蹲ってないで何か言ったらどうです?」
「けんちゃん、別れるって言ってたから⋯!仕事忙しくてなかなか会えないから、会える時間しっかり取れて近くで触れ合える私の方がいいって!」
(なるほどね、近くで会えて手っ取り早く性欲処理できる彼女のほうが健二くんにはメリットだったってことね)
急速に私の中から何かの感情が抜け落ちていく気がした。
吐き気がするくらい気持ち悪いし、こんな人を好きだった今までの時間はなんだったんだろう。
この人と同棲したい、いずれ結婚したいなんて思っていた自分が恥ずかしい。
陽葵、と名前を呼んで手を伸ばしてくるその腕を叩いて再び振り払う。
「汚い手で触らないで。気色悪い」
自分の口からこんな言葉が出るなんて思ってもなかった。
私はこんなにも冷たい人間なんだと初めて知る。
「これ、もういらないから」
「え、陽葵⋯?!」
持っていた合鍵を部屋に投げ捨て片手に持っていた食材の袋もそこに投げ棄てる。
今まで楽しみにしていた感情も、会えなくて寂しいと思っていた日々も全てが無駄で虚しくなった。
「私と別れて。その後その女とせいぜい仲良くしたら?」
「別れたくない!陽葵!」
「無理だから。他の人に触れた手で私に触らないで気持ち悪い。別れる以外の選択肢なんてない」
「待ってよ陽葵!」
こんなに取り乱した健二くんの姿を見たのは初めてだ。
初めて見たその姿が別れたくないと縋る時だなんてあまりにも滑稽で笑えてくる。
彼らに背を向けて玄関に向かう私をパンツ一丁姿で追いかけてくる健二くん。
私の腕を掴んで止めようとするのを思い切り振り払った。
「そんなに必死に止めるなら最初から浮気なんてしなければよかったじゃん!」
「それは、その⋯⋯」
「もう2度と連絡もしてこないで」
扉を勢いよく開けて健二くんの部屋を飛び出す。
そもそも私は悪くないのにどうして私が飛び出さないといけないんだろう。
それに対しても腹が立ってきた。
足早に駅に向かう途中に蘇るのは浮気現場の光景。
私よりも若くてきゅるんとした可愛らしい女の子だった。
健二くんはやっぱりあんな感じの子が好きだったんだ。
服装は可愛い系が好きだって言っていた好みどストライクな子だった。
そもそもいつから浮気されていたんだろう。
あの女はずっと、と言っていたが、そのずっとはいつからのことを言っているんだろうか。
冷静に考えると健二くんと忙しくて会えなくなり始めたのは半年くらい前からだ。
もしかしたらそのくらいのタイミングからなのかもしれない。
数ヶ月という間、私は騙されていたのか。
私と身体を重ねていた間も私が知らないところであいつらは逢瀬を重ねていたのかと思うと吐き気を催す。
何も考えずに電車に乗りあっという間に自分の家の最寄り駅に着いた。
すっかり暗くなりとぼとぼと重たい足取りでマンションへと向かう。
家に帰れば1人で、家の中には健二くんとの思い出がありすぎて戻るのが辛い。
私はふらふらとした足取りでインターホンを押していた。
それは私の部屋ではなく、隣の住民の部屋のだった。
『はい』
「⋯⋯⋯理玖、くん?」
ポツリと呟くとインターホンの向こうで息を飲んだ直後、ブチッと切れてバタバタと足音が近づいてくる。
勢いよく扉が開くと私が家を出る前に会った服装と同じ服の理玖くんが姿を現した。
「どうしたの!陽葵ちゃん」
「⋯⋯⋯」
「なんかあった?」
理玖くんの優しい声音が耳に響きじわじわと涙が滲み出てきた。
この涙は悲しさからのものなんかじゃない。
「浮気、されてた」
「え、浮気?」
「うん⋯⋯彼の家に行ったら知らない女と逢瀬中だった」
「⋯⋯⋯うん」
「ムカついて暴言吐いて飛び出してきたの」
「そっか」
理玖くんは私の身体をギュッと抱き締めた。
ほんのり香る理玖くんの匂いはあの頃と変わらなくて、思い出すだけで気持ちが穏やかになりすごく落ち着く。
抱きしめながら私の髪をそっと撫でる指先はとても優しくて心がどんどん満たされていった。
こんな気持ちに元彼相手になるなんて最低な女だ。
(いや、もっと最低なことをされたんだからこれくらい許されるでしょ)
「今は1人になりたくない」
「うん。分かった」
「いいよ聞こうか。どんな言い訳してくれるわけ?」
「その⋯最近忙しくて陽葵に全然会えてなかっただろ?それで寂しくて、その会えない時間を彼女が埋めてくれたというか⋯⋯でも!好きなのは陽葵なんだよ」
「寂しさって何?身体ってこと?所詮性欲に負けたってことだよね」
「⋯そうじゃない!」
「近づかないで」
距離を詰めようとする健二くんを言葉で制する。
未だにベッドの上で硬直し布団に包まれる女に視線を向けた。
「で、あなたは何か言うことないの?」
「⋯⋯」
「そんなとこでいつまでも蹲ってないで何か言ったらどうです?」
「けんちゃん、別れるって言ってたから⋯!仕事忙しくてなかなか会えないから、会える時間しっかり取れて近くで触れ合える私の方がいいって!」
(なるほどね、近くで会えて手っ取り早く性欲処理できる彼女のほうが健二くんにはメリットだったってことね)
急速に私の中から何かの感情が抜け落ちていく気がした。
吐き気がするくらい気持ち悪いし、こんな人を好きだった今までの時間はなんだったんだろう。
この人と同棲したい、いずれ結婚したいなんて思っていた自分が恥ずかしい。
陽葵、と名前を呼んで手を伸ばしてくるその腕を叩いて再び振り払う。
「汚い手で触らないで。気色悪い」
自分の口からこんな言葉が出るなんて思ってもなかった。
私はこんなにも冷たい人間なんだと初めて知る。
「これ、もういらないから」
「え、陽葵⋯?!」
持っていた合鍵を部屋に投げ捨て片手に持っていた食材の袋もそこに投げ棄てる。
今まで楽しみにしていた感情も、会えなくて寂しいと思っていた日々も全てが無駄で虚しくなった。
「私と別れて。その後その女とせいぜい仲良くしたら?」
「別れたくない!陽葵!」
「無理だから。他の人に触れた手で私に触らないで気持ち悪い。別れる以外の選択肢なんてない」
「待ってよ陽葵!」
こんなに取り乱した健二くんの姿を見たのは初めてだ。
初めて見たその姿が別れたくないと縋る時だなんてあまりにも滑稽で笑えてくる。
彼らに背を向けて玄関に向かう私をパンツ一丁姿で追いかけてくる健二くん。
私の腕を掴んで止めようとするのを思い切り振り払った。
「そんなに必死に止めるなら最初から浮気なんてしなければよかったじゃん!」
「それは、その⋯⋯」
「もう2度と連絡もしてこないで」
扉を勢いよく開けて健二くんの部屋を飛び出す。
そもそも私は悪くないのにどうして私が飛び出さないといけないんだろう。
それに対しても腹が立ってきた。
足早に駅に向かう途中に蘇るのは浮気現場の光景。
私よりも若くてきゅるんとした可愛らしい女の子だった。
健二くんはやっぱりあんな感じの子が好きだったんだ。
服装は可愛い系が好きだって言っていた好みどストライクな子だった。
そもそもいつから浮気されていたんだろう。
あの女はずっと、と言っていたが、そのずっとはいつからのことを言っているんだろうか。
冷静に考えると健二くんと忙しくて会えなくなり始めたのは半年くらい前からだ。
もしかしたらそのくらいのタイミングからなのかもしれない。
数ヶ月という間、私は騙されていたのか。
私と身体を重ねていた間も私が知らないところであいつらは逢瀬を重ねていたのかと思うと吐き気を催す。
何も考えずに電車に乗りあっという間に自分の家の最寄り駅に着いた。
すっかり暗くなりとぼとぼと重たい足取りでマンションへと向かう。
家に帰れば1人で、家の中には健二くんとの思い出がありすぎて戻るのが辛い。
私はふらふらとした足取りでインターホンを押していた。
それは私の部屋ではなく、隣の住民の部屋のだった。
『はい』
「⋯⋯⋯理玖、くん?」
ポツリと呟くとインターホンの向こうで息を飲んだ直後、ブチッと切れてバタバタと足音が近づいてくる。
勢いよく扉が開くと私が家を出る前に会った服装と同じ服の理玖くんが姿を現した。
「どうしたの!陽葵ちゃん」
「⋯⋯⋯」
「なんかあった?」
理玖くんの優しい声音が耳に響きじわじわと涙が滲み出てきた。
この涙は悲しさからのものなんかじゃない。
「浮気、されてた」
「え、浮気?」
「うん⋯⋯彼の家に行ったら知らない女と逢瀬中だった」
「⋯⋯⋯うん」
「ムカついて暴言吐いて飛び出してきたの」
「そっか」
理玖くんは私の身体をギュッと抱き締めた。
ほんのり香る理玖くんの匂いはあの頃と変わらなくて、思い出すだけで気持ちが穏やかになりすごく落ち着く。
抱きしめながら私の髪をそっと撫でる指先はとても優しくて心がどんどん満たされていった。
こんな気持ちに元彼相手になるなんて最低な女だ。
(いや、もっと最低なことをされたんだからこれくらい許されるでしょ)
「今は1人になりたくない」
「うん。分かった」
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