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その時、隣にいるのは(4)
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「なんで、止めるの?」
「飲み過ぎだよ陽葵ちゃん。もう顔真っ赤」
「酔ってないよ。ちゃんと理解できてる」
「理解できてません。理解できてるなら口説いてる男の前でそんなふうに酔わないよ」
「だって、理玖くんは私の嫌がることしないじゃん」
「信頼されてるのは嬉しいけど俺も男だよ。こう見えても結構我慢してるんだけど」
熱情の篭った視線が私に向けられ身体中が熱くなる。
そういう対象で私を見てくれているのが伝わってきて酔った思考の中でも恥ずかしさを覚えた。
酔った勢いで身体を重ねるのもアリかもしれない。
でも思考回路も曖昧な状態で理玖くんの気持ちを利用する真似はできなかった。
「こんな風に俺以外の前で酔っ払っちゃだめだからな」
「ふだんは⋯こんなふうに酔っ払うことなんてないよ」
「こんな顔真っ赤にして瞳も潤ませて、誘ってるって思われても仕方ないくらい色っぽい顔してる」
「なにそれ⋯」
先程一気に飲み干した梅酒のソーダ割りが効いたのか酔いが身体中に回ってきた。
ふわふわとした雲の上に漂っているような感覚に陥る。
心地よく酔っ払う中で私を心配する理玖くんの声だけはしっかり耳に届いており、それに舌足らずにしっかり言葉を返した。
そんな私を見てため息を吐きながらいつの間にかお会計を済ませ、身体を支えられながらお店を後にする。
外に出ると夜風が私の頬を撫で、少しだけ酔いが覚めていくのが分かった。
こんな風にお酒を飲んで酔っ払ったのは久しぶりだ。
(すごい楽しかったなぁ)
「ほら帰るよ」
「え~?もう1軒行かないの~?」
「行かないよ。すげー酔っ払ってるじゃん。もう飲めないよ陽葵ちゃんは」
「理玖くんは全然酔っ払ってないね~」
「そりゃ陽葵ちゃんをちゃんと家まで送り届けないといけないからね」
私の手を取ってゆっくりと歩き出す理玖くん。
酔っ払う私を支えるために手を繋いでくれているというのが分かっているが、触れ合う肌が心地よくて自然と口角が上がる。
歩いている最中も自然と車道側を歩いてくれてそういう優しさにキュンと胸が高鳴った。
こういう気配りができるところがモテるんだろう。
居酒屋から家までは近いためあっという間に部屋に着いた。
部屋に着いたのが分かると自然と現実に戻された気がして楽しさが一気に消えていくのが分かる。
一向に部屋に戻らず繋がれた手を離さない私を見た理玖くんは少し屈んで俯く私の顔を覗き込んだ。
焦げ茶の髪がほんの少しだけ目元にかかり、その隙間から真っ直ぐ見つめられ心臓がドキドキと脈打つ。
「部屋着いたけど、帰らないの?」
「別れたばっかだから、1人になるのやだ」
繋がれた手をぎゅっと掴むとそれに応えるように理玖くんも握り返してくれた。
口説かれた相手にこんなことを言うなんてずるいって分かってる。
それでも今はこの部屋に1人でいたくなくて、誰かと一緒にいたかった。
きっと理玖くんは同じ部屋にいたとしても私に何もしてこないだろう。
一緒に過ごした時間を思い出せば誠実な彼の性格を知っているため無条件に信頼していた。
ジーッと理玖くんの瞳を見つめると大きなため息をつかれる。
「ずるいのはどっちだろうね陽葵ちゃん」
「わかってる⋯」
「生殺しだからね俺にとっては。でもこんな状態の陽葵ちゃんを1人にしておく方が心配だから、今晩だけだよ」
「うん⋯」
「明日以降は覚悟してよ?」
「⋯覚えてたらね!」
ガチャっと部屋の鍵を開けた理玖くんに導かれるようにそっと家の中に入る。
間取りは私の部屋と同じためリビングに入るとベッドが配置されており、扉1枚でキッチンが仕切られていた。
私の部屋とは対照的にグレーと白を基調にまとめられた部屋はすごく大人っぽくてシックな雰囲気だ。
大人の男性の雰囲気が滲み出ている。
「水持ってくるから、ベッドに座ってたら?」
「うん」
キッチンに向かうその背中を見送りベッドに腰をかけると、なぜかとてつもなく眠気が襲ってきた。
張り詰めていた緊張感が切れたのか瞼がだんだん持ち上がらなくなってくる。
気づけば私の身体は理玖くんのベッドに沈んでいた。
鼻腔に理玖くんの香りがいっぱいに広がり、懐かしさが全身を包み込む。
「陽葵ちゃん?」
理玖くんに呼ばれている気がするがあまりにも眠たくて返事を返すことができない。
その直後、頭を温かく大きな手のひらで撫でられたような感覚がした。
「ほんと⋯可愛いね陽葵ちゃん」
「ん⋯⋯」
「今日のことは全部忘れていいよ。ゆっくりおやすみ」
甘く囁く言葉を耳に私は完全に意識を手放した。
いつも1人で眠る時よりもずっとぐっすりと穏やかな気持ちで眠りに入れた気がする。
「飲み過ぎだよ陽葵ちゃん。もう顔真っ赤」
「酔ってないよ。ちゃんと理解できてる」
「理解できてません。理解できてるなら口説いてる男の前でそんなふうに酔わないよ」
「だって、理玖くんは私の嫌がることしないじゃん」
「信頼されてるのは嬉しいけど俺も男だよ。こう見えても結構我慢してるんだけど」
熱情の篭った視線が私に向けられ身体中が熱くなる。
そういう対象で私を見てくれているのが伝わってきて酔った思考の中でも恥ずかしさを覚えた。
酔った勢いで身体を重ねるのもアリかもしれない。
でも思考回路も曖昧な状態で理玖くんの気持ちを利用する真似はできなかった。
「こんな風に俺以外の前で酔っ払っちゃだめだからな」
「ふだんは⋯こんなふうに酔っ払うことなんてないよ」
「こんな顔真っ赤にして瞳も潤ませて、誘ってるって思われても仕方ないくらい色っぽい顔してる」
「なにそれ⋯」
先程一気に飲み干した梅酒のソーダ割りが効いたのか酔いが身体中に回ってきた。
ふわふわとした雲の上に漂っているような感覚に陥る。
心地よく酔っ払う中で私を心配する理玖くんの声だけはしっかり耳に届いており、それに舌足らずにしっかり言葉を返した。
そんな私を見てため息を吐きながらいつの間にかお会計を済ませ、身体を支えられながらお店を後にする。
外に出ると夜風が私の頬を撫で、少しだけ酔いが覚めていくのが分かった。
こんな風にお酒を飲んで酔っ払ったのは久しぶりだ。
(すごい楽しかったなぁ)
「ほら帰るよ」
「え~?もう1軒行かないの~?」
「行かないよ。すげー酔っ払ってるじゃん。もう飲めないよ陽葵ちゃんは」
「理玖くんは全然酔っ払ってないね~」
「そりゃ陽葵ちゃんをちゃんと家まで送り届けないといけないからね」
私の手を取ってゆっくりと歩き出す理玖くん。
酔っ払う私を支えるために手を繋いでくれているというのが分かっているが、触れ合う肌が心地よくて自然と口角が上がる。
歩いている最中も自然と車道側を歩いてくれてそういう優しさにキュンと胸が高鳴った。
こういう気配りができるところがモテるんだろう。
居酒屋から家までは近いためあっという間に部屋に着いた。
部屋に着いたのが分かると自然と現実に戻された気がして楽しさが一気に消えていくのが分かる。
一向に部屋に戻らず繋がれた手を離さない私を見た理玖くんは少し屈んで俯く私の顔を覗き込んだ。
焦げ茶の髪がほんの少しだけ目元にかかり、その隙間から真っ直ぐ見つめられ心臓がドキドキと脈打つ。
「部屋着いたけど、帰らないの?」
「別れたばっかだから、1人になるのやだ」
繋がれた手をぎゅっと掴むとそれに応えるように理玖くんも握り返してくれた。
口説かれた相手にこんなことを言うなんてずるいって分かってる。
それでも今はこの部屋に1人でいたくなくて、誰かと一緒にいたかった。
きっと理玖くんは同じ部屋にいたとしても私に何もしてこないだろう。
一緒に過ごした時間を思い出せば誠実な彼の性格を知っているため無条件に信頼していた。
ジーッと理玖くんの瞳を見つめると大きなため息をつかれる。
「ずるいのはどっちだろうね陽葵ちゃん」
「わかってる⋯」
「生殺しだからね俺にとっては。でもこんな状態の陽葵ちゃんを1人にしておく方が心配だから、今晩だけだよ」
「うん⋯」
「明日以降は覚悟してよ?」
「⋯覚えてたらね!」
ガチャっと部屋の鍵を開けた理玖くんに導かれるようにそっと家の中に入る。
間取りは私の部屋と同じためリビングに入るとベッドが配置されており、扉1枚でキッチンが仕切られていた。
私の部屋とは対照的にグレーと白を基調にまとめられた部屋はすごく大人っぽくてシックな雰囲気だ。
大人の男性の雰囲気が滲み出ている。
「水持ってくるから、ベッドに座ってたら?」
「うん」
キッチンに向かうその背中を見送りベッドに腰をかけると、なぜかとてつもなく眠気が襲ってきた。
張り詰めていた緊張感が切れたのか瞼がだんだん持ち上がらなくなってくる。
気づけば私の身体は理玖くんのベッドに沈んでいた。
鼻腔に理玖くんの香りがいっぱいに広がり、懐かしさが全身を包み込む。
「陽葵ちゃん?」
理玖くんに呼ばれている気がするがあまりにも眠たくて返事を返すことができない。
その直後、頭を温かく大きな手のひらで撫でられたような感覚がした。
「ほんと⋯可愛いね陽葵ちゃん」
「ん⋯⋯」
「今日のことは全部忘れていいよ。ゆっくりおやすみ」
甘く囁く言葉を耳に私は完全に意識を手放した。
いつも1人で眠る時よりもずっとぐっすりと穏やかな気持ちで眠りに入れた気がする。
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