【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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とびきり甘い理由 side理玖

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6月下旬に差し掛かった仕事が休みの土曜日。
今日は陽葵ちゃんとデートの日だ。


朝から俺と出かけるために準備をする陽葵ちゃんを想像するだけで胸が高鳴る自分がいた。
メイクも服装も全部俺に見せるために整えてくれていると思うだけで愛おしさが込み上げる。


(早く会いたいな⋯)


冷静になると少し恥ずかしくなってくる。
1度は振られたというのに懲りずに未だに未練がましくアタックする28歳男性が少しだけ哀れにも思えた。


隣の部屋で陽葵ちゃんが生活しているのも生々しくそしてなんとも言えない高揚感を感じる。
こんなに近くにいるのに、別々の部屋で一緒に出かけようとしている所が特殊な1日の始まりだ。


薄手のシャツを羽織り、白いインナーと黒いパンツを合わせたコーデを組んだ。
陽葵ちゃんは俺のためにどんな可愛い服を着てくれるんだろうか。


前に見た時は大学の時の雰囲気とは少し違った。
可愛い系でまとめられたふわふわとしたその服はきっと陽葵ちゃんが付き合っていた元彼の好みなんだろう。


大学の頃の陽葵ちゃんはどちらかというとキレイめの服が多かったため、相手の好みに合わせていると思うと愛らしいと思うと同時に嫉妬心が芽生える。
そんな気持ちを掻き消すように俺はスマートフォンを片手に陽葵ちゃんの名前を探して電話をかけた。


もうすぐ会えると言うのに電話がかかってくる理由が分からないと言わんばかりに不思議そうな陽葵ちゃんの声が返ってくる。
こうやって電話をして出てくれることがどれだけ嬉しいか、きっと陽葵ちゃんは知らない。


「もしもし陽葵ちゃん?おはよう。準備は進んでる?」

『おはよう。待ち合わせの時間には間に合うように準備してるよ』

「そっか。俺楽しみすぎてワクワクしちゃって、早く陽葵ちゃんの声聞きたくてつい電話しちゃったんだよね」


電話越しにも想像が簡単につくくらい陽葵ちゃんの顔はきっと今赤いだろう。
返答に困り慌てる陽葵ちゃんの行動が手に取るように分かる。


もう数十分後には会えると言うのに、我慢できなかったなんて年甲斐もなくて笑われるかもしれない。
それでも俺は陽葵ちゃんに振り向いてほしくて必死だった。


「早く陽葵ちゃんに会いたい」

『もうすぐ会えるよ?』

「待ち遠しい。楽しみにしてるね」

『うん⋯またあとでね』


少しだけ甘えたような声で可愛く訴えると、それに答えるように優しげな声が返ってきた。
自分の素直な気持ちを伝えるしか俺は陽葵ちゃんを振り向かせられる方法を知らない。


(俺の言葉に真っ直ぐ応えようとしてくれる、そんなとこが俺は好きだったんだよなぁ)


陽葵ちゃんを待つために俺は財布とスマートフォンだけ持って足早に部屋の玄関を開けた。
約束の11時になるとほぼ同時に隣に住む陽葵ちゃんの部屋の玄関が開き、中から可愛い彼女の姿が見える。


耳元には揺れるピアスがキラッと輝き、夏用の7分丈の薄手のニットにタイトスカートを合わせた見慣れたコーデの陽葵ちゃんがいた。
数年ぶりに俺だけに向けられるその視線が可愛くて今すぐにでも連れて帰りたくなる。


「ごめん、おまた───」


言葉を全部言い終える前に俺は陽葵ちゃんの華奢で小さな身体をぎゅっと包み込んでいた。
いきなりの行動に彼女は為す術なく、すっぽりと大人しく抱き締められている。


陽葵ちゃんの首元に顔を埋めながら頭をグリグリと押し付けるその行為は俺なりの甘えた行為で、自分の中で焦りを感じているのが分かる。
こんなに可愛い彼女なんだからいろんな男が好きになってもおかしくない。


「あの、理玖くん⋯⋯」

「おはよ陽葵ちゃん。すげー会いたかった」

「うん、ありがと」

「陽葵ちゃんの懐かしい匂いがする。この少しだけ甘い匂い、抱き締めるといつも陽葵ちゃんから香って、俺これがすごい好きだったんだよな」


陽葵ちゃん愛用の香りはほんのり甘くて、でもくどくない俺の大好きな香りだ。
匂いというのは本能的に刻まれやすいというのはどうやら本当のようで、一気に過去の記憶が蘇る。


抱き締める腕の力を弱めた俺は腰に腕を回し身長差のある陽葵ちゃんを見下ろす。
口角を上げて微笑む俺に対して陽葵ちゃんは、顔をほんのり赤くさせ緊張したように瞬きを繰り返していた。


「陽葵ちゃん可愛い。服似合ってるね」

「あ、ありがとう」

「スタイルいいから陽葵ちゃんってタイトな服が似合うと思う」

「恥ずかしいので、あまり見ないで、ください」

「やだ。せっかく可愛い陽葵ちゃんを独り占めできるのに見ないなんて勿体なくてできない。たくさん見させてよ」


どこまでも俺の言葉で甘く溶かしたい。
砂糖よりも甘いその言葉にどろどろに溶かされてしまえばいいのにとさえ思う。


心臓の音が聞こえてしまわないように俺の胸をそっと押し返す陽葵ちゃんだが、ビクともさせず彼女を見下ろして口角を上げて笑う。
甘やかしたい気持ちを込めて甘く微笑むと陽葵ちゃんは恥ずかしそうに頬を赤くさせ俺に困ったように視線を向けた。


「可愛い陽葵ちゃんを見られるのは嬉しいけど、このスタイルを他の男にも見せるのが悔しいな⋯」

「ちょ、むり!理玖くん朝から糖分が多すぎて胸焼けしそうなんですが⋯!」

「こんなんで根を上げてたら先が持たないよ陽葵ちゃん」


陽葵ちゃんの顎に指をかけて上を向かせるとバチッと視線が交わる。
風が吹いたと同時に俺の前髪が揺れてキラッと輝いた耳元のピアスに陽葵ちゃんが視線を向けた。


俺の耳元に視線を向ける理由は分かっている。
でも陽葵ちゃんはそのピアスを見ても何も言ってこなかった。


「今日はめちゃくちゃに陽葵ちゃんを甘やかすつもりだから。覚悟しててね」

「心臓止まりそう」

「キスして目覚めさせてあげる」

「その前に心臓止めないようには努力してくれないんだ」

「それは約束できないかも」


まだデートはスタートしていないというのに既に陽葵ちゃんのライフポイントはかなり削られまくっているようだ。
今日が終わる頃には陽葵ちゃんが瀕死になっていないか心配だけど、俺にも手加減できるほどの余裕はない。
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