【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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予期せぬタイミングでの紹介

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11月中旬の月曜日。
珍しく華乃子ちゃんが外でランチをしようと誘ってくれたため、仕事の合間の休憩時間を使ってパスタが美味しいお店にやって来た。


いつもはテイクアウトなどで会社で食べることが多いため、外で食べようなんて何か理由があるはずだ。
私は何も聞かず二つ返事でその誘いを了承した。


「陽葵は何食べる?」

「このメニューに載ってるウニクリームパスタから目が離せない⋯⋯」

「ふふふっ、だと思った。これすごい美味しそうだもんね」

「だけど隣に載ってるワタリガニのトマトクリームパスタも捨て難い」

「え、それ私もいいなって思ってたやつ。ならそれ頼もうかな。シェアしようよ」

「それいい!そうしよ。両方食べれるもんね」


私たちはそれぞれパスタを注文しシェアすることで落ち着いた。
料理を待つ間は仕事の話などをしているとあっという間に時間が過ぎていく。


かき揚げた黒髪を耳にかけ、水を口に運ぶ姿はすごくかっこよくて思わず見惚れてしまう。
だけどなんとなくいつもと雰囲気が違うことに私は気づいていた。


ただ華乃子ちゃんがお昼に誘ってくれたことも何かしら理由があるだろうし、私から聞くべきなのか悩んでいるとフワッと微笑みかけられる。


「陽葵ってほんといろんなこと考えてくれてるよね」

「それはどういう⋯?」


クスッと笑う華乃子ちゃんの視線はとても柔らかくそして優しい。
そんな眼差しで見られ、少しだけ恥ずかしくなった私はそれを隠すように水を口に含んだ。


「陽葵のことだから私が何か話したいんだろうなってのは気づいてるんでしょ?だけど自分から聞くかどうか、悩んでる顔してる」

「すごい。全部当たってる。エスパーってくらいその通り」

「分かりやすいの陽葵が。だけどありがとう。陽葵がそうやって私の事を考えてくれるのは凄く嬉しい」


以前に華乃子ちゃんにいろんなことを考えて行動するのは私のいい所でもあり悪い所でもあると言われたことがある。
それは自分でも分かっていて、考えすぎると途端に臆病になってしまいがちだ。


今もどうするべきか考えすぎてしまって行動が取れず無言となってしまった。
だけど私は華乃子ちゃんのように上手く話を聞き出すのは苦手で、言ってくれるのを待つことが多い。


「陽葵はそのままがいいよ。待っててくれるのって嬉しいから」

「ありがと華乃子ちゃん」


また少しだけ無言の時間が続くものの全く嫌ではなかった。
その間に頼んでいたパスタが私たちの元に運ばれてくる。


出来たてのパスタは湯気が出ており、すごく美味しそうだ。
私たちはそれぞれシェアするために取り皿にパスタを取り分ける。


もちろんそれをやってくれるのは華乃子ちゃんだ。
見た目のキリッとさも相まってお姉ちゃんのような一面もある華乃子ちゃんに私はいつも甘えている。


「食べよっか」

「うん。いただきます」


スプーンとフォークで器用にパスタを巻いて口に運ぶと、思わず笑みがこぼれてしまうくらい美味しい。
濃厚なウニクリームソースが麺に絡み、口の仲いっぱいに広がり堪能する。


「美味しすぎる~!」

「ふふふっ陽葵って本当に美味しそうに食べてくれるよね。見てて気持ちいい」


そういえば似たようなことを理玖くんにも言われた。
私の食べている姿を見るのが好きだと、そんなことを思い出し少しだけ頬に熱が集まる。


「あのさ陽葵。そんな重たい話じゃないんだけど、唯斗のことで話したくて」

「うん、どうしたの?」

「なんか最近唯斗の様子がおかしいというか⋯⋯」

「そう?今まで通りじゃない?」

「いや、違うのよ。最近も合コン行こうと思ったら行かないでって言われたの。それもなんかワンコみたいに」


そんな話を聞いてついに唯斗が分かりやすく行動を始めたんだと悟った。
今まではこの同期の仲を壊したくなくて目立った行動をしてこなかった唯斗の勇気が伺えて嬉しい。


それに華乃子ちゃんも気づいているということはいい方向に進むかもしれない。
私はただどちらの味方をする訳でもなく、2人を見守るつもりだ。


「なんかそんな顔で言われたら胸がぎゅーってなって、初めて合コン当日キャンセルしたんだよね⋯」

「ええ華乃子ちゃんが当日に⋯?!」

「しかもやけに最近唯斗がかっこよく見えるというか⋯元々かっこよかったけど、何も言わずに飲み物差し出してくれたり、たまに一緒に帰る時に車道側歩いてくれたり、今までもしてくれてたんだろうけど、目につき始めたらなんか唯斗の隣にいると落ち着かないというか」


華乃子ちゃんのこんなあたふたする姿を見るのは初めてかもしれない。
いつも私は助けられてばかりだしお姉ちゃんのように頼りになる姿を見ていたため、そんな可愛らしい一面を見られて笑みがこぼれる。


合コンにはよく行っているのにこういう純粋な好意にはあまり気づかない鈍感な部分も華乃子ちゃんの魅力の一つだ。
そのおかげと言っては変だが、唯斗は苦労しているだろう。


「唯斗はずっとそうしててくれたよ。華乃子ちゃんが元気ない時は何も言わず隣にいたし、合コン行く時も体調の心配してくれてた」

「そうだっけ⋯⋯当たり前のことすぎて気にしてなかったな」

「優しさって当たり前に受け取っちゃうことってあるよね。でもそれって当たり前じゃなくて、その人への愛情とか好意とかそういうのから優しさって生まれると思うんだ」

「うん⋯」

「私も華乃子ちゃんや唯斗が好きだから優しくしたいし心配もしたい。唯斗も同じかもしれないね」


唯斗の好きは私の好きと似ているようで別物だ。
それを私が気づかせるべきではないと思うが、2人の背中を押してあげられるような立場にはなりたい。


(もう少しで華乃子ちゃんもその正体に気づくんだろうな⋯)


「華乃子ちゃんの将来の夢を叶えてくれる人って意外と近くにいるかもよ」

「唯斗ってこと?」

「ん~それはどうだろ。華乃子ちゃんは唯斗のことどう思うの?」

「唯斗は当たり前にいた人だからそんなこと考えたことなくて⋯でも、最近隣にいると心臓がうるさくて落ち着かないのに、一緒にいると心地よくて⋯⋯」

「そんなふうに思える人って探してもなかなか出会えないと思うよ」


華乃子ちゃんの表情はまさに恋する女の子だった。
恋に気づき始めた瞬間のその表情はとても可愛くて、きっと唯斗が見たら顔を赤くさせるんだろうな、なんて考える。


「なんか前と立場が逆転してるね私たち」

「確かに。前は陽葵に私が伝える側だったもんね」

「今度は私がたくさん伝えるからね」


華乃子ちゃんと顔を見合ってお互いに笑い合う。
昼休憩のギリギリまで時間を使って私たちはお昼ご飯を食べた。


どこかスッキリとした表情の華乃子ちゃんを見て、私も少しだけ力になれたんだと自覚できる。
唯斗の頑張りも少しづつだが身を結んでいるのが確認できて、陰ながら応援し続けようと思う。


2人で会社に戻り仕事を再開させようと思うとスマートフォンに着信が入った。
ディスプレイを確認するとそれはお兄ちゃんからのようだ。


「もしもしお兄ちゃん。どうしたの?」

『悪い陽葵。今仕事か?』
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