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片時も離れたくないから(3)
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「陽葵ちゃんが火傷したらどうするの!俺がやるから」
「⋯⋯⋯」
「陽葵ちゃんは見てて!」
「ねぇ理玖くん?」
理玖くんが大事にしてくれているのはすごく伝わってくるが、いくらなんでも過保護すぎる。
このままじゃ何も出来ない彼女になりそうな気がして私は遂にちゃんと言おうと決意した。
家では普通にご飯を作っていたし、溺愛の方向が間違った方向に進んでいる気がする。
このまま好きにさせていると私は何もできないダメ彼女になる気がしてならない。
「過保護すぎます!料理くらい作るし、いくらなんでも甘やかしすぎだと思う!」
「ひ、陽葵ちゃん⋯」
「私だってできるの!だからやらせて!理玖くんは過保護から卒業して!」
「ご、ごめんね陽葵ちゃん。怒らないで」
「怒ってない!」
まるで子犬のように目をうるうるとさせ私を見つめる理玖くんは悔しいが可愛い。
私が悪いことをしているみたいな気がして少しだけ罪悪感を感じてしまう。
だけどこのままでは理玖くんの過保護が止まらないため、心を鬼にしてしっかりと伝えた。
理玖くんはシュンとしながら静かにフライパンをふるっている。
「理玖くんが私を好きでいてくれるのは嬉しいよ。でも心配しすぎです。もう大人だから私も一通りできるんだからね」
(なんで私がフォローしてるんだろ⋯)
「はい⋯気をつけます。あまりにも陽葵ちゃんが好きすぎて過保護にしすぎました」
「分かってくれればいいんです。さ、続き作ろ」
「うん」
理玖くんは機嫌が治ったのか私の唇に触れるだけのキスを落とすと、満面の笑みを浮かべて料理の準備を続けた。
1人暮らしが長いため理玖くんは手際よく料理を作っていく。
私も一緒に手伝いながらハンバーグとコーンスープ、そしてサラダを完成させた。
お皿に全てを盛り付けてローテブルに広げると、豪華な夕食の完成だ。
「理玖くんってほんとになんでもできるんだね」
「そう?」
「逆にできないことないんじゃないかって思うくらい完璧なんだけど⋯⋯」
「陽葵ちゃん相手だからなんでもしてあげたくなるだけ。陽葵ちゃんじゃなかったらやらないよ」
顔もかっこよくて仕事もできて料理もできる、愛が重いことだけが難点だがここまでのスパダリを私は知らない。
理玖くんは本当に私に甘いけど、それが愛だということを噛み締めた。
2人で向かい合って座り、いただきますと言って熱々の食事を頬張る。
ハンバーグは箸を入れるだけで肉汁が溢れ出てきて、まるでお店のような見た目に心が踊った。
「どう?」
「ん~めちゃくちゃ美味しい!理玖くん料理上手だね。昔からそう思ってたけど相変わらずだね」
「よかった。陽葵ちゃんが美味しそうに食べてくれるの見ると俺まで幸せになるから嬉しいな」
そう言って私が大きな口でハンバーグを頬張る姿を愛おしそうに見つめる理玖くん。
見られることにはもう慣れたため私自身も気にせず出来たてのご飯をどんどんいただく。
大学生の頃から理玖くんはよく私にご飯を作ってくれていた。
泊まる時は決まって作ってくれるため、それが楽しみでもあったんだ。
2人で話しながらゆっくりと夕飯を食べ進め、あっという間にお皿が空になった私たちはまあ2人揃って手を合わせる。
すると理玖くんが突然立ち上がり、クローゼットの中からひとつの紙袋を取り出した。
誰もが聞いたことのある有名なジュエリーショップの袋を理玖くんは笑顔で私に差し出す。
それを受け取ると理玖くんは私の隣に移動してきた。
「これは?」
「開けてみて」
言われるがまま中身を確認すると小さな黒いボックスが入っており、結ばれた赤いリボンを解いて箱を開けると中にはピアスが入っていた。
小さなフープピアスのようでシンプルなデザインは仕事でも着けられそうだ。
「このピアスどうしたの?」
「今まで着けてたピアスは学生の頃に買ったやつでしょ?俺たち大人になったし、気持ち新たにって意味も込めて俺から新しいのをプレゼントしたいんだ」
確かに私たちが今耳に着けているピアスは学生の頃に買ったお揃いのものだ。
未だにお互い持っていたため、復縁したタイミングから着けていたがまさか新しいものを準備してくれていたなんて。
「俺もお揃いの買っちゃった。だから陽葵ちゃんにもそれ着けて欲しい」
「ありがとう。でもいつも私ばっかしてもらっちゃって、申し訳ないな⋯⋯」
「俺がしたくてしてるの。なんならこれは牽制だし、独占欲みたいなもんだから」
そう言って理玖くんは私に手を伸ばすと優しく髪を耳にかけ、耳に着いているピアスを器用に外してくれた。
耳元に理玖くんの指先が触れる度に心臓が暴れてドキドキが止まらない。
私の手からボックスを受け取った理玖くんはそのままピアスを私の耳の穴に通してくれた。
高級感のあるプラチナで作成されたそのピアスは場所問わずこの先も長く着けられそうだ。
「俺とお揃いのピアスをしてくれてるだけで、陽葵ちゃんは俺の彼女って分かるし、俺だけの陽葵ちゃんだってアピールにもなる」
「うん」
「俺がいなくたってそのピアスを着けて見る度に俺の事思い出して欲しい」
私だけに向けられるその独占欲という感情からはどれだけ理玖くんが私を好きでいてくれるか痛いほど伝わってきた。
時に過保護すぎることもあるが、理玖くんの気持ちはしっかり伝わっている。
「見て。俺も着けてみた」
「お揃いだね。嬉しい」
「⋯⋯⋯」
「陽葵ちゃんは見てて!」
「ねぇ理玖くん?」
理玖くんが大事にしてくれているのはすごく伝わってくるが、いくらなんでも過保護すぎる。
このままじゃ何も出来ない彼女になりそうな気がして私は遂にちゃんと言おうと決意した。
家では普通にご飯を作っていたし、溺愛の方向が間違った方向に進んでいる気がする。
このまま好きにさせていると私は何もできないダメ彼女になる気がしてならない。
「過保護すぎます!料理くらい作るし、いくらなんでも甘やかしすぎだと思う!」
「ひ、陽葵ちゃん⋯」
「私だってできるの!だからやらせて!理玖くんは過保護から卒業して!」
「ご、ごめんね陽葵ちゃん。怒らないで」
「怒ってない!」
まるで子犬のように目をうるうるとさせ私を見つめる理玖くんは悔しいが可愛い。
私が悪いことをしているみたいな気がして少しだけ罪悪感を感じてしまう。
だけどこのままでは理玖くんの過保護が止まらないため、心を鬼にしてしっかりと伝えた。
理玖くんはシュンとしながら静かにフライパンをふるっている。
「理玖くんが私を好きでいてくれるのは嬉しいよ。でも心配しすぎです。もう大人だから私も一通りできるんだからね」
(なんで私がフォローしてるんだろ⋯)
「はい⋯気をつけます。あまりにも陽葵ちゃんが好きすぎて過保護にしすぎました」
「分かってくれればいいんです。さ、続き作ろ」
「うん」
理玖くんは機嫌が治ったのか私の唇に触れるだけのキスを落とすと、満面の笑みを浮かべて料理の準備を続けた。
1人暮らしが長いため理玖くんは手際よく料理を作っていく。
私も一緒に手伝いながらハンバーグとコーンスープ、そしてサラダを完成させた。
お皿に全てを盛り付けてローテブルに広げると、豪華な夕食の完成だ。
「理玖くんってほんとになんでもできるんだね」
「そう?」
「逆にできないことないんじゃないかって思うくらい完璧なんだけど⋯⋯」
「陽葵ちゃん相手だからなんでもしてあげたくなるだけ。陽葵ちゃんじゃなかったらやらないよ」
顔もかっこよくて仕事もできて料理もできる、愛が重いことだけが難点だがここまでのスパダリを私は知らない。
理玖くんは本当に私に甘いけど、それが愛だということを噛み締めた。
2人で向かい合って座り、いただきますと言って熱々の食事を頬張る。
ハンバーグは箸を入れるだけで肉汁が溢れ出てきて、まるでお店のような見た目に心が踊った。
「どう?」
「ん~めちゃくちゃ美味しい!理玖くん料理上手だね。昔からそう思ってたけど相変わらずだね」
「よかった。陽葵ちゃんが美味しそうに食べてくれるの見ると俺まで幸せになるから嬉しいな」
そう言って私が大きな口でハンバーグを頬張る姿を愛おしそうに見つめる理玖くん。
見られることにはもう慣れたため私自身も気にせず出来たてのご飯をどんどんいただく。
大学生の頃から理玖くんはよく私にご飯を作ってくれていた。
泊まる時は決まって作ってくれるため、それが楽しみでもあったんだ。
2人で話しながらゆっくりと夕飯を食べ進め、あっという間にお皿が空になった私たちはまあ2人揃って手を合わせる。
すると理玖くんが突然立ち上がり、クローゼットの中からひとつの紙袋を取り出した。
誰もが聞いたことのある有名なジュエリーショップの袋を理玖くんは笑顔で私に差し出す。
それを受け取ると理玖くんは私の隣に移動してきた。
「これは?」
「開けてみて」
言われるがまま中身を確認すると小さな黒いボックスが入っており、結ばれた赤いリボンを解いて箱を開けると中にはピアスが入っていた。
小さなフープピアスのようでシンプルなデザインは仕事でも着けられそうだ。
「このピアスどうしたの?」
「今まで着けてたピアスは学生の頃に買ったやつでしょ?俺たち大人になったし、気持ち新たにって意味も込めて俺から新しいのをプレゼントしたいんだ」
確かに私たちが今耳に着けているピアスは学生の頃に買ったお揃いのものだ。
未だにお互い持っていたため、復縁したタイミングから着けていたがまさか新しいものを準備してくれていたなんて。
「俺もお揃いの買っちゃった。だから陽葵ちゃんにもそれ着けて欲しい」
「ありがとう。でもいつも私ばっかしてもらっちゃって、申し訳ないな⋯⋯」
「俺がしたくてしてるの。なんならこれは牽制だし、独占欲みたいなもんだから」
そう言って理玖くんは私に手を伸ばすと優しく髪を耳にかけ、耳に着いているピアスを器用に外してくれた。
耳元に理玖くんの指先が触れる度に心臓が暴れてドキドキが止まらない。
私の手からボックスを受け取った理玖くんはそのままピアスを私の耳の穴に通してくれた。
高級感のあるプラチナで作成されたそのピアスは場所問わずこの先も長く着けられそうだ。
「俺とお揃いのピアスをしてくれてるだけで、陽葵ちゃんは俺の彼女って分かるし、俺だけの陽葵ちゃんだってアピールにもなる」
「うん」
「俺がいなくたってそのピアスを着けて見る度に俺の事思い出して欲しい」
私だけに向けられるその独占欲という感情からはどれだけ理玖くんが私を好きでいてくれるか痛いほど伝わってきた。
時に過保護すぎることもあるが、理玖くんの気持ちはしっかり伝わっている。
「見て。俺も着けてみた」
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