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片時も離れたくないから(4)
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私たちの耳元には同じサイズでデザインのフープピアスがキラッと輝く。
ユニセックスのためお揃いの物を着けていても全く違和感がない。
「で、このプレゼントとは別に話したいことがあって」
「うん。どうしたの?」
「あのさ、陽葵ちゃんが良ければなんだけど一緒に住まない?」
「え⋯⋯⋯」
「今隣の部屋に住んでこうやって行き来するのも楽しいけど、こんなに近くに住んでるなら一緒に住んでみてもいいのかなって思って」
確かに理玖くんの言うことは一理あると思う。
隣に住んでいる私たちは結果的に付き合うことになって、週末などは特に理玖くんの部屋に泊まっていた。
そのため家にいない時間も多い分、一緒に暮らすことはメリットになるかもしれない。
だけどこんなトントン拍子でいいのだろうか、とも一瞬考えてしまった。
「俺は前にご家族にも話したように陽葵ちゃんとの未来を真剣に考えてるよ。俺はずっと陽葵ちゃん一筋だったしこの先もそれが変わることは絶対ない」
「うん⋯⋯」
「それに家に帰っても陽葵ちゃんがいて四六時中一緒にいられるなんて幸せじゃない?俺は陽葵ちゃんと片時も離れたくないんだ」
「うん⋯」
「陽葵ちゃんの考えてる事は何となく分かるよ。復縁したばかりでこんなふうに進んでっていいのかな、とか考えてるんでしょ?」
まるで手に取るように私の心を見透かす理玖くんは不安を取り除くように私の手にそっと自分の手を重ねる。
じんわりと伝わってくるその熱がとても心地いい。
「これは俺のわがままかもしれない。陽葵ちゃんを手放してしまってからずっと後悔してた。俺は陽葵ちゃんがこんなにも好きなのに不安にさせて辛い思いさせて別れを選ばせてしまった。だから俺はもうそんな想いを陽葵ちゃんにさせたくないんだよ」
「⋯⋯」
「それにやっと陽葵ちゃんが俺の元に戻ってきてくれたんだ。何年も我慢してた分、もっと陽葵ちゃんと近くにいてたくさんの時間を過ごしたい。少し前から考えてて、公にできたこのタイミングなら余計にいいのかなって思ってね」
理玖くんの気持ちは痛いほど伝わってくる。
私だって当時、嫌いで別れたわけじゃない。
大好きだったからこそ、隣にいることが辛くなってしまっただけだ。
だけど、今は違う。
理玖くんの隣にずっといたいと思うし、理玖くんなら本当に言葉だけじゃなくて現実にしてくれる気がした。
1度は同棲や結婚を考えた相手に裏切られたため、慎重になっているのかもしれない。
(でも理玖くんとは関係ない事だ)
「⋯⋯理玖くんとずっと一緒にいられるなんてすごい幸せだろうなぁ」
「うん。絶対幸せだよ。寝ても醒めても隣にこんなに可愛い陽葵ちゃんがいるなんて世界で1番幸せかも」
「でも私寝相悪いかもよ?いびきとかかいちゃうかも。それに私休みの日はメイクせずにだらだらするの好きだよ?」
「俺が抱き締めて寝るから寝相悪くならないよ。いびきなんて可愛くて逆に聞きたいくらい。休みの日は一緒にパジャマのまんまダラダラしよう」
私の不安を全部肯定してくれて受け入れてくれる。
昔から理玖くんはそうだった。
どんな私でも受け入れてくれるところがすこく好きだったんだ。
それはずっと変わっていなくて今もこうしてだらしない私を受け入れてくれる。
「私もね理玖くんとずっと一緒にいたいよ。私の彼氏は理玖くんだって言いたい」
「むしろ言いふらしてよ。そしたら陽葵ちゃんの周りにも変な男寄ってこないだろうし」
「一緒に暮らしたい。離れずに、一緒に」
「うん。よかった俺のわがまま聞いてくれてありがとうね」
理玖くんは私の手の上に重ねていた指をそのまま手首まで動かして自分の方に引き寄せる。
自然と身体を理玖くんに預けるような形になった。
「嬉しいなぁ陽葵ちゃんと一緒に暮らせるなんて。でも俺、1個やだなって思うことがあって、陽葵ちゃん来月出張行くでしょ?近くに陽葵ちゃんがいないのが寂しい」
「1泊2日だよ?すぐ帰ってくるよ」
「俺がいない間も圭哉や横山くんとは一緒にいるなんてずるい」
そう言って理玖くんは私の肩に頭をグリグリと押し付けてくる。
そんな年上ならぬ行動にキュンと胸が高鳴り、可愛いなぁと愛おしさがこみあがってきた。
「帰ってきたら一緒に住むための準備しよ。買い物とか、家見に行ったりとか」
「うん。そうだね。陽葵ちゃんが帰ってくるまでに良さそうな物件探しておくね」
私たちはお互い顔を見合わせて静かに唇を重ね合わせた。
触れるだけのキスだと言うのにその行為で心は満たされ多幸感に溢れていく。
たくさんの愛を注いでくれる理玖くんとならきっと私は幸せになれる。
毎日一緒に過ごせるそんな未来を夢見て私は理玖くんに笑いかけた。
ユニセックスのためお揃いの物を着けていても全く違和感がない。
「で、このプレゼントとは別に話したいことがあって」
「うん。どうしたの?」
「あのさ、陽葵ちゃんが良ければなんだけど一緒に住まない?」
「え⋯⋯⋯」
「今隣の部屋に住んでこうやって行き来するのも楽しいけど、こんなに近くに住んでるなら一緒に住んでみてもいいのかなって思って」
確かに理玖くんの言うことは一理あると思う。
隣に住んでいる私たちは結果的に付き合うことになって、週末などは特に理玖くんの部屋に泊まっていた。
そのため家にいない時間も多い分、一緒に暮らすことはメリットになるかもしれない。
だけどこんなトントン拍子でいいのだろうか、とも一瞬考えてしまった。
「俺は前にご家族にも話したように陽葵ちゃんとの未来を真剣に考えてるよ。俺はずっと陽葵ちゃん一筋だったしこの先もそれが変わることは絶対ない」
「うん⋯⋯」
「それに家に帰っても陽葵ちゃんがいて四六時中一緒にいられるなんて幸せじゃない?俺は陽葵ちゃんと片時も離れたくないんだ」
「うん⋯」
「陽葵ちゃんの考えてる事は何となく分かるよ。復縁したばかりでこんなふうに進んでっていいのかな、とか考えてるんでしょ?」
まるで手に取るように私の心を見透かす理玖くんは不安を取り除くように私の手にそっと自分の手を重ねる。
じんわりと伝わってくるその熱がとても心地いい。
「これは俺のわがままかもしれない。陽葵ちゃんを手放してしまってからずっと後悔してた。俺は陽葵ちゃんがこんなにも好きなのに不安にさせて辛い思いさせて別れを選ばせてしまった。だから俺はもうそんな想いを陽葵ちゃんにさせたくないんだよ」
「⋯⋯」
「それにやっと陽葵ちゃんが俺の元に戻ってきてくれたんだ。何年も我慢してた分、もっと陽葵ちゃんと近くにいてたくさんの時間を過ごしたい。少し前から考えてて、公にできたこのタイミングなら余計にいいのかなって思ってね」
理玖くんの気持ちは痛いほど伝わってくる。
私だって当時、嫌いで別れたわけじゃない。
大好きだったからこそ、隣にいることが辛くなってしまっただけだ。
だけど、今は違う。
理玖くんの隣にずっといたいと思うし、理玖くんなら本当に言葉だけじゃなくて現実にしてくれる気がした。
1度は同棲や結婚を考えた相手に裏切られたため、慎重になっているのかもしれない。
(でも理玖くんとは関係ない事だ)
「⋯⋯理玖くんとずっと一緒にいられるなんてすごい幸せだろうなぁ」
「うん。絶対幸せだよ。寝ても醒めても隣にこんなに可愛い陽葵ちゃんがいるなんて世界で1番幸せかも」
「でも私寝相悪いかもよ?いびきとかかいちゃうかも。それに私休みの日はメイクせずにだらだらするの好きだよ?」
「俺が抱き締めて寝るから寝相悪くならないよ。いびきなんて可愛くて逆に聞きたいくらい。休みの日は一緒にパジャマのまんまダラダラしよう」
私の不安を全部肯定してくれて受け入れてくれる。
昔から理玖くんはそうだった。
どんな私でも受け入れてくれるところがすこく好きだったんだ。
それはずっと変わっていなくて今もこうしてだらしない私を受け入れてくれる。
「私もね理玖くんとずっと一緒にいたいよ。私の彼氏は理玖くんだって言いたい」
「むしろ言いふらしてよ。そしたら陽葵ちゃんの周りにも変な男寄ってこないだろうし」
「一緒に暮らしたい。離れずに、一緒に」
「うん。よかった俺のわがまま聞いてくれてありがとうね」
理玖くんは私の手の上に重ねていた指をそのまま手首まで動かして自分の方に引き寄せる。
自然と身体を理玖くんに預けるような形になった。
「嬉しいなぁ陽葵ちゃんと一緒に暮らせるなんて。でも俺、1個やだなって思うことがあって、陽葵ちゃん来月出張行くでしょ?近くに陽葵ちゃんがいないのが寂しい」
「1泊2日だよ?すぐ帰ってくるよ」
「俺がいない間も圭哉や横山くんとは一緒にいるなんてずるい」
そう言って理玖くんは私の肩に頭をグリグリと押し付けてくる。
そんな年上ならぬ行動にキュンと胸が高鳴り、可愛いなぁと愛おしさがこみあがってきた。
「帰ってきたら一緒に住むための準備しよ。買い物とか、家見に行ったりとか」
「うん。そうだね。陽葵ちゃんが帰ってくるまでに良さそうな物件探しておくね」
私たちはお互い顔を見合わせて静かに唇を重ね合わせた。
触れるだけのキスだと言うのにその行為で心は満たされ多幸感に溢れていく。
たくさんの愛を注いでくれる理玖くんとならきっと私は幸せになれる。
毎日一緒に過ごせるそんな未来を夢見て私は理玖くんに笑いかけた。
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