【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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秘密の同期会(3)

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取り皿には3種類のハンバーガーが置かれた。
こうして違うメニューを頼むことでいろんな味を楽しめるのは私たちなりのお出かけの楽しみ方だ。


大きな口でハンバーガーを頬張る華乃子ちゃんは心底美味しそうに食べてくれる。
サイズとしてはかなり大きいため、華乃子ちゃんの口元にはテリヤキソースが付いてしまっていた。


「華乃子ちゃん口元にソース付いてるよ」

「え、うそ!取って~陽葵」


紙ナフキンで口元を拭ってあげるとありがと、と嬉しそうに笑ってくれた。
その様子を羨ましそうに見つめる唯斗に見つめられ、少しだけいじわるをしたくなる。


「唯斗羨ましいんでしょ~」

「べ、別にそういう訳じゃ!」

「華乃子ちゃんと私は仲良しだからね~!」

「ま、いつもは立場逆だけど。お世話される側でしょ陽葵は」

「うっ⋯確かに。いつも華乃子ちゃんにお世話されてる⋯⋯」


普段はいつも私が華乃子ちゃんにしてもらうことが多い。
2人で出かけても取り皿に分けてくれたり、何も言わずに紙ナフキンを渡してくれたりと、まるでお姉ちゃんのように世話をしてくれる華乃子ちゃん。


どことなく私の周りにはお世話好きの人が集まるのかもしれない。
理玖くんは言わずもがなだが、華乃子ちゃんやなんだかんだ唯斗も面倒見はいいし、始まりはお兄ちゃんだ。


そう考えると私はずっと甘やかされてきたのかもしれないと思い、自立しないとなとも改めて思った。
そんな表情が顔に出ていたのか、唯斗にどうした?と心配される。


「ねぇ私って甘やかされすぎてない?」

「え、突然どうしたの?」

「今華乃子ちゃんに言われて思ったけど、私いつもしてもらう側だ!華乃子ちゃんもだし理玖くんもお兄ちゃんもいつもお世話してくれてる⋯」

「まぁそれが陽葵の可愛いところだからいいんじゃない?やってあげたくなるというか⋯」

「あー確かにな。なんか陽葵ってしっかりしてるのになんか助けてあげたくなるというか、してあげたくなる気持ちはすげー分かる」


なぜか妙に華乃子ちゃんと唯斗は話が合うようで確かに、と言い合ってうなづいている。
私はそんなに頼りない人間なのだろうか。


「確かに言われてみれば笠井さんも唯一陽葵には甘いもんね」

「部下に厳しいわけじゃないけど笠井さんは特別陽葵を可愛がってるよな。やっぱ目をかけたくなるんじゃね?」

「それって陽葵のいいとこだと思うよ。私たちも好きでやってるし」


華乃子ちゃんたちがそう言ってくれるとすごく安心する。
いろんな人に私は助けられ支えられているため私もそんなふうにみんなの助けになりたいと思った。


話に花を咲かせながらハンバーガーを食べ進めていくとあっという間にお皿は空になる。
サイドメニューとしてポテトも頼んでいたがあまりの美味しさに一瞬でなくなった。


「そういえば噂で聞いたけど、俺らとevolveが合同企画するってあれほんとなのか?」

「噂なんてあるんだ⋯⋯うん。なんかほんとみたい」

「かなり踏み切ったわよね。まさか合同企画するなんて」

「就活生の子向けにエンジニアやプログラマーに興味を持ってもらって少しでも人材を増やして育てていこうってことみたいだね」


私も笠井さんから直接話を聞いた。
以前に講演会に行った時話を聞いたが、本当に実現したようで選抜されたチーム同士で合同企画が開始するらしい。


エンジニアやプログラマーの職種説明や興味をもってもらうためのアプリ作成、プログラミング体験など就活生向けで行われるようだ。
実際私たちの会社とevolveはこういったIT企業の中では二大巨頭と言われているため、人は集まるだろうしIT業界を盛り上げる上ではとても意味のある企画になる。


「なんか講演会行ってから様子おかしいなとは思ってたけど、この企画と何か関係あるの?」

「⋯やっぱバレてる?」

「バレてるわよ。話せる内容なら私たちで良ければ聞くけど」

「⋯⋯⋯」


合同企画を行うこと自体はお互いのメリットになるため賛成だ。
だがあちらには確実に私を敵視している安井さんがいたり、横山くんを辞めさせようとするお父さんがいたりと不穏な空気を感じる。


横山くんのことは話せないにしろ、安井さんのことは話してみてもいいかもしれないと思い、私は2人に講演会であったことを話した。


「え、何それ。感じ悪すぎない?!何様なのよその女!」

「ちょ、華乃子落ち着いて。声大きいよ」

「いや、黙ってられなくない?!笠井さん来てくれたから良かったけど来なかったら陽葵がぶたれてたかもしれないんだよ!許せない」

「俺だって許せないけど!周りのお客さんに迷惑かかるからちょっと静かに⋯!」


まるで自分の事のように怒ってくれる2人の想いがすごく嬉しい。
唯斗に制止されなかったらきっと華乃子ちゃんはますますヒートアップしていただろう。


私自身も安井さんにいいイメージはない。
理玖くんの彼女である私に完全に隠すことなく曝け出された敵意は、もちろん気持ちいいものではなくて不快と感じるには十分だった。


「そもそも!振られてもなおずっと陽葵のことが好きだったのは四ノ宮さんの方で、なんなら溺愛してるのも四ノ宮さんの方なわけでしょ?」

「もちろん私だって理玖くんのこと好きだよ」

「相思相愛なわけよ2人は。それなのにその女が入る隙間なんてあるわけないじゃない。なのになんなのその自信は!必ず奪ってみせるとか、図々しいにも程があるわよ。そう思うでしょ?!唯斗も」

「そ、そうだな。完全に陽葵に対する嫉妬とか妬みの感情からそう言ってるんだろうな」


私自身、理玖くんに愛されている自覚はある。
相当私を好きでいてくれるのも伝わってくるため、理玖くんが安井さんに絆されてしまうなんてことはないと信じているが、なぜか形容できない不安がしこりのように引っかかっていた。


それは安井さんだけではなく、横山さんの存在も原因なのかもしれない。
この合同企画には何かが起こりそうな気がしてならなかった。


「でも陽葵。気をつけてよ」

「うん⋯?」

「その女、普通に手を出そうとしてくるくらいにはやばい女なんだから。女の嫉妬や執着は怖いわよ。時にはそれで人さえも傷つけてしまうことだってあるんだから」

「そうだぞ陽葵。四ノ宮さんは彼氏として頼るべき人物かもしれないけど、俺や華乃子は同期としていち友人として頼って欲しいし、笠井さんだって上司として頼っていいんだからな」

「うん。ありがとう2人とも」


なんて心強いんだろうか。
こんなにも近くに私の味方がいてくれることが何よりも心強かった。


「その女に会ったら牽制しないとね」

「だな。俺らの陽葵だぞってな」

「なんか⋯かっこいいな2人とも。頼りになる」

「いつでも頼って。私たちは何があっても陽葵の味方だから」


華乃子ちゃんと唯斗の言葉が染み渡りとても心が温かくなった。
不安が少しだけ軽くなったような気がしたのは、2人の優しさのおかげだ。


これから何かが起こるかもしれない前の心強い味方ができた。
同期だけの理玖くんにさえ話すことがない秘密の会は穏やかに過ぎていく。

波乱の合同企画開始まであと少し───。
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