【R18/TL】ハイスペックな元彼は私を捉えて離さない

春野カノン

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【特別編】華乃子と唯斗〜恋の始まり〜(2)

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あまりにも的確に図星をつかれて私は思わず苦笑いするしかなかった。
ドンピシャに当てられて、さすがとしか言いようがない。


むーっと頬を膨らませる陽葵を見ているとやっぱり可愛いなと思う。
私は陽葵のこういう所が好きだ。


「それは華乃子ちゃんも同じだからね~。私のことには鋭いのにさ」

「似たもの同士?かしら私たち」

「ふふふっそうかも!」


2人で笑いあって何度目か分からない乾杯をした。
陽葵はノンアルコールだが私はお酒が入っているため少しだけ気分がいい。


「ねえ、華乃子ちゃん。唯斗がもし華乃子ちゃん以外の女の子に距離近かったりしたらどう思う?」

「え、そうだなぁ⋯⋯」

「あの唯斗の人懐こい笑顔を華乃子ちゃん以外の女の子にも振りまいてたら⋯!」


もしそういう場面に出くわしたら私はどう思うのだろうか。
そんなことを考えてみると今まで何度もそういう場面を見たことがあるのに、なんとも言えない感情が心を覆いつくそうとしていた。


「陽葵相手だったらなんとも思わないけど、別の子だったら⋯⋯」

「別の子だったら?」

「嫌、かも⋯?」

「なんで疑問形なの!」

「そんなのなってみないと分かんない!」


気にして見ていなかったためあまり想像つかない。
陽葵は不満げに私を目を細めて私を見つめるとノンアルコールカクテルをグビっと飲んだ。


少しづつこの気持ちの正体に気づき始める。
いや、もう気づいているのかもしれない。


だけどそれを認めるのが怖くて、今の関係が崩れるのが嫌でどこかで一線引いていたのかもしれない。
それが陽葵にはバレていて今こうして詰められている。


「ま、ゆっくりいこうよ華乃子ちゃん」

「なんでそんな楽しそうなの」

「え~そりゃ楽しくもなるよ~」

「いつもと立場が逆転してるね」

「確かに。だけど私がいつだって華乃子ちゃんの味方だってのはいつも華乃子ちゃんが私に言ってくれてるのと同じ!私はいつでも味方だよ」


そう言って笑う陽葵は私を真っ直ぐ見つめて、視線を逸らすことなく言い切ってくれた。
その真剣さから陽葵がちゃんと考えてくれているのが伝わってきて嬉しく思う。


ただの同期としてではなく、1人の友人として私はこれからも陽葵の支えとなりたい。
そして私もまた陽葵を頼ることができる友人になりたいと思った。


そんなことを陽葵と話していた数日後。
私のなんともいえないその感情の正体を知ることになるのは意外とすぐだった。


それが私の恋の始まりだ───。


***


それからしばらく経ち毎日を何事もなく過ごしている中で、私と唯斗の関係は変わらなかった。
同期として仲良く話すし、陽葵と3人でご飯に行ったりもする。


だけど私の気持ちだけが少しだけ違った。
唯斗と一緒にいると穏やかな気持ちになりつつも、心臓が暴れる時もある。


私の名前を呼んでくれる度に心が踊り、その視線が向けられることに嬉しさや高揚感さえ感じていた。
この感情がなんなのか私は知ってる。


今日は唯斗が2人でご飯に行こうと誘ってくれた日だ。
陽葵も誘おうかと思ったみたいだが、用事があるとのことで断られたらしい。


定時に上がるためにパソコンに向き合っていると、視界の端に唯斗の姿が写った。
システムエンジニアの唯斗たちの仕事はクライアントや同僚とコミュニケーションを取って企画書を形にしていくものだ。


それを私たちプログラマーが構築し、実装していくことで1つの案件が完成する。
だからこそ、唯斗がいろんな人と話している姿をよく見るが、今彼に話しかけてる女性社員は少し前から距離が近いと思っていた人だ。


1ヶ月ほど前に中途入社してきた人らしいが、私たちより2歳ほど年下のきゅるるんとした可愛らしい女の子だった。
その年下らしさを全力で使って距離を詰めてくる姿は悪い気はしないだろう。


明らかに唯斗を狙っているのが分かる。
自然な流れでボディタッチされており、傍から見ればそんなのごく当たり前とも取れるくらい自然なため違和感に感じる人はあまりいないかもしれない。
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