揚げ物、お好きですか?リメイク版

ツ~

文字の大きさ
115 / 201
疾風の靴

疾風の靴6

しおりを挟む
 「スライムの養殖はまだ分からないけど、トードの養殖は上手くいくみたいだよ。」
 魔王様に養殖の事を聞きに行って、二日後。俺はまた一人でギルドへ来ていた。イリア達はまた王宮へ出掛けていた。
  「そう。それは良かったわ。」
 アリシアは今日もご機嫌のようだ。
 「これもアリシアのおかげだよ。ありがとうな。」
 「ううん。私がヤマト君にしてあげられる事は、これくらいしかないから……。イリア達みたいに、お店や冒険でヤマト君のお手伝いが出来る訳ではないし……役に立てたのならば、嬉しいわ。」
 「いや。何時もアドバイスをくれて助かっているよ。」
 「ほんと?」
 「ああ。」
 アリシアは少し照れたようにする。日頃はお姉さんぶるのに、今日はやけに素直なような気がする。
 「ヤマト君は、私がもっと君の役に立てるようになったら嬉しい?」
 ん?何を言っているんだ??
 「え?」
 俺が間抜けな反応をするとアリシアはまた似たような事を言った。
 「私がモンスターなんか狩れたら、ヤマト君は喜んでくれる??」
 アリシアが結局、何を言いたいか分からないけど……。
 「イリア達も居るしな……。アリシアにモンスターを狩ってもらっても……。」
 俺が言葉を続ける間もなく、アリシアはテーブルをドン!と勢い良く叩いて、無言で立ち上がり、ギルド事務所の奥へ早足で歩いて行った。
 「(イリア、イリア、イリア……って!なんなの!!ボクだって!!!)」
 そして、それっきり、戻って来なかった。
 何なんだ?いったい??人の話しも最後まで、ろくに聞かずに……。
 
 そして、その日の午後。
 俺達は昼食を食べた後、新しいダンジョン『双風の塔』にチャレンジをしていた。
 「これまでは下ってばかりだったけど、今回は初めて上るタイプのダンジョンだな。」
 「そうですね。たまには気分転換もいいでしょう?」
 俺の言葉にイリアはそう返す。
 「主様のステータスなら、もう一つの『リザラクトの洞窟』でも良かったんじゃないかい?あそこなら、いい経験値稼ぎも出来ただろ?」
 エリはこの塔が不服だったのか、イリアにそう言うがララが口を挟んだ。
 「……今日は出るのが遅かったから、少しでも近い方がいい。季節も冬だから、日が暮れるのも早いし……何より冷えて風邪を引く。それに、今日は……マスターが鍋という物を作ってくれる……。早く帰りたい……。」
 そう。昨日、頼んでいた土鍋と魔原石を使った卓上コンロが完成したのだ。それで、今日は帰ったら寄せ鍋を作るつもりだ。海老などの魚介類も大ニワトリもあるし。白菜なんかの野菜もこの世界にもあったので、切って用意してある。養殖の大ニワトリの骨を使って出汁も作っておいたし、後は鍋で煮るだけだ。まあ、寄せ鍋だな。
 贅沢な悩みなのかもしれないが、鰹節とか昆布とか干し椎茸なんかあるならいいんだけど……あと、味噌もか……あれば料理のバリエーションも増えるし……今度、海辺の町へ行ってみるのもいいかもしれない。いや、キノコは豊富にあるんだ。干し椎茸を探すか作った方がいいのだろうか?
 そんな事を考えていると、イリアが口を開く。
 「そういう事です。エリ。なので、今日のクエストはパパっと終わらせますよ。」
 ちなみに、今日、受けたクエストは『ビッグアイの眼球×2』である。
 「……早速、出てきた。早く……狩ろう。」
 ララはそんなに鍋が待ち遠しいのか、ビッグアイ目掛けて走っていく。
 「負けてらんないね。」
 エリは弓を引く。
 「それなら、私も!!」
 イリアは魔力を一点に集中させ、魔法を唱える。
 なんだ?俺の出番はない??
 そう思いつつ、俺は『石ツブテ』を唱え、『必中』の重ねがけで応戦した。
 
 いや~。早かった。塔の二階だけで事は済んだし。ちなみに双風の塔は十階建てだ。
 「このビッグアイって食えないのか?」
 俺の質問にイリアは少し驚きながら答える。
 「ヤマト様。この、ほぼ目玉だけのモンスターのどこを食べると言うのですか?」
 ビッグアイは大きな目玉に小さな身体がついただけの代物だった。攻撃方法は、目から光線を放つと言う、かっこいい攻撃だが、当たらなけばどうという事はない。
 「魚の目の辺りはコラーゲンたっぷりで美味しいだろう?」
 「確かにマグロの目の辺りは美味しゅうございましたわ。主様。」
 エリはこの前食べた、マグロのかぶと焼きを思い出しているのだろう。
 「だろ?美味かっただろ??あれを捨ててたんだぜ?もったいないだろ?」
 そう。この世界では、マグロは捨てられていた。理由は簡単、魚のくせに身が血を思わせる赤だからだった。ちなみに鮭やトラウトサーモンなども食べられていなかった。鮭って赤身だけど分類は白身なんだよな。餌の影響であんな色になってる。鮭やマグロもいずれ俺の店で出す予定だ。
 ちなみに、マグロは魔王様から頂いた。
 「うふふ。そうでございますね。主様。主様は博識であらせられますから、わたくし、何時も感銘を……あら?何やらギルド内が騒がしいですわね?」
 エリの言うとおり、ギルド内は少し騒がしかった。
 俺は、近くを走っているギルド職員の男性に話し掛けた。
 「何かあったんですか?騒がしい様子ですが??」
 「こ、これは!ヤマト様!!ア、アリシアを見かけませんでしたか??」
 ん?アリシアがどうかしたのだろうか??
 「アリシアがどうかしたのですか?」
 「アリシアが朝、黙ってギルド出たきり、戻って来ないのです!」
 え?!何だって??アリシアがどこかに出たきり戻ってこない?!
しおりを挟む
感想 293

あなたにおすすめの小説

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】

のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。 そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。 幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、 “とっておき”のチートで人生を再起動。 剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。 そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。 これは、理想を形にするために動き出した少年の、 少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。 【なろう掲載】

処理中です...