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スプリンティア
スプリンティア7
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ちっ。やはり、俺の石ツブテがほとんど効いていない。
投げる石ツブテは、メズに当たると直ぐに砕け散ってしまう。
予想はしていたけれど……イレギュラークラスになると防御力の桁が違うな。弱いモンスターには絶対的効果があるけど、強敵には牽制程度にしか使えない。石ツブテを強化出来るスキルとかあれば……いやいや、今はそんな事を考えている時ではないなっ!
俺は砕けたら直ぐに、石ツブテを連発する。まずは、キールが自分にエンチャント魔法をかける時間を稼げばいい。そう。それでいいんだ。
アリシアはエンチャント魔法が不得意なレニンにもかけてあげているし。それまでは。
「待たせたな!ヤマトさん!!『ターゲット』!!」
キールはそう言い、メズに駆け寄り、スキルを発動させる。
さっきまで、俺を追っていたメズは、ターゲットをキールに変えたようだ。
……こんな便利なスキルもあるんだ。
「凄いでしょ?キール君のスキルも。細身のエルフとしてはかなり珍しい盾職も出来る重戦士だからね。あんなスキルもあるの。」
そう言い、アリシアは俺に回復魔法をかけてくれた。
そして、俺の目の前では、キールがメズの攻撃を受け止める。
その衝撃は思った通り、強くはない。
「ヤマトさん。これなら、いける!!」
キールは顔だけをこちらに向け、手応えがあったのだろう。そう俺に伝えた。
それなら、スキルが効いている間はキールだけに攻撃を受け続けてもらってもいいのだろうか?耐えれそうだし……。そうなれば、アリシアの牽制も要らない。それより、強い攻撃魔法を放ってもらった方に切り替えてこの場を乗り切った方がいいかも……。
「アリシア。すまんが、牽制じゃなく、最大魔法でメズを攻撃してくれ。」
前回の事を考えると、一筋縄ではいかないだろうけど、倒すか……それなりのダメージを与えて、しばらく動けなくする……逃げる時間くらいは稼がないと。それも、出来れば早く。体力にマインドが無くならないうちに、ポーションやマインドポーションには数があるし。長期戦は出来ない。
「分かった。やってみるよ!」
アリシアはそう言い、呪文の詠唱を始める。
それとほぼ同時に、クエンカさん達の攻撃が始まった。
よし!タイミング的には、バッチリだ!!
俺も麗月を鞘から抜き、メズに攻撃を仕掛けた。
キールのスキルのおかげだろう。キールに攻撃する事に集中し過ぎて、メズは俺達への攻撃が羽虫を払う程度に雑になっていた。そして、悲鳴と共に次々と傷を負っていく。
何て有能なスキルなんだ。でも、この攻撃をしのぎ続ける程の筋力や体力をつけていないと出来ない事だろう。キールも、かなりの努力をしているのだ。俺は素直に感心した。
そして、ついにメズが片膝を地面に落とした。
よし!今がチャンス!!
「『鬼神・三枚おろし』!!」
俺は、ラックスターから受け継いだスキルを使い、斬り捨て。そして。
「今だ!アリシア!レニン!!」
俺の叫び声に二人が応え、メズの周りから、みんな避難する。
「『フレイムバースト』!!」
レニンは叫び。
「『ヘルファイヤートルネード!!!』」
アリシアの魔法には、効いてくれ!と願いがこもっているようだった。
二人の周りには、俺にも分かるくらいの緊張感が漂う。それは、レニンとアリシアがありったけの魔力を込めたという証拠なのだろう。今までに見た事のないほどの、大きく複数に重なった魔法陣が展開され、赤い炎の爆発と黒い炎の渦がメズを襲う。
「よし!やったぜ!!」
「ああ!これなら、完璧に倒しただろう!!」
キールやナプタは、勝利を確信したように興奮する。それは、俺とアリシアを除いては、同じ考えだったようで、クエンカさん達も安堵した表情を浮かべていた。
これで倒れてくれたら……。
メズを覆う赤と黒の炎が晴れた時、魔石になってくれたら……。これ以上ないだろう。しかし。
「アリシア、レニンはマインドポーションを飲んで、サレンサさんは、キールに回復魔法を。その後にサレンサさんもマインドポーションを。その他はポーションで回復しておいてくれ。」
俺はみんなにそう伝える。
そう。油断は出来ないのだ。『魔法が効かない』という前例もあれば、『再生能力』があるモンスターだって居るのだから。
今、隙を付いて逃げる。という事が可能なら、それが一番だろう。
しかし、魔法が効いていなく、今、炎を纏った状態で襲われたら俺達はひとたまりもない。あの炎の巻き添いをくい、体は焼かれてしまうからだ。しかも、このルームを抜けるには、メズの後ろにある一本道の出入り口から出ないといけない。だから、迂闊には動けないし、見届けなくてはならない。炎が収まり、傷を負い、身動きが取れない状態なら、その時は一気に走り抜ける。『攻撃を続けて倒す。』という選択肢があるのかもしれないが、さっきの攻撃が今、俺達に出来る最大限の攻撃だろう。それをもう一度、お見舞いするという事も出来るだろう。しかし、『耐性を得た』そんな事が起こるかもしれない。そんなデタラメな存在なのだ、イリア達の話を聞く限り、神々の気まぐれとかイレギュラーなんかは。だから、俺は『逃げる』を選択する。イリア達が近くに居ない今。俺に出来る事なんて多くはないのだ。『勇者』でも『英雄』でもない、ただの『冒険者』である俺には……。
正直、本当の事を言うと、全員、回復魔法で回復してポーションなどを取っておきたいのが本音だ。でも、炎が晴れるまで、そんなに時間も掛からないだろうし、魔法を使って回復している時間はないはずだ。一番疲弊している、キールを回復魔法で十分に回復させる必要もある。
普通のポーションでは、キールの回復は足りない。回復力の高いハイポーションはあるが、体力を全回復させられるフルポーション、体力とマインドをいっぺんに全回復させるエリクサーなんかの高級品も持ってきてはいない。こんな事が起こる事がある。それを知っていたはずなのに……。
そんな事を考えていると、メズを覆った炎は鎮火へと向かう。
「みんな。動ける準備はしておいてくれ。」
俺は何時でも走れるように、その心掛けをしておくように伝える。
「なーに。大丈夫だぜ。ヤマトさんよ。あんな炎に焼かれたんだ。倒せないはずがないぜ。」
「うむ。そうなのである。我の最大魔法をまともに食らったのであるから、無事なはずがないのである。」
「そうそう。心配しすぎですよ。ヤマトさん。」
キール、レニン、ナプタは、倒せた。と確信したように振る舞い。
「そ、そうよね。アリシアさんの魔法だってあの威力だったのだし、二つの強力な魔法がまともに当たっているのだから……ねえ?大丈夫よね?アナタ??」
「ああ……大丈夫さ。サレンサ。」
クエンカ夫妻は、大丈夫だと信じるように言う。
本当にこれで終わってくれたら。俺もそう思う。けど、これはイレギュラーなんだ。簡単には終わってくれない。それが分かっているアリシアは何時でも走れるように身構えている。
みんなに注意する間もなく、炎は完全に消えた。
メズは片膝と両手を地面に着いている。
体の色は、黒かろ赤へと変わっている。
微動だにしないが、魔石には変わらない。
端的に分かる事だけが、頭の中を瞬時に駆け巡る。そして、導き出された答えは、一つ。
……メズは生きている。
今はまだ、ダメージが回復していないのか……。それなら、今しかない!
「全員、メズの後ろの通路へ逃げるぞ!!」
俺は全員にそう告げる。
油断していたキール達はもちろん出遅れ、クエンカ夫妻も遅れた。アリシアはいち早く反応したおかげで、かなり出入り口に近付き、俺は他のメンバーを気にし、最後尾にいた。
アリシアがメズの横を通り過ぎようとした時、突然。
「ブヒヒヒヒーーーーーーン!!!!!」
メズは怒りが頂点に達したと言わんばかりに、首を激しく振りながら、絶叫する。その声は、振動し俺達に襲いかかる。そして、金縛りにあったように、俺以外が動けなくなった。
一番、遠くにいたおかげだろうか?そんな事を考えている暇はなかった。
メズは右手で金棒を拾い、一番近くのアリシアを薙ぎ払おうとする。
ヤバい!!
俺は『速く!!!』と、ありったけの思いを疾風の靴に託し、地面を蹴った。
投げる石ツブテは、メズに当たると直ぐに砕け散ってしまう。
予想はしていたけれど……イレギュラークラスになると防御力の桁が違うな。弱いモンスターには絶対的効果があるけど、強敵には牽制程度にしか使えない。石ツブテを強化出来るスキルとかあれば……いやいや、今はそんな事を考えている時ではないなっ!
俺は砕けたら直ぐに、石ツブテを連発する。まずは、キールが自分にエンチャント魔法をかける時間を稼げばいい。そう。それでいいんだ。
アリシアはエンチャント魔法が不得意なレニンにもかけてあげているし。それまでは。
「待たせたな!ヤマトさん!!『ターゲット』!!」
キールはそう言い、メズに駆け寄り、スキルを発動させる。
さっきまで、俺を追っていたメズは、ターゲットをキールに変えたようだ。
……こんな便利なスキルもあるんだ。
「凄いでしょ?キール君のスキルも。細身のエルフとしてはかなり珍しい盾職も出来る重戦士だからね。あんなスキルもあるの。」
そう言い、アリシアは俺に回復魔法をかけてくれた。
そして、俺の目の前では、キールがメズの攻撃を受け止める。
その衝撃は思った通り、強くはない。
「ヤマトさん。これなら、いける!!」
キールは顔だけをこちらに向け、手応えがあったのだろう。そう俺に伝えた。
それなら、スキルが効いている間はキールだけに攻撃を受け続けてもらってもいいのだろうか?耐えれそうだし……。そうなれば、アリシアの牽制も要らない。それより、強い攻撃魔法を放ってもらった方に切り替えてこの場を乗り切った方がいいかも……。
「アリシア。すまんが、牽制じゃなく、最大魔法でメズを攻撃してくれ。」
前回の事を考えると、一筋縄ではいかないだろうけど、倒すか……それなりのダメージを与えて、しばらく動けなくする……逃げる時間くらいは稼がないと。それも、出来れば早く。体力にマインドが無くならないうちに、ポーションやマインドポーションには数があるし。長期戦は出来ない。
「分かった。やってみるよ!」
アリシアはそう言い、呪文の詠唱を始める。
それとほぼ同時に、クエンカさん達の攻撃が始まった。
よし!タイミング的には、バッチリだ!!
俺も麗月を鞘から抜き、メズに攻撃を仕掛けた。
キールのスキルのおかげだろう。キールに攻撃する事に集中し過ぎて、メズは俺達への攻撃が羽虫を払う程度に雑になっていた。そして、悲鳴と共に次々と傷を負っていく。
何て有能なスキルなんだ。でも、この攻撃をしのぎ続ける程の筋力や体力をつけていないと出来ない事だろう。キールも、かなりの努力をしているのだ。俺は素直に感心した。
そして、ついにメズが片膝を地面に落とした。
よし!今がチャンス!!
「『鬼神・三枚おろし』!!」
俺は、ラックスターから受け継いだスキルを使い、斬り捨て。そして。
「今だ!アリシア!レニン!!」
俺の叫び声に二人が応え、メズの周りから、みんな避難する。
「『フレイムバースト』!!」
レニンは叫び。
「『ヘルファイヤートルネード!!!』」
アリシアの魔法には、効いてくれ!と願いがこもっているようだった。
二人の周りには、俺にも分かるくらいの緊張感が漂う。それは、レニンとアリシアがありったけの魔力を込めたという証拠なのだろう。今までに見た事のないほどの、大きく複数に重なった魔法陣が展開され、赤い炎の爆発と黒い炎の渦がメズを襲う。
「よし!やったぜ!!」
「ああ!これなら、完璧に倒しただろう!!」
キールやナプタは、勝利を確信したように興奮する。それは、俺とアリシアを除いては、同じ考えだったようで、クエンカさん達も安堵した表情を浮かべていた。
これで倒れてくれたら……。
メズを覆う赤と黒の炎が晴れた時、魔石になってくれたら……。これ以上ないだろう。しかし。
「アリシア、レニンはマインドポーションを飲んで、サレンサさんは、キールに回復魔法を。その後にサレンサさんもマインドポーションを。その他はポーションで回復しておいてくれ。」
俺はみんなにそう伝える。
そう。油断は出来ないのだ。『魔法が効かない』という前例もあれば、『再生能力』があるモンスターだって居るのだから。
今、隙を付いて逃げる。という事が可能なら、それが一番だろう。
しかし、魔法が効いていなく、今、炎を纏った状態で襲われたら俺達はひとたまりもない。あの炎の巻き添いをくい、体は焼かれてしまうからだ。しかも、このルームを抜けるには、メズの後ろにある一本道の出入り口から出ないといけない。だから、迂闊には動けないし、見届けなくてはならない。炎が収まり、傷を負い、身動きが取れない状態なら、その時は一気に走り抜ける。『攻撃を続けて倒す。』という選択肢があるのかもしれないが、さっきの攻撃が今、俺達に出来る最大限の攻撃だろう。それをもう一度、お見舞いするという事も出来るだろう。しかし、『耐性を得た』そんな事が起こるかもしれない。そんなデタラメな存在なのだ、イリア達の話を聞く限り、神々の気まぐれとかイレギュラーなんかは。だから、俺は『逃げる』を選択する。イリア達が近くに居ない今。俺に出来る事なんて多くはないのだ。『勇者』でも『英雄』でもない、ただの『冒険者』である俺には……。
正直、本当の事を言うと、全員、回復魔法で回復してポーションなどを取っておきたいのが本音だ。でも、炎が晴れるまで、そんなに時間も掛からないだろうし、魔法を使って回復している時間はないはずだ。一番疲弊している、キールを回復魔法で十分に回復させる必要もある。
普通のポーションでは、キールの回復は足りない。回復力の高いハイポーションはあるが、体力を全回復させられるフルポーション、体力とマインドをいっぺんに全回復させるエリクサーなんかの高級品も持ってきてはいない。こんな事が起こる事がある。それを知っていたはずなのに……。
そんな事を考えていると、メズを覆った炎は鎮火へと向かう。
「みんな。動ける準備はしておいてくれ。」
俺は何時でも走れるように、その心掛けをしておくように伝える。
「なーに。大丈夫だぜ。ヤマトさんよ。あんな炎に焼かれたんだ。倒せないはずがないぜ。」
「うむ。そうなのである。我の最大魔法をまともに食らったのであるから、無事なはずがないのである。」
「そうそう。心配しすぎですよ。ヤマトさん。」
キール、レニン、ナプタは、倒せた。と確信したように振る舞い。
「そ、そうよね。アリシアさんの魔法だってあの威力だったのだし、二つの強力な魔法がまともに当たっているのだから……ねえ?大丈夫よね?アナタ??」
「ああ……大丈夫さ。サレンサ。」
クエンカ夫妻は、大丈夫だと信じるように言う。
本当にこれで終わってくれたら。俺もそう思う。けど、これはイレギュラーなんだ。簡単には終わってくれない。それが分かっているアリシアは何時でも走れるように身構えている。
みんなに注意する間もなく、炎は完全に消えた。
メズは片膝と両手を地面に着いている。
体の色は、黒かろ赤へと変わっている。
微動だにしないが、魔石には変わらない。
端的に分かる事だけが、頭の中を瞬時に駆け巡る。そして、導き出された答えは、一つ。
……メズは生きている。
今はまだ、ダメージが回復していないのか……。それなら、今しかない!
「全員、メズの後ろの通路へ逃げるぞ!!」
俺は全員にそう告げる。
油断していたキール達はもちろん出遅れ、クエンカ夫妻も遅れた。アリシアはいち早く反応したおかげで、かなり出入り口に近付き、俺は他のメンバーを気にし、最後尾にいた。
アリシアがメズの横を通り過ぎようとした時、突然。
「ブヒヒヒヒーーーーーーン!!!!!」
メズは怒りが頂点に達したと言わんばかりに、首を激しく振りながら、絶叫する。その声は、振動し俺達に襲いかかる。そして、金縛りにあったように、俺以外が動けなくなった。
一番、遠くにいたおかげだろうか?そんな事を考えている暇はなかった。
メズは右手で金棒を拾い、一番近くのアリシアを薙ぎ払おうとする。
ヤバい!!
俺は『速く!!!』と、ありったけの思いを疾風の靴に託し、地面を蹴った。
応援ありがとうございます!
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