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第三章︙聖国、地下帝国編
聖剣の契約者 レオンSIDE
しおりを挟む「悪魔は私たち精霊と同じ魔力で構成された生物であり、本質的な存在で言えば実体はなく、どんな姿になることも理論上は可能よ」
「だから精霊と悪魔の最大の強みは魔力であり、同時に最大の弱点でもあるの。正直精霊も悪魔も魔力で勝てない相手に立ち向かったら絶対負ける」
しろまりも襲来後、アクア様が俺達に説明してくれた知識には確かに魔力が最大の弱点だと聞いた。
だからこそ我らがダイキは悪魔相手に無双することができたわけで、普通に考えてみれば凄腕の剣士や格闘家では、というかダイキほどの魔力の持ち主でなければ瞬殺されてしまうだろう。
経験、技、能力。
その全てを賭けてより高い数値の方に勝敗の天秤は傾くものだけれど、ダイキは能力の面において圧倒的な力を誇ることが出来ていた。
それこそ経験や技を嘲笑うかのように、能力だけでその全てを吹き飛ばしていったのだ。
今の俺に必要なのは、まさにその力。
経験や技だって悪魔達の領域に達していない。
単純に生きた年月の違いと、場数があまりにも少ないから。
だからこそ、全てを吹き飛ばす能力がなければこの戦いを打ち勝つことはできないだろう。
『それで我にさっきの技をもう一回出せと?』
「そう。迷宮を真っ二つにできる力なんだから、悪魔たちの戦力を大きく削ることができる………何発か上手く放てば大方殲滅できそうだし」
俺の言葉に、グラディウスは呆れたように溜息をついた。
『言っただろう?先程のは初回だけの特典。契約が成立した奇跡の報酬なのだ。神々はお気楽者が多くて、こういう粋な設定を作っていたから偶々できたわけで、そう乱発するもんでもないしできるわけ無かろう』
「………チッ」
『おいゴラ。今舌打ちしただろ?ああ?』
動揺のあまりついダイキのような反応をしてしまった。反省反省。
まあ薄々分かってた。
確かにあんなのバンバンできたら世界の均衡が崩れかねない。
悪魔が悪と神に設定されていたように、精霊王や悪魔によって絶妙に世界の均衡が保たれている………と精霊王様が言っていたことと照らし合わせると、こんな強力すぎる聖剣なんて神々が創るとは思えない。
何かしら制限はあるだろうとは思ってはいた。
因みにダイキは異世界人だからこの枠には当てはまらない。強すぎる。
「だとしたらこの軍勢を突破する方法なんてありませんよね?こればかりはフレイ様に託すしかないので……」
悪魔なんて神話の生物いくら俺でも相手にしようだなんて思わない。
そもそも勝てる未来すら見えないのに、どう動けばいいのか分からない。
『………本当にそれでよいのか?』
「………まあ、そうするしかないよね」
今の俺の強さなんて、人類の物差しでしか測れない。
だからこそ、人類を超越する生き物に打ち勝つことはできない。
こればかりは生まれた時の生物の壁。
神話時代から存在し、ほぼ永久の命を持つ悪魔に、ハイエルフなんて勝ち目はない。
『そう言っている割に、お主の顔は物凄く悔しそうだが。己の身の丈を測るな。我の契約者だろう、こんな雑魚共蹴散らすがいいわ』
俺の顔を見て………呆れたように腕を組んだグラディウスに、俺はハッとして両手を頬に当てた。
『そもそもの話、我は剣。道具なのであるよ。つまり、我の強さは使い手に依存している』
グラディウスの説明に、俺は首を傾げた。
こんな当たり前の事言われても、何が今更としか思わないけれど、どうやらグラディウスは別のことを言っているような気がする。
『我の力は、使い手の技量、そして魔力や聖力といった潜在力によって変わる。その点、お主は我の前の契約者………あやつの子孫であるからな。しかも稀に見ぬほどの先祖返りと来た』
「でも、潜在力って言っても、それは魔力とか………俺には無いもので……」
俺の言葉に、今度はグラディウスが首を傾げた。
『お主、エネルギーなら大量にあるではないか。その魔力とも聖力とは似ても似つかぬ、古代から存在する何の力も持たないエネルギーが』
………へ?
『まさかとは思うが、不思議に思わなかったか?お主のその超人的な体力が元々肉体に備わっていたなんて馬鹿なことを今まで考えておったのか?』
えーっと、は?
ちょっと今の状況を飲み込めない俺を他所に、グラディウスはペラペラと俺の体質について話し始めた。
『なんというか、お主の体内にあるエネルギーは、まさしく「無」である。何の力も持たない只の源。何に使うわけでもなく、何の特徴もない……いわば透明な力とでも思っていればいい』
「ダイキが扱う魔素とは違うのか……?」
『…………お主の仲間、魔素を扱うのか。ちょっと言っていることが信じられないが、魔素のような強力な原始の力ではない。只の力の塊であるよ』
そんなものが大量にあるなんて感じたことも聞いたこともなかったんだけど、どういうことだろうか。
でも、確かに俺は魔力が極端に少なかったけれど、今まで一度も枯渇状態になったことがない。
魔法を使わずとも、身体を酷使し続けると自然と魔力が漏れ出し枯渇状態になる場合もあるのに、俺には一度もそんな症状はなかった。
それに、俺は他の剣士と違い魔力で身体強化なしで渡り合ってる。
こればかりはハイエルフだからなのかと無理やり納得させていた節があったから、確かに別の力が働いていたのなら納得だ。
「その力は何の特徴も持たないんだよな?じゃあどうやって使うんだ?無意識的に使ってたとか?」
『その力はお主の身体の一部として存在しているようだぞ?恐らくこの大量の力を消費するために無意識的に体全体に広げていたのだろう』
………つまり無意識的に使っていたってことだ。
『飽和状態を防ぐためだと考えられるが、そのせいでお主の身体の成長速度が少し低下しておるの。………でもまあ、これくらい溜め込んでおるのなら何とかなるやもだな』
古代の力、それも高密度で大量なら使い放題………そう言ったグラディウスがニヤリと笑った。
『我の初代契約者であるアーサーより保有量が多いとは。しかも無理矢理か知らないが身体と完全に一体化しておる』
グラディウスはまた剣状態になると、俺の目の前まで来る。
もう何をやるのか理解した俺は、力強く柄を握りしめた。
『いいか。今からお主が何年も溜め込んだ無垢の力を一気に放出する。身体にどんな影響が出るかわからないが、愚かにも我の前に蔓延る厄災を蹴散らすには丁度いい』
「ああ。………え?」
『行くぞ』
………え、嘘だろ!?
「ちょっと待て!止まれよ!」
『もう遅いわ!こんな塵共、このまま根絶やしにしてやろうではないか!!』
突然の驚いて叫び声を上げる俺は、興奮で口数が減らないグラディウスに連れられ悪魔の群れに突っ込んで行った。
この日、地下帝国史上最も激しい戦いを打ち砕いたのは、年幼いハイエルフと一人の剣の妖精だと後世に語り継がれることになる。
「それで、英雄の子孫であるレオナルドは聖剣の契約者として戦いを制し、今もなお精進していったのでした……と。ねえ、聞いてる?」
「うん?……あぁ、はい。ちょっと今世界一意味のわからない手紙を読んでるので後回しにしてくれません?」
地下帝国が盛んに復興されていく中、頭に包帯を巻いた俺はとある一通の手紙を顔を険しくさせながら読む。
相変わらずあの見た目も性格からは到底考えられないような達筆な字で書かれたそれ。
この異世界人は常識がズレてるのか価値観がズレてるのか知らないけど……多分どっちもズレてると思うけど。
とにかく、俺は手紙の最後の部分を何回も読み返していた。
本当に何回読んでも意味がわからない。
「ちょっとそれ気になるじゃないの。なんて書いてあるのよ」
「………これです」
俺は素直にフレイ様に手紙を渡すと、目を瞑ってなるべく現実逃避できる思考回路に切り替えた。
しかしここで空気の読めないフレイ様は口に出してしっかり読み上げてきやがった。
「拝啓レオン様へ
俺の剣と動きが極限まで鋭くなったこの頃、元気にしてますか?
俺はついさっき魔法都市に戻りました。クロスもです。レイナさんがいるから聖国は大丈夫です。
レオンのいる国がヤバいらしいので、取り敢えず精霊さん達を送っときました。でもあっちにアクア並に強い精霊さんがいるらしいので、大丈夫だと思います
俺は最近、父親が剣聖だと知って、剣の練習始めました。
なんかとても才能があります。自画自賛じゃないです。クロスも言ってました。アクアは口の端を痙攣させるほど俺の剣技に見入ってました。
元気でお過ごしください。
追記 俺、王様になるかも」
「やめて………嫌だ。帰りたくない。もうあと百年は魔法都市に行きたくない……」
面倒事の匂いと、混乱と喧騒、そして意味のわからない事態の香りがもう漂ってくる。
王様ってなに?剣ってなに?
俺自身、聖剣の契約者で大分規格外だけれど、あいつはそれ以上に進化しているらしい。変な方向に。
その時俺は知っていれば良かった。
逃げずにダイキの手紙に真摯に対応すればよかったということに、後々死ぬほど後悔してくる事を俺はまだ知らない。
----------------
いつも読んでくださりありがとうございます!
ここでレオナルド編は一旦終わりになります。
といってもダイキ視点に戻るわけですが……
次からは遂に最終章突入始まってきます。
最終章といっても多分一番長いので気長に見守ってくださると幸いです。
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