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第四章︙終焉の再来
戦皇2
しおりを挟むガイアス・ベルナードSIDE
今年は、魔物の出現率が異常に高い。
突如数ヶ月前から一週間程前まで、物凄い数の魔物が世界各地で発生したと連絡があった。
まるでダンジョンブレイクが起こったと言わんばかりの現象が、世界各国で同時に発生したのだ。
特に暗黒大陸に一番近い国、北の果てのベルナード皇国は、一番その影響を受けた。
魔力密度の高い魔物と、私の所に所属している騎士に匹敵する魔族の大群。
当然の如く、ベルナード皇国は数ヶ月にして窮地に陥った。
魔物はともかく、知能の高い魔族を食い止めることに大きく苦戦した。
ベルナード皇国は魔物に対しての戦闘力は、地下帝国や魔法都市を抜く世界一だと自負できる。
故に怪物特化の国には、対人戦というものが全く身についていなかったのだ。
特に悪魔が襲来してきたときは、大きな痛手を被り多くの騎士達を失った。
そんな時だった。
急に魔族達がベルナード皇国から撤退し始めたのは。
今度は魔族、魔物共々全く姿を見せなくなり、暗黒大陸が鳴りを潜めだしたのだ。
窮地を逃れたベルナード皇国がホッとしたのも束の間、一人の来客が転移陣で訪れてきた。
「久し振りね、ガイアス公」
突然姿を現した、異世界人レイナ聖女に、皇城は混乱に包まれた。
かくいう私も、無制限転移による見たこともない高等魔法に目を見開いた。
「………なんの用だ」
「あなたに素晴らしい提案を持ちかけようと思って馳せ参じたわけ。今、世界中のありとあらゆる魔物と魔族が姿を消したわ。ダンジョンブレイク寸前のダンジョンも急に大人しくなった。………今のあなたに必要なのは、情報なんじゃない?」
にこやかな笑顔のレイナ聖女に対して、固い表情になる貴族たち。
レイナ聖女は優しい笑みを深めて、貴族たちを見渡した。
「ということで、私から少しばかり魅力的なお話があるのだけれど………お時間いただけるかしら?」
敢えて目の前に餌を吊り下げていることを貴族たちに認識させ、断りづらい状況を作り出す。
これを転移して周囲の状況を確認する数秒のことで、即座に思いつき行えることではないのだが……
「………はぁ。要件は何だ」
本当は私の私情で即断りを入れたいのだが、そうも言ってられなくなった。
頭を押さえて仕方なしに用件を聞く私に、レイナ聖女はとんでもないことを言い出した。
「同盟を組みましょう」
あっけらかんとしたその様子に、一瞬大広間が沈黙に包まれる。
私とレイナ聖女は折り合いが悪い。いや、根本的に見解の相違があるというべきだろうか。
レイナ聖女は精神的なものに拘り、俺は身体的……外面的なことに拘る。
だからこそ、経験ばかりとった年老いた高位貴族をピシャリと黙らせる程の頭脳と性格を持つレイナ聖女は、よく今の貴族体制はよくないなどと発言する。
私は貴族体制やその人々による価値観などどうでも良く、実力を重視する。
金でも権力でも地位であろうと、力が強ければ解決するものだ。弱者に構う義理など強者にはないし、そんな余裕はベルナード皇国で持つことはできない。
国に口出ししてくるレイナ聖女と、断固として聞き入れる気がない私は、有名な話だ。
そんなある意味犬猿の仲で知られるレイナ聖女が、安々と同盟を持ちかけてきたのだ。
「………こちらが同盟しなければならない理由は?」
「同盟国として私……いえ、私たちから提示できるものは、情報、物資、戦力……まあ色々あるわ。取り敢えず、地下帝国と魔法都市、聖国、あと精霊の全面的協力は取り付けてあるらしいわね」
「………例の子供か」
精霊と聞き、真っ先に思い浮かぶのは精霊の王である存在と契約したと言われている、年幼い異世界人。
北の果てにまで噂で流れてくるものだから、ほかの国々では相当有名な存在なんだろう。
とはいえ、『女神を降臨させた』とか『神獣とも契約している』などという嘘か真か心底疑う噂ばかりで、どうせこの国では有益でもない情報ばかりだったからと、大して気にもかけなかったのが裏目に出たか。
「その噂は全て本当のことだけれど………因みに、ベルナード皇国がこの提案を断れば、十中八九この国終わるわよ」
「………どういう事を言っているのか分かっているのか貴様」
軽い様子でとんでもない発言をしたレイナ聖女に、周囲の貴族がいきり立つ。
この国は血気盛んな者が多い。それはレイナ聖女も承知の上のこと。にも関わらず、こんな物騒な発言をしたのだ。
「………本当、なのか」
「そうね。直に『聖魔大戦』が再来して……二千年振りの世界大戦始まるわ。かつてない戦いになるでしょうね」
皆が言葉を失い呆然とする中、私の中は冷静だった。いや、予感していたというべきか……
とにかく、この状況を維持するのは限界だ。
いくら世界各国がある程度支援してくれていたとしても、『世界の檻』の役割を果たすことなど不可能だった。
次攻められたら、この国は落ちる。
なんと言われようが、私たちに断る選択肢など存在しないのだ。
「いいだろう。同盟を組んでやる」
私の言葉に、予想通りと言わんばかりに微笑むレイナ聖女。この顔が気に入らなくて、理由もなく突っかかっていた学園時代が懐かしい。
今でも神経を逆撫でするのに変わりはないが、少なくともその嫌らしい行動が俺を貴族らしくさせたので、複雑な気持ちだ。
「じゃあ、行きましょうか」
転移陣を潜るレイナ聖女についていった私は、次の瞬間、衝撃のあまり微かに目を見開いた。
「だから……ちがうぞ、その……そ、そのへこみ、きっとはこぶとき、へこんじゃったやつ……」
「なにをどうしたらケーキにこんなフォークでつまみ食いしたようなへこみ方があるのか、言ってみろよ?さっさと正直に『こっそりつまみ食いしました』って吐けや」
「なぬ……!!い、いや……そんなはずなし!!おれ、そんなことするやつに、みえるというのかっ!!」
様々な属性の高位精霊と、神獣……各国の要人たちが集まる中で、呆れと様子の目をしているハイエルフの少年と、口の周りにクリームをつけて慌てている様子の幼児がいた。
目の前にある食べかけのケーキを指差しながら、必死に言い訳する幼児。
口の周りにクリームをつけていることもあって、とっても可愛かった。
そう。可愛かったのだ。
個人的に小鳥や子猫を飼っている私は、可愛いものに目がない。
もっとも、野性的な者が多いベルナード皇国に可愛さなど欠片も存在せず、子供たちでさえ短剣や斧を持ち魔物を殺すことに躊躇がないのだ。
「………可愛いな」
ポツリと呟いた私に、……コイツ何言ってんの?と言わんばかりのレイナ聖女の視線を感じながら、一時も目を離さずに幼児の一挙手一投足を見つめ続けた。
「その……その……ち、ちがうからな!!ちょっとてが、うごいただけだからな!!」
ウワァー!!と叫んで部屋の隅へと一生懸命走る姿に、私の頬はつい緩んでしまっていた。
ちょっと抜けていて、それでいて愛嬌のある可愛いらしい子供。
それが魔法王ダイキと私の出会いだった。
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いつも読んでくださりありがとうございます!
こちら側のミスにより投稿を早めてしまいました。大変申し訳ございませんでしたm(_ _)m
寝ぼけて馬鹿をやらかしてしまい、面目ございません!!
ご指摘してくださった方、本当にありがとうございました!!
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