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第三章︙聖国、地下帝国編
仮契約と迷宮攻略開始 レオンSIDE
しおりを挟む斬る、斬る、斬る。
ひたすら剣を振り回して魔物を殲滅させていく。
ここらへんの魔物は肉体は強いが知能は無い図体だけの奴らが多い。
そうなれば剣を大振りにして最小限の体力で体大限の結果を出す為に大きく剣を振り回しながら………ダイキがよく使っていた『ゴリ押し』をすることが最適解となってしまっていた。物凄く不本意だけど。
ギルド長と契約して早速始まった迷宮攻略。
最小限の知識を叩き込んで早速開始したけど、まあ強い。
世界最大規模と言われるだけあって、まだ浅い所からまあまあの強さを誇る魔物の影がちらつき始めていた。
それでも俺は片っ端から殲滅して今は十七階層まで到達したわけだけど、まだ全然進んでいないのに迷宮内が馬鹿に広いせいで、地図を手に次の階層に行こうにも物凄く時間が掛かってしまう。
ここまで入り組んでると迷ってしまうけど、幸い俺の記憶力は常人より発達しているからか、一度見た道はぼんやりと記憶している。
「それにしても、本当に広い」
魔物をギルドから支給された劣化亜空間袋詰め込みながら、周りを見渡す。
だいぶ人の気配は減っているからか、薄暗くて不気味な印象を植え付けてくる迷宮に、俺はため息をついた。
迷宮攻略を始めて早一週間が過ぎた。
最初の一階層や二階層はものの数分で渡りきったけど、今じゃ一日に一階層分進むことができれば良い方だ。
これでこれから来るであろう未踏破地帯も調査するとなると、六十階層までなんて気が遠くなりそうだ。
エルフなら、時間を贅沢に使って少しずつ攻略するのも手だけど、生憎そんなことをしてたらいつまで経っても強くなれないからな。
「まだ、全然だな」
俺は劣化亜空間袋を背負い直して立ち上がると、来た道に目印を付けて引き返した。
「またこんなに魔物を狩ってきたのかい?」
「俺に借金があるってこと知ってるでしょう?なるべく早く返済しないと嫌な予感がして」
「ハハッ……まあ、我らがギルド長はずる賢いからね。弱みはなるべく消しておかないと」
軽口を叩き合いながら手を素早く動かして次々と状態を確認していくギルド員のヴァルラさんは、金貨一枚と銀貨数枚を手渡して来た。
「あいよ、いつも通り返済に充てる半分は差し引いといたからね。今日もお疲れさん」
「ありがとう」
俺は硬貨をポケットに仕舞うと、ギルドの階段を登って貸し付けの部屋に入ると、そのまま固いベッドに寝転がった。
斬って、潰して、倒して。
只管魔物と戦う日々。
自分が成長している、前に進んでいると感じるけど、それ以上に俺の気持ちが焦っているせいで、上手く集中できない時が続いた。
強くなればなるほど、前に進めば進むほど、俺の長い道のりと、その道程すら飛び越える『才能』の存在を痛感させられる。
足りない。
経験、知識、努力、時間。
そして、才能。
俺はまだ、ダイキに追いつくことができていない。
あの魔法の才能と俺の剣がぶつかった時に、俺は勝てる想像すら出来ない。
頭の中でどんな状況において、どんな策を講じようとも、その圧倒的な『力』でねじ伏せられてしまう。
運良くハイエルフとして生まれ、運良くダイキと出会い、運良くA級冒険者になって………そこに俺自身が築き上げてきたものはない。
今までは俺が一番だった。
魔法の才は無くても、魔法都市に来て剣の才能は少なからずあるんだと、俺が一番なんだと知って喜んだ。
でも、そんな俺を足蹴にするように、ダイキは全てをひっくり返してきた。
あれだけ欲した魔法をやすやすと扱って、精霊王と契約するほどの……史上稀に見るほどの才能の持ち主。
嫉妬する心だって少なからず存在した。
なんで俺には力がないんだろうかと。神様は不公平じゃないのかと。
その眩しい圧倒的な才能に嫉妬しながらも、俺はそれ以上に恐れていた。
怖かった。
ダイキにとって俺は必要な存在なのかと。ただの足手まといかもしれない。
何度も何度も思い悩んで、苦悩した。
俺の存在意義。
俺は俺としての役割が欲しかった。
今まで一人だった俺は、対等な仲間の味を知ってしまった。
それを失ってまた孤独に戻るのが、怖かった。
「……だから、強くならないといけないんだ」
ダイキの為に、大切な仲間を守る為に。
そんな綺麗事を含めて、俺は俺の為に強くなる必要があった。
「へぇ。あなた、そんなに強くなりたいのね」
「………フレイ様。なんでそんな気配を消して突然入ってくるんですか」
背後の窓辺に腰掛けているフレイ様に、俺は寝転がりながら視線だけ向けた。
いつもこれくらいの時間帯になるとなぜか俺の様子を確認してくるフレイ様は、俺の方を指差してきた。
「私の経験上、今の貴方の状態はとても強くなることが出来るわ。その絶え間ない焦りの心が、ただ只管に自身を危険へと誘い込むのだから」
「……フレイ様でも偶には明るい言葉をかけてくださるんですね。てっきり現実を容赦なく突きつけてくる精霊だと思ってました」
「まあね。でも、話はここからよ」
フレイ様は目を細めて俺に冷たい視線を送ってきた。
「あなたの今の状態はとても強くなれるわ。でもそれは、その時まで生きていた場合の話。大抵は強くなるまでに死んでしまうわよ」
「知ってます。でも俺は……」
「自分は他の人と比べて特別だから大丈夫?今までやれたからなんとかなる?死ぬ前は皆そう口々に言っていたわ。自分には『特別』があるからって言って、そして呆気なく死んでいった」
「…………。」
「焦りと油断。これは戦う者にとって最大の弱点。私の永い生において、死ななかったのはたったのはたったの二人。そしてその二人はどちらも歴史に名を残す英雄になった」
フレイ様は俺の目をじっと見つめながら、俺の内側を容赦なく抉り取ってきた。
「今のあなたはほぼ確実に死ぬ。その姿勢を貫くのなら、一年後には迷宮内で骨と化しているかもしれないわね。ずっと自分を酷使し続けていたら、近いうちに壊れてしまう」
「……、知ってます。薄々知ってたんです。良くないかもしれないって。でも……これ以外に方法なんて……」
俺は暗い顔になってきつく目を瞑ると、フレイ様は深くため息をついた。
「本当、自分でもなんでこんなに気にかけるのかと思ったら………あの人に似ているからなのね。全く、何千年前だと思ってるのよ……」
フレイ様は一人暫くの間ブツブツと独り言を呟くと、俺の手を握ってベッドに腰掛ける気配がした。
「………そんなに落ち込まなくていいわよ。………私も借りがあるし、今回だけ力を貸してあげるわ」
「………借り?」
「こっちの話よ。でも……そうね。あの子もこのエルフに未来を託したようだし、私も久し振りに賭け事をしましょうか」
フレイ様は俺の手を握って、ゆっくりと魔力を流し込んだ。
「私と仮契約状態にしてあげるわ。光栄に思いなさい。精霊が契約者以外にここまで人類に寛大になってあげたのは私が初めてよ」
俺の手の甲に、緻密な魔法陣が刻まれた。
「有効期限はあなたがこの迷宮を踏破するまで。私はあなたに力を貸してあげる」
俺とフレイ様の間に微かな繋がりができると同時に、俺の体内に火の力が駆け巡った。
「迷宮攻略はこれから私と一緒に行うわ。才能?種族?そんなの関係ないわ。私があなたに剣士とは、戦士とは何たるかを教えてあげるわ」
フレイ様は面白そうに目を瞬かせながら、妖艶に微笑んだ。
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いつも読んでくださりありがとうございます!
【仮契約】
精霊が自ら契約状態を一時的に作ること。
精霊自体が他の存在にに歩み寄る事は滅多になく、かつ仮契約状態は制約も多く力の差があまりに大きいと失敗してしまうため、まずやることはない。
因みにクロスは神子に仮契約状態を結ぼうとして、神子の魔力を枯渇させ気絶させただけで普通に失敗していた。
クロスの永いニート生活の決定打となった要因の一つでもある。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
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