ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ

文字の大きさ
85 / 107
第三章︙聖国、地下帝国編

仮契約と迷宮攻略開始 レオンSIDE

しおりを挟む

斬る、斬る、斬る。


ひたすら剣を振り回して魔物を殲滅させていく。
ここらへんの魔物は肉体は強いが知能は無い図体だけの奴らが多い。
そうなれば剣を大振りにして最小限の体力で体大限の結果を出す為に大きく剣を振り回しながら………ダイキがよく使っていた『ゴリ押し』をすることが最適解となってしまっていた。物凄く不本意だけど。


ギルド長と契約して早速始まった迷宮攻略。
最小限の知識を叩き込んで早速開始したけど、まあ強い。
世界最大規模と言われるだけあって、まだ浅い所からまあまあの強さを誇る魔物の影がちらつき始めていた。

それでも俺は片っ端から殲滅して今は十七階層まで到達したわけだけど、まだ全然進んでいないのに迷宮内が馬鹿に広いせいで、地図を手に次の階層に行こうにも物凄く時間が掛かってしまう。
ここまで入り組んでると迷ってしまうけど、幸い俺の記憶力は常人より発達しているからか、一度見た道はぼんやりと記憶している。


「それにしても、本当に広い」


魔物をギルドから支給された劣化亜空間袋詰め込みながら、周りを見渡す。
だいぶ人の気配は減っているからか、薄暗くて不気味な印象を植え付けてくる迷宮に、俺はため息をついた。


迷宮攻略を始めて早一週間が過ぎた。
最初の一階層や二階層はものの数分で渡りきったけど、今じゃ一日に一階層分進むことができれば良い方だ。


これでこれから来るであろう未踏破地帯も調査するとなると、六十階層までなんて気が遠くなりそうだ。
エルフなら、時間を贅沢に使って少しずつ攻略するのも手だけど、生憎そんなことをしてたらいつまで経っても強くなれないからな。

「まだ、全然だな」


俺は劣化亜空間袋を背負い直して立ち上がると、来た道に目印を付けて引き返した。



「またこんなに魔物を狩ってきたのかい?」

「俺に借金があるってこと知ってるでしょう?なるべく早く返済しないと嫌な予感がして」

「ハハッ……まあ、我らがギルド長はずる賢いからね。弱みはなるべく消しておかないと」


軽口を叩き合いながら手を素早く動かして次々と状態を確認していくギルド員のヴァルラさんは、金貨一枚と銀貨数枚を手渡して来た。

「あいよ、いつも通り返済に充てる半分は差し引いといたからね。今日もお疲れさん」

「ありがとう」


俺は硬貨をポケットに仕舞うと、ギルドの階段を登って貸し付けの部屋に入ると、そのまま固いベッドに寝転がった。


斬って、潰して、倒して。

只管魔物と戦う日々。
自分が成長している、前に進んでいると感じるけど、それ以上に俺の気持ちが焦っているせいで、上手く集中できない時が続いた。

強くなればなるほど、前に進めば進むほど、俺の長い道のりと、その道程すら飛び越える『才能』の存在を痛感させられる。



足りない。


経験、知識、努力、時間。


そして、才能。



俺はまだ、ダイキに追いつくことができていない。
あの魔法の才能と俺の剣がぶつかった時に、俺は
頭の中でどんな状況において、どんな策を講じようとも、その圧倒的な『力』でねじ伏せられてしまう。



運良くハイエルフとして生まれ、運良くダイキと出会い、運良くA級冒険者になって………そこに俺自身が築き上げてきたものはない。

今までは俺が一番だった。
魔法の才は無くても、魔法都市に来て剣の才能は少なからずあるんだと、俺が一番なんだと知って喜んだ。
でも、そんな俺を足蹴にするように、ダイキは全てをひっくり返してきた。


あれだけ欲した魔法をやすやすと扱って、精霊王と契約するほどの……史上稀に見るほどの才能の持ち主。


嫉妬する心だって少なからず存在した。
なんで俺には力がないんだろうかと。神様は不公平じゃないのかと。


その眩しい圧倒的な才能に嫉妬しながらも、俺はそれ以上に恐れていた。


怖かった。


ダイキにとって俺は必要な存在なのかと。ただの足手まといかもしれない。
何度も何度も思い悩んで、苦悩した。

俺の存在意義。
俺は俺としての役割が欲しかった。
今まで一人だった俺は、対等な仲間の味を知ってしまった。
それを失ってまた孤独に戻るのが、怖かった。


「……だから、強くならないといけないんだ」


ダイキの為に、大切な仲間を守る為に。
そんな綺麗事を含めて、俺は俺の為に強くなる必要があった。





「へぇ。あなた、そんなに強くなりたいのね」

「………フレイ様。なんでそんな気配を消して突然入ってくるんですか」


背後の窓辺に腰掛けているフレイ様に、俺は寝転がりながら視線だけ向けた。

いつもこれくらいの時間帯になるとなぜか俺の様子を確認してくるフレイ様は、俺の方を指差してきた。


「私の経験上、今の貴方の状態はとても強くなることが出来るわ。その絶え間ない焦りの心が、ただ只管に自身を危険へと誘い込むのだから」

「……フレイ様でも偶には明るい言葉をかけてくださるんですね。てっきり現実を容赦なく突きつけてくる精霊ひとだと思ってました」

「まあね。でも、話はここからよ」

フレイ様は目を細めて俺に冷たい視線を送ってきた。


「あなたの今の状態はとても強くなれるわ。でもそれは、。大抵は強くなるまでに死んでしまうわよ」

「知ってます。でも俺は……」


「自分は他の人と比べて特別だから大丈夫?今までやれたからなんとかなる?死ぬ前は皆そう口々に言っていたわ。自分には『特別』があるからって言って、そして呆気なく死んでいった」

「…………。」

「焦りと油断。これは戦う者にとって最大の弱点。私の永い生において、死ななかったのはたったのはたったの。そしてその二人はどちらも歴史に名を残す英雄になった」


フレイ様は俺の目をじっと見つめながら、俺の内側を容赦なく抉り取ってきた。


「今のあなたはほぼ確実に死ぬ。その姿勢を貫くのなら、一年後には迷宮内で骨と化しているかもしれないわね。ずっと自分を酷使し続けていたら、近いうちに壊れてしまう」

「……、知ってます。薄々知ってたんです。良くないかもしれないって。でも……これ以外に方法なんて……」


俺は暗い顔になってきつく目を瞑ると、フレイ様は深くため息をついた。


「本当、自分でもなんでこんなに気にかけるのかと思ったら………あの人に似ているからなのね。全く、何千年前だと思ってるのよ……」

フレイ様は一人暫くの間ブツブツと独り言を呟くと、俺の手を握ってベッドに腰掛ける気配がした。


「………そんなに落ち込まなくていいわよ。………私も借りがあるし、今回だけ力を貸してあげるわ」

「………借り?」

「こっちの話よ。でも……そうね。あの子もこのエルフに未来を託したようだし、私も久し振りに賭け事をしましょうか」


フレイ様は俺の手を握って、ゆっくりと魔力を流し込んだ。


「私と仮契約状態にしてあげるわ。光栄に思いなさい。精霊が契約者以外にここまで人類に寛大になってあげたのは私が初めてよ」

俺の手の甲に、緻密な魔法陣が刻まれた。


「有効期限はあなたがこの迷宮を踏破するまで。私はあなたに力を貸してあげる」

俺とフレイ様の間に微かな繋がりができると同時に、俺の体内に火の力が駆け巡った。



「迷宮攻略はこれから私と一緒に行うわ。才能?種族?そんなの関係ないわ。私があなたに剣士とは、戦士とは何たるかを教えてあげるわ」



フレイ様は面白そうに目を瞬かせながら、妖艶に微笑んだ。


------------------

いつも読んでくださりありがとうございます!


【仮契約】

精霊が自ら契約状態を一時的に作ること。
精霊自体が他の存在にに歩み寄る事は滅多になく、かつ仮契約状態は制約も多く力の差があまりに大きいと失敗してしまうため、まずやることはない。

因みにクロスは神子に仮契約状態を結ぼうとして、神子の魔力を枯渇させ気絶させただけで普通に失敗していた。
クロスの永いニート生活の決定打となった要因の一つでもある。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

追放即死と思ったら転生して最強薬師、元家族に天罰を

タマ マコト
ファンタジー
名門薬師一族に生まれたエリシアは、才能なしと蔑まれ、家名を守るために追放される。 だがそれは建前で、彼女の異質な才能を恐れた家族による処刑だった。 雨の夜、毒を盛られ十七歳で命を落とした彼女は、同じ世界の片隅で赤子として転生する。 血の繋がらない治療師たちに拾われ、前世の記憶と復讐心を胸に抱いたまま、 “最強薬師”としての二度目の人生が静かに始まる。

転生先は海のど真ん中!? もふ強魔獣とイケオジに育てられた幼女は、今日も無意識に無双する

ありぽん
ファンタジー
25歳の高橋舞は、気がつくと真っ白な空間におり、そして目の前には土下座男が。 話しを聞いてみると、何とこの男は神で。舞はこの神のミスにより、命を落としてしまったというのだ。 ガックリする舞。そんな舞に神はお詫びとして、異世界転生を提案する。そこは魔法や剣、可愛い魔獣があふれる世界で。異世界転生の話しが大好きな舞は、即答で転生を選ぶのだった。 こうして異世界へ転生した舞。ところが……。 次に目覚めた先は、まさかの海のど真ん中の浮島。 しかも小さな子どもの姿になっていてたのだ。 「どちてよ!!」 パニックになる舞。が、驚くことはそれだけではなかった。 「おい、目が覚めたか?」 誰もいないと思っていたのだが、突然声をかけられ、さらに混乱する舞。 実はこの島には秘密があったのだ。 果たしてこの島の正体は? そして舞は異世界で優しい人々と触れ合い、楽しく穏やかな日々を送ることはできるのか。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

転生特典〈無限スキルポイント〉で無制限にスキルを取得して異世界無双!?

スピカ・メロディアス
ファンタジー
目が覚めたら展開にいた主人公・凸守優斗。 女神様に死後の案内をしてもらえるということで思春期男子高生夢のチートを貰って異世界転生!と思ったものの強すぎるチートはもらえない!? ならば程々のチートをうまく使って夢にまで見た異世界ライフを楽しもうではないか! これは、只人の少年が繰り広げる異世界物語である。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...