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第三章︙聖国、地下帝国編
地下迷宮と契約 レオンSIDE
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「あいよ」
いつも通り大量に魔物を狩って素材を小さな袋から引き出す俺は、相変わらず感じるチクチクした視線を無視してギルド職員に鑑定してもらう。
因みにギルド職員の人は一番年配の人にやってもらっている。
ギルド長ではないらしいが、地下帝国の首都に位置する冒険者ギルドの中で一番の古株らしい。
ドワーフにしては珍しく俺に偏見に目を向けてこない、今ではとても貴重な人になっている。
あの日、フレイ様に地下帝国へ連れられた俺は、早速迷宮攻略を開始した。
最初はゆっくりと、この地の魔物の特徴を掴む為に慎重に攻略していった。
「冒険者ギルドへの道程はあっちだから。あとはあなた自身で何とかできるわよね?……困ったり行き詰まったりしたときは私のところに来なさい」
フレイ様はそう言うと一瞬で姿を消した。
地下帝国の実質最高権力者が、ドワーフと犬猿の仲のエルフ……それもハイエルフを連れて姿を現し、迷宮の前にハイエルフだけを置き去りにして姿を消した。
自体の収拾とかもうこの時点で色々手遅れな気がするけど、そんなのはいつものこと。
冷たい目でチラチラ見てくるドワーフ達をダイキの奇行を受け流す為に習得したスルースキルで無視して、取り敢えず俺は冒険者ギルドまで足を運ぶことにした。
「冒険者ギルドは……あ、あれか」
冒険者ギルドのエンブレムが刺繍された旗に向かって歩いていくと、目の前に大きな人影が立ち塞がった。
「なんだぁー?エルフのガキがなんでここに居るんだ?舐めてんのか我?」
リーダーらしきドワーフが舌打ちをしながら俺を見下ろしていた。
因みにドワーフはお伽噺の絵本に出てくるようなちまっとした姿ではなく、肌が少し濃い美男美女が多い。
勿論今俺を馬鹿にしたように見下ろしてくるドワーフ達も例外ではなかった。
くっきりとした二重まぶたに高い鼻筋は、肌の色と体格さえ分からなければドワーフだなんて思いもしないだろう。
俺はなぜか今の状況を冷静に分析しながら腕を組んで考え込んだ。
この様な状況の時の対処法は基本的には実力差を見せつけて撤退させる………いや、それは冒険者同士のトラブルの場合か。
こんな通行人に絡まれた場合の対処法なんて知らないし、今までそんなことも無かった。
ここで思い出されるのは、ダイキの「もしも」シリーズ。
よくダイキが冒険者ギルドに行くときに期待して口にしていた言葉、『てんぷれ』らしき状況と今の状況があまりにも一致しすぎている。
ここで俺の選択肢は二つ。
さり気なくやり過ごしてスルーするか、ダイキに散々聞かされた対処法という名の妄想話を行動に移すか。
「あぁ?何黙り込んでんだガキ?ぶっ潰すぞ」
この感じはさりげなくやり過ごすことは難しそうだ。
俺は静かに溜息を吐くと拳を握りしめた。
「何黙ってんのかって聞いてんだよ!!さっさと答えろやクソガキが!マジでぶっ潰……グェッ」
俺は勢いをつけて素早く男の腹に拳をめり込ませると、素早く後ろに回り込んで足払いを掛けた。
ついでに取り巻き達も地面に落として、俺はその隙に剣を抜いた。
「て、てめぇ……やったなゴラッ!!」
「そうだよ。先に喧嘩を売ってきたのはお前達だからな。徹底的に叩き潰してやるよ」
俺はニヤリと笑うと剣を大きく振りかぶった。
「で?なにか言い訳はあるか?」
町中で大乱闘なんてしていた俺達は、勿論偶々近くにいた冒険者たちによってたちまち沈静された。
そして当然冒険者ギルドに連行された俺は今こっぴどくギルド長に叱られていた。
「炎の精霊王様が連れてくると言ったエルフ、珍しくあの方が興味を持った人物に私も興味を持っていたのだがな、入国初日に騒ぎを起こすとはどういう事だ貴様」
「俺は被害者です。そもそも突然見知らぬ人に絡まれて仕方が無く……」
「ほう。それにしては意気揚々と武器を振りかぶってやり合っていたそうだが?どういうことだ?あぁ?」
少しばかりブチギレているギルド長は、頭を押さえて落ち着かせるように深呼吸をした。
「確かにお前のやっていることは間違ってはいない。身の危険を感じたのなら抵抗する権利は誰にだってあるからな。
たが………お前は曲がりなりにもA級冒険者だ。腕が立つのなら、もう少し穏便に事を済ませることも出来たであろうに」
「いえ、こういうときは徹底的に潰せと助言されていたので」
『こーゆーモブは、てってーてきにつぶして、おれつえー!!するべし。それで、かっこよくたちさって………せんぼーのしせんをあつめさせる。これじょーしき』
もぶ?とかおれつえ?は知らないけど、話を聞く限り二度とこんな事が怒らないように徹底的に心を折るんだと言っていた気がする。
後半の格好良いとか羨望は置いといて、俺は全力で相手を滅多打ちにした事が良くなかったらしい。
「………それ、誰に教わった?」
「えっと……ダイキ……俺の相棒です」
「ダイキ…?異世界人の、女神降臨の奇跡の子か?」
あいつ、ここではこんな風に言われてんのか。
「まあ、はい」
「………精霊王様が仰っていた人物とはだいぶ違うように見受けられるな」
一体あいつが外でどれだけ美化されていたのか知らないが、少なくとも精霊視点だと俺たちの思うダイキの人物像とは物凄くかけ離れていることは分かってる。
「まあいい。とにかくお前は町中で乱闘を起こした。つまり、どういう事が分かるな?」
「えー、もしかして降格ですか?」
「違う。巻き込まれた人がいれば降格どころか最悪剥奪だが、幸い今回は被害者は出ていない。………だからお前には、これを返済してもらう」
一枚の紙を差し出され、デカデカと書かれた内容俺は目を大きく見開いた。
「借金……金貨四万?」
「そうだ。お前達が暴れ倒して壊した物の数々に、舗装された道までも荒れた。勿論彼奴等にも同様の金額請求をしてあるからな。安心しろ」
安心……安心?
四万といえば、小さな屋敷一つ建てられる位の値段。俺たちが暴れたからといってそんな被害が出るわけ……
「図りましたね」
俺の言葉に、目の前にいるギルド長は長い髪をかきあげてニヤリと笑った。
「ここのところ、新人冒険者達にいい人材がいなくてな、次々とベテランが引退していく中で冒険者ギルドの売り上げも下がっていってるわけだ。
そこに現れたA級冒険者、勿論活用しない手はないたろう?」
「俺に何をさせる気ですか」
わざわざ俺に高額の借金をふっかけた………A級冒険者に真正面から喧嘩を売ったのだ。
余程の事情がない限りギルド長という人物がこんな博打に出るわけがない。
「なに、迷宮攻略を頼みたいだけだ。………未踏破地帯のな」
地下帝国が所有する迷宮は、世界最大規模。
未だ踏破しきった人は存在せず、各階層は進む事に広くなっていくため危険度も高くなっていく。
故に迷宮は進めば進むほど未踏破地帯が増えていく訳だ。
「階層は?」
「取り敢えず六十階層まで。お前なら時間さえあれば達成できるだろう?」
六十か。
頑張ればいけるかもしれない……そんな微妙な階層を設定してきたが、それは普通に攻略する場合の話。
未踏破地帯を調査する場合、六十階層は……少なく見積もっても数年は掛かる。
金貨四万の借金程度俺なら一年間かそこらで返すことができる。
なのにわざわざ六十階層まで指定してきた。
「報酬は?」
俺の言葉に、ギルド長はフレイ様によく似た赤い瞳でジッと俺を見据えると、唇の端をつりあげた。
「聖剣グラディウスの在処」
……何も本人の力だけで超えなくてもいい。
フレイ様が言っていたことがやっとわかった。
同時に、セレナーデ様の言っていたこともわかった気がする。
俺は一旦目を瞑って決意を固めると、ゆっくりと開いた。
「……分かりました。迷宮探索、引き受けます」
俺の長い迷宮探索が幕を開けた。
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