83 / 107
第三章︙聖国、地下帝国編
最上位精霊 レオンSIDE
しおりを挟む「アクアから話は聞いていたけれど………なるほど」
俺の周りを歩きながら、ガン見してくるフレイ様。
時折頷きを入れながら、俺の腕を掴んで指で突いてくる。
「いや……あの……」
「………いいわね」
なにが!?
突然変態な事を言いだしたフレイ様から逃れるために、俺は素早く腕を引っ込んで距離を取った。
「その腕、よく鍛えられた実戦的な腕ね。日常的に鍛錬した跡がよく見えるわ。基礎的な筋力が少し不足しているけど、まあそれはあと数年身体が成長したら問題ないわ」
すごい。
俺の腕を見ただけでここまで分かるなんて、戦士と日常的に過ごしているんだろう。
それにフレイ様の立ち姿や動きから見える、圧倒的強者感。
それは精霊特有のものではなくて、熟練された戦士のような、魔法生物とは思えないほどの立ち振舞い。
俺の目の前にいる精霊は、間違いなく前衛として一級の強さを誇る特異な精霊だと分からされる。
「あなたの強さなら、同年代では負け無しのはずよ。人類の中で強さで測れば最上位とは行かないまでも、上位にはいる筈。なのにどうして迷宮に行きたいのかしら?」
同年代では負け無し………言われてみれば俺は同年代に実力で負けたことは一度もない。
それで敢えて言うが、ダイキは同年代じゃない。あんなチビと俺とじゃあ年齢が一回りも違うからな。
「……強くなりたいからです」
「そう。どうして強くなりたいの?」
それは……
「あいつに追い付きたいから……いや、あいつを超えたいから、です」
俺のほうが年上なのに、いつまで背中を追っていなきゃいけないんだ。
俺はダイキを超えて、ダイキに守られる存在じゃなくて、守る存在になるんだ。
少なくとも、足を引っ張る様な無能にはなりたくない。
「………え、何を言ってるの?」
首を傾げて俺を不思議そうに見つめてくるフレイ様。
「……ん?」
「……ん?」
何故か二人で首を傾げて互いを見つめ合いながら、俺は恐る恐る口を開いた。
「あの………アクア様から話は聞いていたんですよね?」
「ええ、聞いていたわ」
「それって……どんなこと言ってましたか?」
俺の問いにフレイ様さも当然かのようにニッコリと笑って言った。
「そんなの勿論精霊王の契約者がとんでもなく可愛くて可愛くて仕方がないって内容だったわよ。なんてったって難攻不落の精霊王を落とした人間だもの。私も一度会ってみたいわ」
フレイ様曰く、俺の事はついでとばかりに端の方にチョコンと書かれていただけらしい。
それでもあのアクア様が人間に興味を示すなんて……と思って俺を迎えに来たんだとか。
つまりただの興味本位だったわけだ。
「………ん?ということは、もしかしてあなたが超えたい人っていうのは……」
「まあ、はい。そうですね」
「え?無理、無理無理無理。精霊王の契約者を上回る力を手にするなんて無理でしょ。聖女や大賢者が裸足で逃げ出す精霊王相手に契約したのよ?冷静に考えて不可能でしょ」
そこまで言わなくてもいいでしょ……
あまりの正論に俺は肩を落として鬱になりかけていると、フレイ様は「でも……」と少し声のトーンを落として俺の肩に手を置いた。
「超えることは出来ないけれど、『勝つことはできる』。その契約者さんがどれくらいの潜在能力かは分からないけれど、あなたはその子に勝てないわけじゃないわ」
「………どういうことですか」
俺のつぶやきに、フレイ様は人差し指を立てた。
「何もあなた自身の力じゃなくてもいいのよ。まず一つの方法として、強力な装備………武器を所持すること。………これは言った私もアレだけど望み薄ね」
それはそうだろう。
だってダイキ、グリモアとかいう得体のしれない、底しれぬえげつなさを秘めたモンを持ってるからな。
精霊王様が言うには、アレは六大魔導具と同等かそれを上回る代物だとか。
まさに鬼に金棒。
ダイキ本人は空白のページに落書きをしたり、突然芸術に目覚めたとか言い出して絵の具をベタベタ塗り付けたりしている場面が多かったけど……
そう思うと鬼に金棒と言うよりは、猫に小判と言う方が合っているかもしれないな。
「まああなたにはどうやら聖神のご加護があるようだし、どうにかなるんじゃない?そもそも強くなる為にここに来た理由って女神様に言われたからでしょ?」
「はい。セレナーデ様が迷宮に手掛かりがあると言っていて……」
迷宮に一体何があるのか分からない。
でも、それでもセレナーデ様が気にするほどの何かが眠っているのは確か。
それが俺にどんな影響を及ぼすのか想像もつかない。
それでも、力を手に入れられるなら俺は何だって構わなかった。
ダイキに追いつくには、手段を選べる余裕があるわけ無いんだと日々痛感していたからこそ、俺は躊躇うことなどなかった。
「………そうね。そこまで覚悟があるのなら、私もとことん付き合ってあげるわ」
フレイ様は微笑みながらそう言うと、突然俺の腕をむんずと掴んできた。
「口は閉じててね」
「………え」
バリンッと硝子を突き破り空へ飛び立つフレイ様に、俺が制しの声を出そうと口を開けた。
「あの……ちょ、え、やめ…」
段々と速度を上げ超高度の超高速飛行を開始したフレイ様に、俺は呆然としながら引っ張られていた。
人は余りに驚くと、声が出ないものらしい。
俺はフッと笑って目を閉じ、猛烈な空気抵抗と温度差を利用して、心の安寧のため素早く意識を切り離した。
「……ら…………ほら、何寝ぼけてるのよ、着いたわよ?」
頬を叩かれてぼんやりと目を開けた俺俺の前には、真紅の瞳をした美女が。
「え……あ、あれ?」
「ほら、さっさと立ちなさい」
フレイ様の急かされるような声と共に立ち上がった俺の前には、馬鹿でかい文様が彫り込まれた石垣の入り口があった。
固く両扉で閉ざされていたであろうその入り口は、今は大きく開け放たれていた。
そして俺に突き刺さる数々の視線。
「ようこそ、地下帝国グランドマキアに。エルフがこの地に足を踏み入れるなんて数百年ぶりよ」
地下帝国、ドワーフの国。
世界最大級の武装都市であり、また世界最大規模の未踏破迷宮を所有している帝国。
そして非常に良くないことに………エルフとドワーフは、ありえないくらいに仲が悪い。
「これから宜しくね、ハイエルフの戦士さん」
………本当に大丈夫かな。
今も突き刺さる視線から目を逸らしながら、俺は微かにため息をついた。
------------------
いつも読んでくださりありがとうございます!
ご愛読の方、常連の方、偶々通り掛かったチラ見の方、励みになっております。
最近風邪にかかり気味で鼻と喉がヤバいですが、なんとかやっつけていきたいと思います(^^)
皆様も温度差による風邪にはくれぐれもお気を付け下さい。
227
あなたにおすすめの小説
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
ファンタジーは知らないけれど、何やら規格外みたいです 神から貰ったお詫びギフトは、無限に進化するチートスキルでした
渡琉兎
ファンタジー
『第3回次世代ファンタジーカップ』にて【優秀賞】を受賞!
2024/02/21(水)1巻発売!
2024/07/22(月)2巻発売!(コミカライズ企画進行中発表!)
2024/12/16(月)3巻発売!
2025/04/14(月)4巻発売!
応援してくださった皆様、誠にありがとうございます!!
刊行情報が出たことに合わせて02/01にて改題しました!
旧題『ファンタジーを知らないおじさんの異世界スローライフ ~見た目は子供で中身は三十路のギルド専属鑑定士は、何やら規格外みたいです~』
=====
車に轢かれて死んでしまった佐鳥冬夜は、自分の死が女神の手違いだと知り涙する。
そんな女神からの提案で異世界へ転生することになったのだが、冬夜はファンタジー世界について全く知識を持たないおじさんだった。
女神から与えられるスキルも遠慮して鑑定スキルの上位ではなく、下位の鑑定眼を選択してしまう始末。
それでも冬夜は与えられた二度目の人生を、自分なりに生きていこうと転生先の世界――スフィアイズで自由を謳歌する。
※05/12(金)21:00更新時にHOTランキング1位達成!ありがとうございます!
転生したらちびっ子になって、空を落ちていた件 〜もふもふたちのお世話はお任せあれ。ついでに悪もやっつけます!〜
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした高橋凛は、お詫びとして理想の世界へ転生することに。しかし気がつけば幼児の姿で、しかも空を落下中だった!?
バカ神、あいつまたミスったな!? そう思いながらも、凛はどうすることもできず、空を落ちていく。しかも更なるアクシデントが凛を襲い……。
が、そのアクシデントにより、優しい魔獣に助けられた凛は、少しの間彼の巣で、赤ちゃん魔獣や卵の世話を教わりながら過ごすことに。
やがてその魔獣を通じて侯爵家に迎え入れられると、前世での動物飼育の知識や新たに得た知識、そして凛だけが使える特別な力を活かして、魔獣たちの世話を始めるのだった。
しかし魔獣たちの世話をする中で、時には悪人や悪魔獣と対峙することもあったため、凛は、『魔獣たちは私が守る!!』と決意。入団はできないものの、仮のちびっ子見習い騎士としても頑張り始める。
これは、凛と魔獣たちが織りなす、ほんわかだけど時々ドタバタな、癒しとお世話の物語。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草
ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)
10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。
親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。
同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……──
※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました!
※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇なろうにも上げています。
異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。
桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。
だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。
そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。
異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。
チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!?
“真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる