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第三章︙聖国、地下帝国編
説得 レオンSIDE
しおりを挟む「えーっと、こんにちは?」
ただでさえ白けた目を向けられる俺に、一層冷たく白けた目線による攻撃が殺到して、あまりの気不味さに俺は苦笑いをするしかなかった。
「………なんでこいつがリーダーなんだよ。納得いかねえ」
「あの方に言われたと伝えられても、流石にエルフは……」
「てかこいつまだガキだし、なんであの方はこのエルフをリーダーに指名したんだ?」
口々に好き勝手言うドワーフ冒険者達を見渡しながら、俺はチラリと後ろを振り返る。
相変わらずグッドサインを送ってくるギルド長に溜息しか出てこない。
そもそもエルフとドワーフが連携をとるなんてそれこそ滅多に無いのに、こんな即席攻略隊に出来るとは到底思えないんだけど。
「ちょっとみんな静かにしてくれ」
一人の冒険者が周りに大きな声で呼びかけると、ピタリとお喋りが止まった。
そして俺の前に出てきたのは、美丈夫の巨大なハンマーを持ったドワーフの冒険者だった。
流れるように構えながらも、隙のないその姿勢。
明らかに他の冒険者と比べて頭一つ抜きん出ているその人は、俺に向かって片手を伸ばしてきた。
「私はアレクサンダー。アレクと呼んでくれ。一応S級冒険者をやらせてもらってる」
「俺はレオナルド。宜しくお願いします。ランクはA級冒険者です」
………S級か。
雰囲気が異様なほどに普通でありながら、動作が明らかに常人のそれではなかったから………まあ薄々気づいていた。
「その年でA級か。確か君はまだ十代だろう?将来有望株だね」
「いえいえそんな……それにしてもS級冒険者なんて凄いですね。やっぱり強いですね」
「ありがとう。でも私なんてまだまだだよ。この年になっても未だにあの方に追い付いていないし、悲しいかな、やはり最近では私自身あまり成長する機会がなくなってしまっててね」
少し悲しそうに微笑むアレクさんに、俺は恐怖を覚えた。
「この攻略隊に参加したのって……」
「あの方の緊急収集という理由もあるけど。君はそんな返事を求めてないよね?まあ………強いて言えば、『刺激』を期待したんだよ」
………狂ってる。
一見穏やかそうで、心の中では常に渇望するその想いに俺は震えた。
死に物狂いで強さを求めるわけでもなく、強い想いを心に秘めて強くなるのでもない。
ただ、自分の欲望を満たしたいだけ。
それだけでS級冒険者にまで上り詰めたこの人は、一体どんな経験をしたんだろうか。
「………凄まじいな」
「ハハッ、褒め言葉として受け取っておくよ。それで私から一つ提案があるんだが、聞いてもらえるかな?」
アレクさんは俺の肩を掴んで顔を覗き込んできた。
「この攻略隊、私にリーダーを譲ってもらえないかな?まだ経験の浅い君より私のほうが効率的に統率することも出来るし、なにより種族間による問題も発生しなくて済むだろう?」
ギリギリと強く肩を掴みながら『提案』をしてくるアレクさんに、俺は咄嗟に身を反らして距離を取った。
「おやおや、どうしたの急に。もしかして不用意に近づきすぎてしまったかな?」
悪びれもなく笑いながらアレクさんは後ろに身を反らして周りの冒険者達を見渡した。
「君達も私がリーダーのほうが安心出来るよね?こう言っては失礼だけれど、私達の命運をこのエルフ一人に握られるのは少しおぼつかない節があると思うね」
「確かに……」
「いくらあの方の言葉だとしても、ここに来たばかりの若造エルフに指揮権を与えるのは愚策としか言いようがない」
「そもそも何故A級の冒険者に指揮権を託す必要がある?アレクに任せればいいだろう」
次々とアレクさん賛成派が築き上げた所で、またアレクさんは俺の方を向き直った。
「どうやら周りは私の提案に賛成してくれているようだ。あとは君の返事さえあればいいんだよ」
まるで悪魔の誘惑のように微笑むアレクさんは、ほんの一瞬、少しだけ口角を上げた。
「………俺は……リーダーは実力と見識が優れている人物がなるべきだと思っていますし、冒険者をやるにあたって常識だと思います」
「じゃあ……」
「でも、それでもあなたはできません」
ほんの一瞬の表情。だった瞬きひとつの間、そこには完全な欲望が潜んでいた。
自分だけの欲望、自分だけの願い。
それは、全体を俯瞰し私情に囚われず適切な判断を要求されるリーダーで、一番と言っていいほどあってはならないもの。
「別に俺は、フレイ様が俺に託したからとか、功績をあげたいからリーダーになりたいんじゃありません。ただ、生きていたいんです」
この人に任せたら、恐らく迷宮の原因を取り除く可能性は上がる。
でも、そこに含まれる犠牲やリスクは無情にも切り捨てられるはずだから。
俺は、そんな博打に出るくらいなら、いくら嫌でもリーダーを務めてやる。
俺は目の前に立つアレクさんを睨みつける。
「俺は、ここにいる皆を見殺しにするほど冷たい人ではないです。だからフレイ様も俺に託したんでしょう」
少し息を荒らげてアレクさんに真正面から宣戦布告した俺に、アレクさんはしばらくの間じっと見つめてきたかと思うと…………プッと吹き出した。
「いやはや、合格だ。よく気づいたね、私の心の内に。いくらか表に出してやったとは言え、余程勘が良くないと気づけんのだがな」
突然の雰囲気の変わりように俺が驚いていると、アレクさんは周りを見渡して手を挙げた。
「皆、このエルフがリーダーでいいよな?今の言葉を聞いていただろう?」
アレクさんの言葉に次々に冒険者はあっさりと頷き始めた。
「うむ」
「まあ」
「かっこよかったぞ坊主。皆の為に己より強い相手に立ち向かう気概、中々見事」
「まあ。騙していたことは許してくれ。アレクが言って聞かなんだからな。恨みはアレクにぶつけるといい」
「ちょっと、私にすべて押しつけないでくれるかな?」
ワイワイと騒ぎ始めた冒険者たちに俺は呆然としていると、後ろで肩を叩かれた。
「だから言っただろう?お前なら出来ると」
「言ってないです」
「そもそもここには古株とベテランの冒険者しかいないからな。お前の行動を見守ってきた彼らは最初からある程度信頼を寄せていたんだよ。ただ、最後の一押しが必要なだけだった」
そもそもフレイ様が冒険者達に俺の身の上を話してくれていたらしくて、ドワーフ達も俺に敵対心をそんな抱いていないと告げてきたギルド長は、よくやったと言わんばかりに親指を立てた。
「今回の迷宮攻略、必ずやその原因を突き止めるんだ。前代未聞の異例だが、あのフレイ様がお前に託したんだ。お前なら出来る」
ギルド長の信じて疑わない声に、俺は少しだけ笑みを落とした。
「わかりました。………じゃあ、始めようか」
お伽噺みたいに悪を討伐してご機嫌なんてものはない。
相手は迷宮に干渉できる力を持った存在。
間違いなく、神話時代の存在の可能性が高い。
それでも、冒険者達は希望に満ちていた。
俺達は、地獄へと足を踏み入れた。
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