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第三章︙聖国、地下帝国編
異形なる魔獣1 レオンSIDE
しおりを挟む「もしものことがった場合に備えて、一応帝国の人達に警告と避難の準備を始めるように伝えておく。だから此方のことは気にせず好きなだけ暴れていいからな」
「はあ、まあなるべく暴れずに頑張ります」
ギルド長にドワーフらしい見送りを受けた俺達は、早速迷宮攻略を始めた。
前衛と後衛を五つの集団に纏めて、各階層で交代するように迷宮を攻略していく。
途中のちょっとしたハプニングは俺やアレクさんが介入し素早く対処することで、今までにないほど快適で素早く攻略が進んでいった。
ギルド長が選んだ冒険者達なだけはある。
完璧とは言わないまでも、十分過ぎるほどの連携には長年の努力が感じられた。
そして今回はとにかく奥深くの層に行くことが目的なので、散策や魔物の狩りを最小限に抑えることによって効率を上げていった。
二十階層、三十階層と順調に進んでいく傍ら、魔物の腐った死体はどんどんと増えていった。
階層を下れば勿論そこまで到達できる冒険者も少なくなっていくわけで、本来はあり得ないことなのに………調査すればするほど原因が全くわからないこの状況に、俺は緊張して唇を引き締めた。
「待って………これは……」
俺は壁に張り付いていた小さな跡を指でなぞった。
何層にも重なっていてどこまでも先に続くその跡に、俺は首を傾げた。
爪痕………にしては長すぎて不自然だし、何層にも重なっているから指が十数本無いいけないし。
俺の記憶にはこんな跡を残すような魔物はここの階層辺りにはいないはず。
現に何年もこの場で魔物を狩ってきた冒険者達も首を傾げて不思議がっていることから、間違いなくそんな魔物はいないんだろう。
じゃあ魔物が原因じゃないと予想しても、全く想像がつかない。
「これは魔物の跡だね。間違いなく。魔力の残滓が感じられる。これは余程の………」
アレクさんは落ち着きながら状況分析しているのを傍らで聞きながら、壁の全体を見渡した。
いたるところに付着しているその跡は、まさに何百もの魔物がずっと引っ掻いた様な跡だった。
「未攻略階層の……魔物?」
一人の冒険者が落ち着きながらも震える声で言った。
未攻略階層。
現在約六十階層までほぼ完全攻略が進んでいるこの迷宮は、長らく記録が更新されていない。
理由は単純、利益率が低いのと、ただ単純に六十階層までの攻略が途轍もなく困難だから。
この迷宮は五十階層から、急に難易度が跳ね上がる。
それまではは迷宮が迷宮であり、攻略することができたから……アレクさんはそう言っていた。
同時に、五十階層からは迷宮は迷宮じゃなくなる、とも言っていた。
迷宮が冒険者を殺しにくる。
意志を持ったように魔物たちを統率し、まるで何者かの意志を感じていると勘違いしてしまうほど、この迷宮は五十階層から急激に変化する。
そんな五十階層、ましてや六十階層より深くの階層から移動してきたなんて、考えたくもない。
四十九階層の安全地帯で俺達は休憩しながら様々な情報交換を行った。
もはやこの階層まで来ると、違和感は姿を完全に現してきた。
魔物が一匹も見当たらない。
否、全て殲滅された状態で発見されていた。
そのおかげか予想より何時間も早くこの階層まで到達してきた俺達は、いくつもの考察を組み立てながらも頭の中で警鐘を鳴らしていた。
「………これは、思っていたより何倍も非常に不味い事態のようだ」
「少なくとも相手………人か魔物か分かりませんけど、S級以上の実力を持っていることだけは分かりますね」
アレクさんの落ち着いた口調に、俺は溜まった感情を吐き出すようにため息をついた。
こんな時にフレイ様がいればだいぶ心強いんだけど………
それにダイキだったら……
俺は慌てて首を振って邪な考えを振り払った。
こうやって人に頼る癖がついているから、俺は何時までたっても成長しないんだ。
あいつと対等になるためは、まず俺自身の力を証明しないと。
暫く休憩を挟み、俺は気持ちを切り替えて立ち上がった。
「…………え?」
それは突然の事だった。
四十九階層から五十階層へ降りるための扉を開け、俺達は奥へと進んでいった。
本来ここは二十階層や三十階層と同じように大型の魔物が潜んでいる特別な階層だからか、俺たちの間には緊張がみなぎっていた。
アレクさんもいるから大丈夫だと思うけど、それでも階層主の脅威は計り知れない。
俺達は慎重に五十階層へ降りていった。
そして、一番奥にたどり着いた俺達は、息を呑んで反射的に後ずさった。
階層主が死んでいた。
力尽きて目に輝きを失い、完全に地に倒れ伏していた。
そして傍らには、小さな魔物が階層主の腹の中に首を突っ込みこの肉体を貪り食っていた。
階層主と比べて、一回り小さいその魔物は、九つの首があった。
魔物じゃない。
「これは………魔獣」
その時、数ある中のひとつの首が、顔を上げて俺を見つめた。
「………あ?」
俺の周辺の人達の人達が一切動かない。
そして突然バラバラに砕け散った。
「皆、伏せろ!」
アレクさんの怒鳴り声に咄嗟に地面に伏せた俺たちのすぐ上を、灼然の炎が一面に広がった。
二千年前の大戦に甚大な被害をもたらし、精霊王によって討ち取られたと記されている、神話時代の魔獣。
九竜・ヒュドラ。
俺達人類がちっぽけに見えてしまうほどの、圧倒的な力。
俺達の攻略隊は瞬く間に崩れ去る。
怪物による蹂躙が始まった。
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