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選挙事務所はワールドワイドの深水に
9 日本氏の身辺調査
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世の中マーケティング調査は大切だ。物を売るわけじゃないが、根本は同じだ。
彼を知り己を知れば百戦殆うからずってな。俺は、ゲームで覚えた孫武の兵法を見習うこととした。己のことはよく知っている。社会的に薄っぺらすぎるから、比較的容易に把握できた。把握すべき能力がないんだから当たり前だ。
その分彼のことは、存分に知らなければならないだろう。彼とは、この国日本のことだ。ひいては、国民のことだ。
相手といっても、色々あるからな。俺は、また掲示板を使って情報を得ることとした。
最近この方法ばっかりだが、今まで家で親父を弄ぶだけのとこからしたら、だいぶ良くなった。コミュニケーションスキルがゼロから一になったのだから、驚くべき進歩だ。何事もゼロから一が一番大事だ。
匿名掲示板というあてにもならないトイレの落書きを、自分のレベルの低さで正当化させた。そして性懲りも無く新しいスレッドを立ち上げた。今回は二本立てだ。
「最近老害に搾取されてムカつくんだが」
「悲報、若者最近超生意気」
この相反する二つだ。昔警察のアニメの後海賊のアニメがやっていたのを思い出す。警官のアニメはのちに終わって、海賊のアニメはまだやっている。世の中ヒールの方が人気が高いのかも知れない。
世は、インターネットの時代だ。少年少女から、後期高齢者までみんな1と0の集合体に夢中になっている。だからこそ俺は、掲示板でリサーチするのだ。
また、手軽なパソコンで手抜くことを正当化した。引きこもりの延長で外に出るのが、怖いわけじゃないと言いたいわけだ。
さて、それぞれの落書き帳はどうなっているか。二つの掲示板をパソコンのスクリーンいっぱいに、横並びにした。書き込みの数は同じくらいか。
それぞれがそれぞれのテリトリーから、石を投げ合う。叩き合う。自分で仕向けて俯瞰から見ている分には面白い。
今は仕切りの中から口撃しあってるだけなので、そこまでの盛り上がりはない。更に、各々の掲示板をヒートアップさせるように書き込んだ。まるでシティとユナイテッドを煽るリヴァプールのカジュアルズメンバーになったような気持ちになる。
サッカーってのは世界共通の男の話題だ。誰だってわかる。おけ毛の生えていない女子向けに翻訳すると、ニコラとポップティーンを同時に可愛くないっていう匿名希望のブーン雑誌記者ってとこか。わかりずらすぎる。
俺は、その二つの例えを、ショートメッセージで送る。送り主は、この間立派な物件「議員宿舎」を紹介してくれた奴だ。彼には二つの掲示板を傍観してもらっている。
「わかりずらいよ。君が何やってるか説明しなくてもみればわかるし。」
世界共通の話題を二つも出したのにこの言い様だ。しかしながら、俺の腹の虫は不思議とおとなしい。きっと、この前の面白いのワードが抑え込んでいるのだろう。
「そろそろつぎの段階へ行っていいかな?」
俺は、奴の不平無視して、計画を遂行させようと提案する。
「いいんじゃないかな。ってかもっとまともなところでやれよな。」
こいつは核心をついてくる。ムカつくヤローだ。
俺は、それぞれの掲示板に対になるように掲示板のアカウントを乗っける。要は仕切りを外してやった。
ネットは足が速い。それぞれがそれぞれのテリトリーへ侵略しはじめた。そしてノーガードで、ペンの暴力をふるい合う。只々、書き込んでいるだけだから、どっちにもダメージなどない。
正直言って、俺はどっちが勝つか、論破するかなど興味はない。どっちの人数が多いかだけだ。
「どうかな?若い方か?」
夜の11時時点で、数も勢いも若者の方がありそうだ。
「そこまで、これが参考になるとは思えないけど。まあそうじゃないかな。」
こいつは、天邪鬼な奴だ。俺が引きこもりだってことをわかってない。もうすぐ引きこもりとしての俺は寿命を迎えるが、まだ引きこもりとして死んでいない。まともな調査会社に頼むとか、自分の足で集めるとかできるわけがないだろうが。
ただ、こいつのいう通り若者の方が違う世代に対するネガティブエネルギーを高く持っていることは明らかだ。老人用に立ち上げた掲示板は、すでにそのほとんどが若者による書き込みにひっくり返っていた。
「選挙は若者ターゲットに進めた方がいいかな。」
俺がそう送信すると、奴は、
「それしかないだろ。相手は誰かわからんけど、同じことやったら負けるよ。」
文字から幻滅したような感じが見受けられる。核心を突いてくるから、困惑するしかない。
「そうだね。」
俺には会話の選択肢がそれしかなくなった。もうこれ以上この掲示板を見ることもないだろう。充分に張り合えるかはわからないが、不思議とポジティブになる。人生をなげうってるやつほど、大きい物事に楽観的になるもんだ。それを通常は現実逃避って言うんだろう。
もう一通やつからショートメッセージが寄越される。俺はこれ以上の軽蔑の眼差しを向けられるのは、ごめんだと思い既読をつけるのを躊躇した。こんな状態にパラノイアまで患ってるんだから、タチが悪い。一度目を離して第三者が見るような感じで心を無にして
一気にメッセージを開いた。
「明日解散が濃厚だってよ。君ってどこの人だっけ。」
心配など要らなかった。疑心暗鬼の賜物だ。自分が傷つく事に用心深くなってしまった。
「愛知の知多。」
住んでる場所はすぐに伝えた。疑心暗鬼とはなんだったのか自分でもわからなくなる。
「じゃあ愛知の8区だね。無理じゃん!相手首相じゃん!」
相手のそれまでの落ち着いてそうな雰囲気をぶち壊すようなメッセージだった。
「本気で出るの?」やつの問いかけに、俺は、イエスのスタンプを送りつけてやった。
これがどんな事なのか、俺にはさっぱりだ。むしろなんか勝てるんじゃないかとまで思えてくる。根拠のない自信というのは、自由に満ち溢れていて良いものだ。
そのスタンプからメッセージは、つかなくなった。
暫くして、そろそろパソコンも電源を落とそうと思っていたが、携帯の通知音が鳴る。やつからのメッセージが届いていた。
「とりあえず選挙の説明会終わったら、家寄って。名古屋の南だから、直ぐだから。」
選挙の説明会に出るのか。この家の外へ出るのか。動悸が俺を襲う。とりあえず事務的に物事を考えることとした。
選挙説明会行ったあとそこに行ければいいんだな。ただの事務連絡だと思えた。しかし何故かその場所の地図を見ると、行ったことがあるような気がした。名古屋の南区には、その日あとで寄ることとした。
彼を知り己を知れば百戦殆うからずってな。俺は、ゲームで覚えた孫武の兵法を見習うこととした。己のことはよく知っている。社会的に薄っぺらすぎるから、比較的容易に把握できた。把握すべき能力がないんだから当たり前だ。
その分彼のことは、存分に知らなければならないだろう。彼とは、この国日本のことだ。ひいては、国民のことだ。
相手といっても、色々あるからな。俺は、また掲示板を使って情報を得ることとした。
最近この方法ばっかりだが、今まで家で親父を弄ぶだけのとこからしたら、だいぶ良くなった。コミュニケーションスキルがゼロから一になったのだから、驚くべき進歩だ。何事もゼロから一が一番大事だ。
匿名掲示板というあてにもならないトイレの落書きを、自分のレベルの低さで正当化させた。そして性懲りも無く新しいスレッドを立ち上げた。今回は二本立てだ。
「最近老害に搾取されてムカつくんだが」
「悲報、若者最近超生意気」
この相反する二つだ。昔警察のアニメの後海賊のアニメがやっていたのを思い出す。警官のアニメはのちに終わって、海賊のアニメはまだやっている。世の中ヒールの方が人気が高いのかも知れない。
世は、インターネットの時代だ。少年少女から、後期高齢者までみんな1と0の集合体に夢中になっている。だからこそ俺は、掲示板でリサーチするのだ。
また、手軽なパソコンで手抜くことを正当化した。引きこもりの延長で外に出るのが、怖いわけじゃないと言いたいわけだ。
さて、それぞれの落書き帳はどうなっているか。二つの掲示板をパソコンのスクリーンいっぱいに、横並びにした。書き込みの数は同じくらいか。
それぞれがそれぞれのテリトリーから、石を投げ合う。叩き合う。自分で仕向けて俯瞰から見ている分には面白い。
今は仕切りの中から口撃しあってるだけなので、そこまでの盛り上がりはない。更に、各々の掲示板をヒートアップさせるように書き込んだ。まるでシティとユナイテッドを煽るリヴァプールのカジュアルズメンバーになったような気持ちになる。
サッカーってのは世界共通の男の話題だ。誰だってわかる。おけ毛の生えていない女子向けに翻訳すると、ニコラとポップティーンを同時に可愛くないっていう匿名希望のブーン雑誌記者ってとこか。わかりずらすぎる。
俺は、その二つの例えを、ショートメッセージで送る。送り主は、この間立派な物件「議員宿舎」を紹介してくれた奴だ。彼には二つの掲示板を傍観してもらっている。
「わかりずらいよ。君が何やってるか説明しなくてもみればわかるし。」
世界共通の話題を二つも出したのにこの言い様だ。しかしながら、俺の腹の虫は不思議とおとなしい。きっと、この前の面白いのワードが抑え込んでいるのだろう。
「そろそろつぎの段階へ行っていいかな?」
俺は、奴の不平無視して、計画を遂行させようと提案する。
「いいんじゃないかな。ってかもっとまともなところでやれよな。」
こいつは核心をついてくる。ムカつくヤローだ。
俺は、それぞれの掲示板に対になるように掲示板のアカウントを乗っける。要は仕切りを外してやった。
ネットは足が速い。それぞれがそれぞれのテリトリーへ侵略しはじめた。そしてノーガードで、ペンの暴力をふるい合う。只々、書き込んでいるだけだから、どっちにもダメージなどない。
正直言って、俺はどっちが勝つか、論破するかなど興味はない。どっちの人数が多いかだけだ。
「どうかな?若い方か?」
夜の11時時点で、数も勢いも若者の方がありそうだ。
「そこまで、これが参考になるとは思えないけど。まあそうじゃないかな。」
こいつは、天邪鬼な奴だ。俺が引きこもりだってことをわかってない。もうすぐ引きこもりとしての俺は寿命を迎えるが、まだ引きこもりとして死んでいない。まともな調査会社に頼むとか、自分の足で集めるとかできるわけがないだろうが。
ただ、こいつのいう通り若者の方が違う世代に対するネガティブエネルギーを高く持っていることは明らかだ。老人用に立ち上げた掲示板は、すでにそのほとんどが若者による書き込みにひっくり返っていた。
「選挙は若者ターゲットに進めた方がいいかな。」
俺がそう送信すると、奴は、
「それしかないだろ。相手は誰かわからんけど、同じことやったら負けるよ。」
文字から幻滅したような感じが見受けられる。核心を突いてくるから、困惑するしかない。
「そうだね。」
俺には会話の選択肢がそれしかなくなった。もうこれ以上この掲示板を見ることもないだろう。充分に張り合えるかはわからないが、不思議とポジティブになる。人生をなげうってるやつほど、大きい物事に楽観的になるもんだ。それを通常は現実逃避って言うんだろう。
もう一通やつからショートメッセージが寄越される。俺はこれ以上の軽蔑の眼差しを向けられるのは、ごめんだと思い既読をつけるのを躊躇した。こんな状態にパラノイアまで患ってるんだから、タチが悪い。一度目を離して第三者が見るような感じで心を無にして
一気にメッセージを開いた。
「明日解散が濃厚だってよ。君ってどこの人だっけ。」
心配など要らなかった。疑心暗鬼の賜物だ。自分が傷つく事に用心深くなってしまった。
「愛知の知多。」
住んでる場所はすぐに伝えた。疑心暗鬼とはなんだったのか自分でもわからなくなる。
「じゃあ愛知の8区だね。無理じゃん!相手首相じゃん!」
相手のそれまでの落ち着いてそうな雰囲気をぶち壊すようなメッセージだった。
「本気で出るの?」やつの問いかけに、俺は、イエスのスタンプを送りつけてやった。
これがどんな事なのか、俺にはさっぱりだ。むしろなんか勝てるんじゃないかとまで思えてくる。根拠のない自信というのは、自由に満ち溢れていて良いものだ。
そのスタンプからメッセージは、つかなくなった。
暫くして、そろそろパソコンも電源を落とそうと思っていたが、携帯の通知音が鳴る。やつからのメッセージが届いていた。
「とりあえず選挙の説明会終わったら、家寄って。名古屋の南だから、直ぐだから。」
選挙の説明会に出るのか。この家の外へ出るのか。動悸が俺を襲う。とりあえず事務的に物事を考えることとした。
選挙説明会行ったあとそこに行ければいいんだな。ただの事務連絡だと思えた。しかし何故かその場所の地図を見ると、行ったことがあるような気がした。名古屋の南区には、その日あとで寄ることとした。
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