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第24章:月の光に、触れられて
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レストランを出ると、外の空気は潮の香りとほんのりとした熱をまとっていた。
夜の海風がドレスの裾を優しく揺らし、髪の毛を頬に触れさせる。
「こっち、少し歩こうか。いい場所があるんだ」
桐谷は自然に歩き出し、悠真も小さくうなずいてついていく。
ゆっくりと、芝生を抜けた先──リゾートの裏手にある小さな遊歩道へ。
そこは、誰もいなかった。
街灯は控えめで、代わりに満月の光がふたりを照らしていた。
ヒールの音が、かすかに石畳に響く。
その隣を、桐谷が歩く。肩の距離がほんの少し近づいたとき──
彼の手が、ふわっと触れた。
繋ぐというより、そっと確かめるような指先だった。
悠真は思わず立ち止まりそうになった。
でも、引きはがさなかった。
逆に、指を少しだけ絡めてみた。
(手、繋いでる……しかも、女の子として)
自分の手がこんなにも小さく、柔らかく見えるなんて。
手をつなぐだけで、胸の奥がじわっと熱くなる。
そして──歩みが止まった。
桐谷が静かに、こちらに向き直る。
悠真も、目を逸らさなかった。
「……綺麗すぎて、我慢できないよ」
その囁きとともに、唇がゆっくりと近づいてくる。
拒む暇も、考える余地もなく、柔らかく唇が重なった。
一瞬、身体がこわばった。
けれど、それは冷たいものではなかった。
どこか、ずっと奥で望んでいたような、あたたかさだった。
(女の子として……キス、されてる)
頬にふれる桐谷の指先が優しくて、そっと目を閉じる。
誰にも見られていない夜の中で、唇は何度か静かに重なり、
ようやく離れると、彼の目が穏やかに笑っていた。
「……ありがとう。手、離さないよ」
悠真は、もう何も言えなかった。
ただ、手のひらのぬくもりを強く握り返すだけだった。
夜の海風がドレスの裾を優しく揺らし、髪の毛を頬に触れさせる。
「こっち、少し歩こうか。いい場所があるんだ」
桐谷は自然に歩き出し、悠真も小さくうなずいてついていく。
ゆっくりと、芝生を抜けた先──リゾートの裏手にある小さな遊歩道へ。
そこは、誰もいなかった。
街灯は控えめで、代わりに満月の光がふたりを照らしていた。
ヒールの音が、かすかに石畳に響く。
その隣を、桐谷が歩く。肩の距離がほんの少し近づいたとき──
彼の手が、ふわっと触れた。
繋ぐというより、そっと確かめるような指先だった。
悠真は思わず立ち止まりそうになった。
でも、引きはがさなかった。
逆に、指を少しだけ絡めてみた。
(手、繋いでる……しかも、女の子として)
自分の手がこんなにも小さく、柔らかく見えるなんて。
手をつなぐだけで、胸の奥がじわっと熱くなる。
そして──歩みが止まった。
桐谷が静かに、こちらに向き直る。
悠真も、目を逸らさなかった。
「……綺麗すぎて、我慢できないよ」
その囁きとともに、唇がゆっくりと近づいてくる。
拒む暇も、考える余地もなく、柔らかく唇が重なった。
一瞬、身体がこわばった。
けれど、それは冷たいものではなかった。
どこか、ずっと奥で望んでいたような、あたたかさだった。
(女の子として……キス、されてる)
頬にふれる桐谷の指先が優しくて、そっと目を閉じる。
誰にも見られていない夜の中で、唇は何度か静かに重なり、
ようやく離れると、彼の目が穏やかに笑っていた。
「……ありがとう。手、離さないよ」
悠真は、もう何も言えなかった。
ただ、手のひらのぬくもりを強く握り返すだけだった。
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