ナース服の中の僕

なな

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第34章:締めつけられた胸の奥で、とろけていく

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レストランを出て、ホテルのロビーを抜けると、
最上階のラウンジに併設された小さなテラスへ案内された。

夜風は柔らかく、スカートのすそを少しだけ揺らした。
照明は控えめで、周囲にはほとんど人がいなかった。

「……苦しくない? ドレスも、ヒールも」

桐谷の問いかけに、私は小さく首を振った。

「ううん、大丈夫……でも……歩き方、ちょっと変じゃないかなって……」

「可愛いよ。……がんばってるのが、ちゃんと伝わってくる」

その言葉だけで、ふわりと胸の奥が浮かび上がるような感覚がした。

ヒールのせいで足の裏がじんわり痛んでいたけれど、
コルセットで背筋を伸ばされた身体は、なぜか誇らしかった。

(私は、女の子じゃない。だけど──)

隣に並ぶ彼は、まるで“本当に女性”として私を扱ってくれていた。

「……ありがとう、今日……すごく、嬉しかった」

つぶやくと、桐谷がふっと微笑み、
私の手を取って、そっと指を絡めてきた。

そして、私の顔を、ゆっくりと覗き込むように傾けた。

「……キス、してもいい?」

その問いに、私は言葉を返せず──
けれど、視線だけがそっと彼を受け入れていた。

次の瞬間、唇が重なった。

柔らかく、でも、はっきりと。
コルセットに包まれた胸元が、きゅっと締めつけられるように熱くなった。

最初のキスが離れ、息が交わる距離で、彼の手がそっと頬を撫でる。

「……もう一回、いい?」

こくんと頷くと、
次のキスは、もっと深くて──
唇の奥まで、彼の熱が流れ込んでくるようだった。

舌先が触れあい、呼吸が重なり、
身体のすみずみが“女の子”であることを思い知らされるような、甘くて苦しい時間。

(私、ほんとうに……女の子になっていく……)

ヒールの高さに少しよろけると、彼がしっかりと抱きしめて支えてくれた。

そのまま、肩に額を預けた。

夜景が揺れていた。
けれど、それよりもずっと強く──
私の心と身体が、揺れていた。
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