ナース服の中の僕

なな

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第43章:触れてしまえば(梨乃視点)

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「ねぇ、それ、後ろのホック……手伝ってもいい?」

黒いレースのランジェリーに、彼がそっと手を伸ばしていた。
細い肩にかかるブラストラップ。ふくらんだ胸元は、私のものよりも小さいけれど、
その奥にある“隠しているもの”ごと、まるごと美しかった。

「……うん。お願い」

背中に回した手は、まだ少し震えていた。
私はゆっくり近づいて、そのホックを外す。

「ふふ、慣れてきたね。女の子の下着、もう自然に身につけてる」

「だ、だって……そうしないと“浮いちゃう”から」

あの言葉が、少し胸に刺さった。

──“浮いちゃう”から、ブラジャーを選んで、
──“異物”に見えないように、ヒールを履いて。

「……私はね、あなたが、そうやって一生懸命“女の子”になろうとしてるの、すごく可愛いって思うよ」

「……り、梨乃さん……」

気がつけば、彼の顔がとても近くて、
小さな吐息と一緒に、目をそらそうとする仕草が、胸に甘く突き刺さる。

「ねぇ……ちょっと、だけ。こっち、来て」

私は自分のベッドに腰かけて、優しく手を引いた。

「……こうして、向かい合って座って。目、閉じて」

「……う、うん……」

そっと閉じられたまつげに、私は軽く唇を重ねた。
あくまで“軽く”──だったはずなのに、次の瞬間には、
柔らかく開かれた唇が、私の下唇を掬うように重なった。

「……梨乃さん……」

「……ごめんね。もう、ちょっとだけ……」

そう言って抱き寄せたとき、彼の身体はびくりと小さく震えた。
ランジェリー越しの肌はあたたかくて、甘くて、
ふたりの胸のあいだで、どちらが女の子かなんて、もう意味のないことのようだった。

「……もし、イヤだったら止めるから」

私が囁くと、彼はかすかに首を振る。

「……いやじゃ、ない……梨乃さんなら、いい……」

その言葉を聞いたとき、私はもう、理性なんて残っていなかった。
優しく押し倒して、髪を梳き、肩紐をそっと落として、
小さな吐息と、初めて触れる柔らかさに、心ごとほどけていく。
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