44 / 47
第44章:やさしい夜の中で(梨乃視点)
しおりを挟む
ランジェリー姿の彼が、照れくさそうに私の隣で毛布をかける仕草に、胸がきゅっとした。
「大丈夫? 寒くない?」
「うん……ちょっと緊張してるだけ……」
ぽつりとこぼした声に、私は笑いながら彼の肩をそっと撫でた。
「ね、そんなに緊張しないで。無理しなくていいから。今夜はただ、こうして一緒にいたいだけ」
そう言って、彼の肩に頭を預けた。
一瞬、身体がこわばった気がしたけれど、すぐにふわりと緩む。
部屋は静かで、遠くで冷蔵庫の音が小さく響いている。
それがやけに心地よくて、私たちの距離を、そっと包み込んでくれる。
「……梨乃さんって、やっぱり大人だね」
「そう? でも、こうやって隣でドキドキしてるのは、一緒だよ」
笑いながら答えると、彼の視線がすっと私の目元を見つめてくる。
そのまっすぐな瞳に、思わず息を呑んだ。
「ねえ……さっきの、キス……もう一度しても、いい?」
その言葉は、少しだけ震えていて、でも確かに真っ直ぐだった。
「……もちろん」
ゆっくりと顔を寄せる。
睫毛が触れそうな距離で、そっと目を閉じて──
今度は、迷わずに重ねた。
キスはやさしくて、温かくて、
さっきまで“女の子として”見られることに不安がっていた彼の、心の深いところに触れていく気がした。
唇が離れたあとも、彼はしばらく目を閉じたまま、微かに笑っていた。
「……キス、こんなに落ち着くものなんだね」
「ふふ、ね。私も思った」
私は毛布を少し引き上げて、彼の肩まで包んでやった。
「今日はもう、無理しないで。このまま寝よ?」
「うん……梨乃さん、ありがとう」
まぶたの向こうのまっすぐな気持ちが、そっと私の胸を満たしていく。
“男の子”でも、“女の子”でもない。
たった今ここにいる、彼自身を、ただ愛おしいと思えた夜だった。
「大丈夫? 寒くない?」
「うん……ちょっと緊張してるだけ……」
ぽつりとこぼした声に、私は笑いながら彼の肩をそっと撫でた。
「ね、そんなに緊張しないで。無理しなくていいから。今夜はただ、こうして一緒にいたいだけ」
そう言って、彼の肩に頭を預けた。
一瞬、身体がこわばった気がしたけれど、すぐにふわりと緩む。
部屋は静かで、遠くで冷蔵庫の音が小さく響いている。
それがやけに心地よくて、私たちの距離を、そっと包み込んでくれる。
「……梨乃さんって、やっぱり大人だね」
「そう? でも、こうやって隣でドキドキしてるのは、一緒だよ」
笑いながら答えると、彼の視線がすっと私の目元を見つめてくる。
そのまっすぐな瞳に、思わず息を呑んだ。
「ねえ……さっきの、キス……もう一度しても、いい?」
その言葉は、少しだけ震えていて、でも確かに真っ直ぐだった。
「……もちろん」
ゆっくりと顔を寄せる。
睫毛が触れそうな距離で、そっと目を閉じて──
今度は、迷わずに重ねた。
キスはやさしくて、温かくて、
さっきまで“女の子として”見られることに不安がっていた彼の、心の深いところに触れていく気がした。
唇が離れたあとも、彼はしばらく目を閉じたまま、微かに笑っていた。
「……キス、こんなに落ち着くものなんだね」
「ふふ、ね。私も思った」
私は毛布を少し引き上げて、彼の肩まで包んでやった。
「今日はもう、無理しないで。このまま寝よ?」
「うん……梨乃さん、ありがとう」
まぶたの向こうのまっすぐな気持ちが、そっと私の胸を満たしていく。
“男の子”でも、“女の子”でもない。
たった今ここにいる、彼自身を、ただ愛おしいと思えた夜だった。
0
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる