ナース服の中の僕

なな

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第44章:やさしい夜の中で(梨乃視点)

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ランジェリー姿の彼が、照れくさそうに私の隣で毛布をかける仕草に、胸がきゅっとした。

「大丈夫? 寒くない?」

「うん……ちょっと緊張してるだけ……」

ぽつりとこぼした声に、私は笑いながら彼の肩をそっと撫でた。

「ね、そんなに緊張しないで。無理しなくていいから。今夜はただ、こうして一緒にいたいだけ」

そう言って、彼の肩に頭を預けた。
一瞬、身体がこわばった気がしたけれど、すぐにふわりと緩む。

部屋は静かで、遠くで冷蔵庫の音が小さく響いている。
それがやけに心地よくて、私たちの距離を、そっと包み込んでくれる。

「……梨乃さんって、やっぱり大人だね」

「そう? でも、こうやって隣でドキドキしてるのは、一緒だよ」

笑いながら答えると、彼の視線がすっと私の目元を見つめてくる。
そのまっすぐな瞳に、思わず息を呑んだ。

「ねえ……さっきの、キス……もう一度しても、いい?」

その言葉は、少しだけ震えていて、でも確かに真っ直ぐだった。

「……もちろん」

ゆっくりと顔を寄せる。
睫毛が触れそうな距離で、そっと目を閉じて──
今度は、迷わずに重ねた。

キスはやさしくて、温かくて、
さっきまで“女の子として”見られることに不安がっていた彼の、心の深いところに触れていく気がした。

唇が離れたあとも、彼はしばらく目を閉じたまま、微かに笑っていた。

「……キス、こんなに落ち着くものなんだね」

「ふふ、ね。私も思った」

私は毛布を少し引き上げて、彼の肩まで包んでやった。

「今日はもう、無理しないで。このまま寝よ?」

「うん……梨乃さん、ありがとう」

まぶたの向こうのまっすぐな気持ちが、そっと私の胸を満たしていく。

“男の子”でも、“女の子”でもない。
たった今ここにいる、彼自身を、ただ愛おしいと思えた夜だった。
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