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第6部:彼女たちの秘密の装い
第1話:― 恋ではない、けれど確かな“重ね着”の関係 ―
「ねえ、真帆ちゃん。……なお、さ」
夜、少し遅い時間。
真帆の部屋にふたりきり。
カモミールティーの香りがふわりと漂うなか、
美月はぽつりと切り出した。
「……あの子さ、たぶん“鍵”つけてたよね。
この前のセレモニーのとき……すごく歩き方、変だった」
真帆は驚かなかった。
ただ、静かに、カップをソーサーに戻した。
「うん。あれはね、たぶん……っていうか、確信あるよ。
あの子、コルセットと一緒に、ちゃんと“閉じられてた”」
美月は息を止めた。
どこかでわかっていたこと。
でも、あえて口にするのは初めてだった。
「私ね、好きだったの。なおちゃんのこと」
「知ってたよ」
「でも……いまは、真帆ちゃんがいるから、
前みたいな“好き”とは、ちょっと違う。
でも、今でも時々、なおの“装い”の意味が気になっちゃうんだ」
沈黙。
真帆が笑う。
「ねぇ、美月。
じゃあ、着てみる? 一度だけ。
“彼女が着てたようなもの”、私いくつか持ってるんだ」
「……えっ?」
「試すだけでもいい。
なおがどうしてあそこまで“締めてた”のか。
少しわかるかもしれないよ」
美月は、何かに導かれるように、こくりと頷いた。
真帆がクロゼットを開ける。
そこには繊細なレースの下着、
柔らかくて弾力のあるチョーカー付きのボディスーツ。
脇にあるのは――
金具のついた、黒のコルセットと、
太ももを繋ぐチェーン状の装飾ベルト。
「……ほんとに着るの?」
「うん。真帆ちゃんが、着けてくれるなら」
その夜、部屋の灯りは少しだけ落とされた。
美月は、ナイトキャミソールを脱ぎ、
そっと、真帆の手に身体を預ける。
「締めるよ……少しずつね」
「うん」
シュルシュルと滑るコルセットの紐。
腰を包み込むような布の感触が、
じわじわと締まりながら美月の呼吸を整えていく。
「……どう? 苦しい?」
「ちょっとだけ……でも、
なんだろう……背筋が伸びる。
……気持ちが、整理されるみたい」
「なおちゃんも、きっとこれで“自分”を保ってたんだよ。
誰にも見せない、でも脱がない――そういう場所」
真帆の手が、太ももにレースを巻きつける。
軽く触れ合う金具。
歩けなくなるわけじゃない。
でも、それだけで、“守られている感覚”が強くなる。
最後に、チョーカーの留め具を首にカチリとつけられる。
「これ、鍵付き」
「……?」
「私が預かっておくよ。
あんまり意味ないけど、
その方が、ちょっと気持ちが“重く”なるでしょ?」
美月は鏡を見た。
締められたウエスト。
レースのライン。
繋がれた太もも。
首には――鍵。
「……綺麗、かな?」
「うん。綺麗だよ。
今の美月は、“美しくて秘密を持ってる女の子”」
それは、恋とは違う。
でも、“誰かと共有する秘密”が、
ふたりの距離を、もっと近くした。
私たちは、なおとは別のかたちで、
ちゃんと“ふたりの秘密”を身につけはじめていた。
夜、少し遅い時間。
真帆の部屋にふたりきり。
カモミールティーの香りがふわりと漂うなか、
美月はぽつりと切り出した。
「……あの子さ、たぶん“鍵”つけてたよね。
この前のセレモニーのとき……すごく歩き方、変だった」
真帆は驚かなかった。
ただ、静かに、カップをソーサーに戻した。
「うん。あれはね、たぶん……っていうか、確信あるよ。
あの子、コルセットと一緒に、ちゃんと“閉じられてた”」
美月は息を止めた。
どこかでわかっていたこと。
でも、あえて口にするのは初めてだった。
「私ね、好きだったの。なおちゃんのこと」
「知ってたよ」
「でも……いまは、真帆ちゃんがいるから、
前みたいな“好き”とは、ちょっと違う。
でも、今でも時々、なおの“装い”の意味が気になっちゃうんだ」
沈黙。
真帆が笑う。
「ねぇ、美月。
じゃあ、着てみる? 一度だけ。
“彼女が着てたようなもの”、私いくつか持ってるんだ」
「……えっ?」
「試すだけでもいい。
なおがどうしてあそこまで“締めてた”のか。
少しわかるかもしれないよ」
美月は、何かに導かれるように、こくりと頷いた。
真帆がクロゼットを開ける。
そこには繊細なレースの下着、
柔らかくて弾力のあるチョーカー付きのボディスーツ。
脇にあるのは――
金具のついた、黒のコルセットと、
太ももを繋ぐチェーン状の装飾ベルト。
「……ほんとに着るの?」
「うん。真帆ちゃんが、着けてくれるなら」
その夜、部屋の灯りは少しだけ落とされた。
美月は、ナイトキャミソールを脱ぎ、
そっと、真帆の手に身体を預ける。
「締めるよ……少しずつね」
「うん」
シュルシュルと滑るコルセットの紐。
腰を包み込むような布の感触が、
じわじわと締まりながら美月の呼吸を整えていく。
「……どう? 苦しい?」
「ちょっとだけ……でも、
なんだろう……背筋が伸びる。
……気持ちが、整理されるみたい」
「なおちゃんも、きっとこれで“自分”を保ってたんだよ。
誰にも見せない、でも脱がない――そういう場所」
真帆の手が、太ももにレースを巻きつける。
軽く触れ合う金具。
歩けなくなるわけじゃない。
でも、それだけで、“守られている感覚”が強くなる。
最後に、チョーカーの留め具を首にカチリとつけられる。
「これ、鍵付き」
「……?」
「私が預かっておくよ。
あんまり意味ないけど、
その方が、ちょっと気持ちが“重く”なるでしょ?」
美月は鏡を見た。
締められたウエスト。
レースのライン。
繋がれた太もも。
首には――鍵。
「……綺麗、かな?」
「うん。綺麗だよ。
今の美月は、“美しくて秘密を持ってる女の子”」
それは、恋とは違う。
でも、“誰かと共有する秘密”が、
ふたりの距離を、もっと近くした。
私たちは、なおとは別のかたちで、
ちゃんと“ふたりの秘密”を身につけはじめていた。
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