受付バイトは女装が必須?

なな

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第7部:新しい春に、もう一人の“僕”

第6話:その気持ち、わたしも昔そうだった ― “反応する身体”と、“受け入れられる装備” ―

バイト終わり。
受付制服のまま、控え室に戻った柊は、鏡の前でストッキングを脱ぎながら、なぜかずっと黙っていた。

その背中の沈黙に、なおはすぐに気づいた。

(なにか、悩んでる)

コートを羽織りながらそっと声をかける。

「柊くん、疲れた?」

「……いえ。あの、なおさん……ちょっと、お話……してもいいですか」

控え室のすみにあるソファへ移動し、制服の上着を脱いだ柊が、
手を膝の上でぎゅっと握りしめた。

「……ぼく、着替えてるとき、どうしても……反応してしまって……」
「……うん」

「ストッキングやスカート、それから、あのランジェリー……
なんか、自分じゃ抑えきれなくて……」

柊の頬が真っ赤に染まっていた。
でも――それは“後ろめたさ”ではなく、“恥じらい”の熱だった。

なおは、静かに微笑んだ。

「わかるよ、その気持ち。
わたしも、昔はそうだった」

「……え?」

「スカートの感触、ストッキングの締めつけ。
誰かに“整えられる”っていう感覚。
それだけで、体がびっくりして、反応しちゃうんだよね。
でも、それはぜんぜんおかしくないよ」

柊が、うつむいたまま、小さく頷いた。

その指が、まだ微かに震えていたのを、なおは見逃さなかった。

「……ねえ、柊くん。
少し変なこと言っても、引かないで聞いてくれる?」

「……はい」

なおは立ち上がって、コートの前を少しだけ開いた。
ジャケットの下、シャツを捲った先――
ウエストに沿うように、しっかりと編み上げられたコルセットの縁が覗いていた。

その下に、うっすらとラインを浮かせていたのは――
金属の、沈黙した存在。

「わたし、これ。つけてるの。
いわゆる“貞操具”って呼ばれてるやつ」

柊は一瞬、目を見開いた。

「最初は、ただ“抑えるため”に使ってた。
反応が怖かったから。
でもね、あると不思議と……心も落ち着くの。
“いま、自分の身体はちゃんと包まれてる”って感覚
フラットタイプというのだと反応自体が抑えられる感じなの」

柊は、息をひとつのみ込むようにして、
そっと目を伏せた。

「……それ、ぼくも……つけてみたいかも、って思ってしまいました」

「うん。そう思えるって、すごく自然なことだよ。
ただし、無理にじゃなくてね。
これは、“誰かに着せられる”んじゃなくて、“自分が選ぶもの”だから」

スカートを穿くことも、下着を整えることも。
そして、貞操具を着けることも。
それは“女の子になる”ためじゃない。

“いまの自分”を整えるための、小さな秘密。

「今度、見せてくれる……というか、教えてもらっても、いいですか……?」
柊の声は震えていたけれど、その目はまっすぐだった。

なおは頷いた。

「うん、もちろん。
きみが“ちゃんと望めたら”、ね」


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