108 / 206
第7部:新しい春に、もう一人の“僕”
第7話:鍵がかかるって、こんなに落ち着くなんて ― はじめての装備は、恥ずかしくて優しかった ―
その日は、バイトの前に“ちょっとだけ早く”来るように言われていた。
受付控え室のすみに設けられた仕切りの中、
なおと二人、スーツに着替える前の“秘密の時間”が始まろうとしていた。
「これが、最初に試してみるのにちょうどいいタイプかな」
なおが差し出したのは、
つやのあるプラスチックのような外装と、内側に柔らかな当たりのある小型の貞操具だった。
金属製よりも軽くて、装着時の違和感が少ない。
ただし――鍵は本物。
小さな南京錠が、カチリと音を立てる仕様だった。
柊は息を呑んだ。
「……これ、ほんとに……?」
「うん。大丈夫。無理そうだったら、いつでも止められるからね」
なおの声は穏やかだった。
その手が、そっとタオルを差し出してくれる。
「ここで着けると落ち着かないだろうから、一度トイレで着けてみて。
終わったら、鍵だけ戻してくれたらいいよ。
開けるのは――わたし、しかできないようにしてあるから」
柊は装備を受け取り、手の中でまじまじと見つめた。
曲線、留め具、小さな鍵穴。
“見えないところで、確かに触れられる”ような存在感だった。
(ほんとに、こんなの……)
けれど、心のどこかで――
“してみたい”という感覚が、すでに形になっていた。
十数分後。
柊は再び控え室へ戻ってきた。
シャツの下、下着の奥――
今までにない、軽い圧迫と、内側から包まれるような感触があった。
「どう?」
「……なんか、変な感じ、ですけど……」
柊は言葉を選びながら、なおの前で正直に続けた。
「……思ったより、落ち着く、かも、です」
なおは微笑んだ。
「それ、わたしも最初に思ったよ。
“抑えられる”っていうより、“守られてる”って感じじゃなかった?」
柊は頷いた。
鍵の音が、頭の奥に残っている。
それは“閉じ込められた”感覚ではなく――
“自分で背負う秘密が、ひとつ増えた”安心感だった。
「なんか、歩いてても、気にならなくて……
というか、むしろちゃんと歩けてる気がします」
「それ、大事な感覚。
身体の形が落ち着くと、心もちゃんと整うの」
装備って、誰かに強制されるものじゃない。
でも、自分で選んで装うとき、それは“支え”になる。
柊はそれを、ちゃんと感じとってくれた。
「次のシフト、ちょっと楽しみになってきた、かも……」
「うん。そうやって少しずつ、自分の“好きな形”を見つけていこうね」
なおはそう言って、鍵を小さなポーチにしまった。
その鍵が、柊の“まだ知らない身体の奥”へ、そっと触れている気がした。
受付控え室のすみに設けられた仕切りの中、
なおと二人、スーツに着替える前の“秘密の時間”が始まろうとしていた。
「これが、最初に試してみるのにちょうどいいタイプかな」
なおが差し出したのは、
つやのあるプラスチックのような外装と、内側に柔らかな当たりのある小型の貞操具だった。
金属製よりも軽くて、装着時の違和感が少ない。
ただし――鍵は本物。
小さな南京錠が、カチリと音を立てる仕様だった。
柊は息を呑んだ。
「……これ、ほんとに……?」
「うん。大丈夫。無理そうだったら、いつでも止められるからね」
なおの声は穏やかだった。
その手が、そっとタオルを差し出してくれる。
「ここで着けると落ち着かないだろうから、一度トイレで着けてみて。
終わったら、鍵だけ戻してくれたらいいよ。
開けるのは――わたし、しかできないようにしてあるから」
柊は装備を受け取り、手の中でまじまじと見つめた。
曲線、留め具、小さな鍵穴。
“見えないところで、確かに触れられる”ような存在感だった。
(ほんとに、こんなの……)
けれど、心のどこかで――
“してみたい”という感覚が、すでに形になっていた。
十数分後。
柊は再び控え室へ戻ってきた。
シャツの下、下着の奥――
今までにない、軽い圧迫と、内側から包まれるような感触があった。
「どう?」
「……なんか、変な感じ、ですけど……」
柊は言葉を選びながら、なおの前で正直に続けた。
「……思ったより、落ち着く、かも、です」
なおは微笑んだ。
「それ、わたしも最初に思ったよ。
“抑えられる”っていうより、“守られてる”って感じじゃなかった?」
柊は頷いた。
鍵の音が、頭の奥に残っている。
それは“閉じ込められた”感覚ではなく――
“自分で背負う秘密が、ひとつ増えた”安心感だった。
「なんか、歩いてても、気にならなくて……
というか、むしろちゃんと歩けてる気がします」
「それ、大事な感覚。
身体の形が落ち着くと、心もちゃんと整うの」
装備って、誰かに強制されるものじゃない。
でも、自分で選んで装うとき、それは“支え”になる。
柊はそれを、ちゃんと感じとってくれた。
「次のシフト、ちょっと楽しみになってきた、かも……」
「うん。そうやって少しずつ、自分の“好きな形”を見つけていこうね」
なおはそう言って、鍵を小さなポーチにしまった。
その鍵が、柊の“まだ知らない身体の奥”へ、そっと触れている気がした。
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。