受付バイトは女装が必須?

なな

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第7部:新しい春に、もう一人の“僕”

第7話:鍵がかかるって、こんなに落ち着くなんて ― はじめての装備は、恥ずかしくて優しかった ―

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その日は、バイトの前に“ちょっとだけ早く”来るように言われていた。
受付控え室のすみに設けられた仕切りの中、
なおと二人、スーツに着替える前の“秘密の時間”が始まろうとしていた。

「これが、最初に試してみるのにちょうどいいタイプかな」

なおが差し出したのは、
つやのあるプラスチックのような外装と、内側に柔らかな当たりのある小型の貞操具だった。

金属製よりも軽くて、装着時の違和感が少ない。
ただし――鍵は本物。
小さな南京錠が、カチリと音を立てる仕様だった。

柊は息を呑んだ。

「……これ、ほんとに……?」

「うん。大丈夫。無理そうだったら、いつでも止められるからね」

なおの声は穏やかだった。
その手が、そっとタオルを差し出してくれる。

「ここで着けると落ち着かないだろうから、一度トイレで着けてみて。
終わったら、鍵だけ戻してくれたらいいよ。
開けるのは――わたし、しかできないようにしてあるから」

柊は装備を受け取り、手の中でまじまじと見つめた。
曲線、留め具、小さな鍵穴。
“見えないところで、確かに触れられる”ような存在感だった。

(ほんとに、こんなの……)

けれど、心のどこかで――
“してみたい”という感覚が、すでに形になっていた。



十数分後。
柊は再び控え室へ戻ってきた。

シャツの下、下着の奥――
今までにない、軽い圧迫と、内側から包まれるような感触があった。

「どう?」
「……なんか、変な感じ、ですけど……」

柊は言葉を選びながら、なおの前で正直に続けた。

「……思ったより、落ち着く、かも、です」

なおは微笑んだ。

「それ、わたしも最初に思ったよ。
“抑えられる”っていうより、“守られてる”って感じじゃなかった?」

柊は頷いた。
鍵の音が、頭の奥に残っている。
それは“閉じ込められた”感覚ではなく――
“自分で背負う秘密が、ひとつ増えた”安心感だった。

「なんか、歩いてても、気にならなくて……
というか、むしろちゃんと歩けてる気がします」

「それ、大事な感覚。
身体の形が落ち着くと、心もちゃんと整うの」

装備って、誰かに強制されるものじゃない。
でも、自分で選んで装うとき、それは“支え”になる。

柊はそれを、ちゃんと感じとってくれた。

「次のシフト、ちょっと楽しみになってきた、かも……」
「うん。そうやって少しずつ、自分の“好きな形”を見つけていこうね」

なおはそう言って、鍵を小さなポーチにしまった。

その鍵が、柊の“まだ知らない身体の奥”へ、そっと触れている気がした。

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