109 / 206
第7部:新しい春に、もう一人の“僕”
第8話:視線の先で、秘密が揺れる ― 制服の奥に鍵がある。誰にも気づかれずに ―
スーツのボタンを一つずつ留めるたび、
その内側にある**“何か”**が静かに動いた気がした。
(ああ、着てる。着てるんだ……)
ブラウスの下、コルセットの下、
誰にも見られない、誰にも触れられないところに、
鍵付きの装備が静かに収まっている。
控え室の鏡に映る自分は、
メイクを終えてウィッグを載せ、完璧な“受付嬢”の姿をしていた。
でも――その誰もが知らない場所に、“僕の秘密”があった。
「柊くん、準備いい?」
背後から声をかけてきたのは、なおだった。
ハーフアップに結い上げた黒髪が、今日も静かに揺れている。
さりげなく巻かれたスカーフ、ジャケットのライン、
そして――柊にはわかる。
その姿の下にも、同じ“装備の気配”があることを。
「……はい。大丈夫です」
声が少しだけ高くなるのは、スカートが膝に当たる感覚のせいだろうか。
それとも――装備が、わずかに肌の内側で存在を主張しているからだろうか。
受付デスクに立ち、来場者を迎える。
「いらっしゃいませ」
「こちらへどうぞ」
声は自然に出せるようになってきた。
ただ、ふと目が合ったとき、
(この人、わたしのこと“女の子”って思ってる)
そう思うだけで、体温がじわっと上がるのがわかる。
視線がスカートの裾に落ちたとき、
その下に“鍵付きの装備”があることを意識するだけで、
太ももがきゅっとなる。
(知られてない。気づかれてない。でも――たしかに“着けている”)
なおが隣で名簿を確認しているとき、
柊はふと、そっとその横顔を見つめた。
(この人と、同じものをつけてるんだ)
(この人にだけ、僕の“秘密”は見えてるんだ)
それが、奇妙な安心感だった。
“見透かされている”のに、怖くない。
むしろ、それがうれしいと思ってしまった自分に、
柊は気づいてしまう。
休憩時間。
一瞬、受付デスクの陰でなおと二人きりになったとき、
柊は小さな声で言った。
「……なんか、すごく変なんです」
「うん?」
「誰にも見られてないのに、
全部、見られてるみたいで……落ち着かない、のに、気持ちよくて……」
なおは、優しく微笑んだ。
「それ、“自分を装っている”って感覚だよ。
“女の子みたいに”じゃなくて、“誰にも見せたくない自分のままでいる”ってこと」
「……なおさんって、ずっとこうだったんですか?」
「ううん。
でも、こうなってよかったって、思えるようになったのは――
着けてから、だったかも」
スカートの奥に鍵を抱えているなんて、誰も思わない。
でも、自分だけが知ってる。
その“緊張”と“秘密”が、
“女の子のふり”じゃなくて、“僕だけの装い”になる。
「柊くん、すごく綺麗に立ててたよ」
「……ほんとですか?」
「うん。ちゃんと“見られる姿”になってた。
……あ、でもちょっと、歩くとき内腿に力入りすぎてたかも」
「っ、あ、それは……」
なおはふふっと笑う。
その笑顔に、“わたしも最初そうだったから”がちゃんと含まれていた。
その内側にある**“何か”**が静かに動いた気がした。
(ああ、着てる。着てるんだ……)
ブラウスの下、コルセットの下、
誰にも見られない、誰にも触れられないところに、
鍵付きの装備が静かに収まっている。
控え室の鏡に映る自分は、
メイクを終えてウィッグを載せ、完璧な“受付嬢”の姿をしていた。
でも――その誰もが知らない場所に、“僕の秘密”があった。
「柊くん、準備いい?」
背後から声をかけてきたのは、なおだった。
ハーフアップに結い上げた黒髪が、今日も静かに揺れている。
さりげなく巻かれたスカーフ、ジャケットのライン、
そして――柊にはわかる。
その姿の下にも、同じ“装備の気配”があることを。
「……はい。大丈夫です」
声が少しだけ高くなるのは、スカートが膝に当たる感覚のせいだろうか。
それとも――装備が、わずかに肌の内側で存在を主張しているからだろうか。
受付デスクに立ち、来場者を迎える。
「いらっしゃいませ」
「こちらへどうぞ」
声は自然に出せるようになってきた。
ただ、ふと目が合ったとき、
(この人、わたしのこと“女の子”って思ってる)
そう思うだけで、体温がじわっと上がるのがわかる。
視線がスカートの裾に落ちたとき、
その下に“鍵付きの装備”があることを意識するだけで、
太ももがきゅっとなる。
(知られてない。気づかれてない。でも――たしかに“着けている”)
なおが隣で名簿を確認しているとき、
柊はふと、そっとその横顔を見つめた。
(この人と、同じものをつけてるんだ)
(この人にだけ、僕の“秘密”は見えてるんだ)
それが、奇妙な安心感だった。
“見透かされている”のに、怖くない。
むしろ、それがうれしいと思ってしまった自分に、
柊は気づいてしまう。
休憩時間。
一瞬、受付デスクの陰でなおと二人きりになったとき、
柊は小さな声で言った。
「……なんか、すごく変なんです」
「うん?」
「誰にも見られてないのに、
全部、見られてるみたいで……落ち着かない、のに、気持ちよくて……」
なおは、優しく微笑んだ。
「それ、“自分を装っている”って感覚だよ。
“女の子みたいに”じゃなくて、“誰にも見せたくない自分のままでいる”ってこと」
「……なおさんって、ずっとこうだったんですか?」
「ううん。
でも、こうなってよかったって、思えるようになったのは――
着けてから、だったかも」
スカートの奥に鍵を抱えているなんて、誰も思わない。
でも、自分だけが知ってる。
その“緊張”と“秘密”が、
“女の子のふり”じゃなくて、“僕だけの装い”になる。
「柊くん、すごく綺麗に立ててたよ」
「……ほんとですか?」
「うん。ちゃんと“見られる姿”になってた。
……あ、でもちょっと、歩くとき内腿に力入りすぎてたかも」
「っ、あ、それは……」
なおはふふっと笑う。
その笑顔に、“わたしも最初そうだったから”がちゃんと含まれていた。
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。