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第8部:ふたりの鍵
第六章:揺れる胸、揺れる視線
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鏡の前。控え室のいつもの角。
シャツの前を外し、柊は上半身を露わにしていた。
下着はつけていない。コルセットもまだ。肌がそのまま晒されていることに、落ち着かなさと、期待が混ざる。
「今日はね……ヌーブラ、使ってみようか。二枚で、バニーのときと同じ作り方」
そう言って、なおが取り出したのは、肌色の丸いヌーブラのペアが二組。
触れるとぷにゅ、と柔らかく、内側には接着面のジェルが光っていた。
「ほら、片方ずつ貼るよ。ちょっと冷たいかも……」
ぴた。
柊の右胸に、まず一枚目が貼りつく。
なおの手がその上から優しく押さえ、形を整える。
「次、左ね。……あ、ちょっと肩の位置ずれてるから、こっちの方に貼るね」
そう言って、左胸にも一枚が貼られた。
──これだけでも、なんだかもう変な感じだ。
だって、自分の胸に“柔らかい何か”がある。それが揺れる。押さえられる。触れられる。
そして、二枚目が重ねられる。
「うん、これで厚みが出て、谷間ができるよ」
なおが両手で柊の胸を包みこむようにして寄せ、
ヌーブラを中央で軽く押さえると──
「……ほら、見てごらん?」
鏡の中、そこにいたのは胸の膨らみを持った柊だった。
コルセットをまだ着けていない状態でも、ふくらみは明らかに女の子のそれだった。
「え……あ……これ……」
「似合ってる。すごく自然だよ」
「でも、……これ、僕のじゃないのに……」
「ううん。今は、柊くんの胸だよ。動いたとき、揺れたり、服に擦れたりするの、きっとわかるから」
コルセットが後ろから巻かれ、ぎゅっと締められる。
下から押し上げられるように、ヌーブラのボリュームが強調された。
「やだ……歩いたら、これ、ゆれる……っ」
「うん。それがいいの」
なおの声はやさしく、でも確信に満ちていた。
「歩くたびにね、自分の胸があるって、感じられるよ。柊くんの“女の子としての感覚”が、だんだん身体に染み込んでくるから」
柊は頷けなかった。
けれど、鏡に映る自分の姿を目で追っているうちに──心の奥に、ふと気づいてしまった。
(……もっと、このままでいたい)
そんな欲望を、もう否定できなくなっていた。
午後の街は、風が少し強かった。
春の終わり、軽やかな空気の中で、柊は肩をすぼめて歩いていた。
今日の私服は、くすんだピンクのカットソーとフレアスカート。
なおに選んでもらった、“中性的だけど女の子っぽく見える”コーディネートだった。
まだ慣れていないけどウィッグもして女装で外出。
「……コルセット、きつく締めすぎたかな……」
腰を絞られた分、胸が自然と持ち上がっている。
さらにその上には、なおが貼り付けてくれたヌーブラが2枚重ね──
歩くたび、シャツの内側で、胸が微かに揺れた。
身体の中心で、柔らかさが自分の動きに遅れてついてくる。
「……こんなの、変なのに……気持ちよくなってる……」
柊はうつむき気味に、駅前の通りを横切った──そのときだった。
「……あれ、柊?」
びくり、と肩が跳ねる。
視線の先に立っていたのは──佑真だった。
私服のパーカーに黒のジーンズ。
相変わらず飾り気のない服装なのに、そのまっすぐな瞳が、いまの柊にはまぶしすぎた。
「お、おひさしぶり……」
「なんか雰囲気違うなーって思ったけど……やっぱ柊だよな?髪が長いから違うかと思った。」
笑って近づいてくるその目線が──胸元に落ちるのが、わかった。
(やだ……見られてる……女装だし、ヌーブラのライン……わかる?)
柊はとっさにカバンを胸の前に抱きしめた。
「今日、すごい……なんか女の子っぽいっていうか……」
「えっ、そ、そんなこと……ない、と思うけど……」
言い訳はしどろもどろだった。
でも、顔はもう真っ赤だった。
コルセットの中で締めつけられた腰。
ヌーブラで膨らんだ胸。パンストの奥ではフラット型貞操具が鍵付きで装着されたまま。
チェーンは外してきたけれど、“私が作られている”ことを身体が覚えていた。
「……あの、佑真くん……変じゃない……?」
「え? 全然。むしろ、全部似合ってる」
あっさりとしたその返答に、心臓が跳ねた。
よくみると佑真の顔も赤い。
(見られてる……のに……引かれてない……)
「なあ、もしよかったら……ちょっとだけ、どっか寄ってかない?」
「えっ……?」
「駅前のカフェとか、さ」
(だめ……こんなの……デートみたい……)
なのに、柊の口から出た言葉は──
「……うん、いいよ」
その一言だった。
シャツの前を外し、柊は上半身を露わにしていた。
下着はつけていない。コルセットもまだ。肌がそのまま晒されていることに、落ち着かなさと、期待が混ざる。
「今日はね……ヌーブラ、使ってみようか。二枚で、バニーのときと同じ作り方」
そう言って、なおが取り出したのは、肌色の丸いヌーブラのペアが二組。
触れるとぷにゅ、と柔らかく、内側には接着面のジェルが光っていた。
「ほら、片方ずつ貼るよ。ちょっと冷たいかも……」
ぴた。
柊の右胸に、まず一枚目が貼りつく。
なおの手がその上から優しく押さえ、形を整える。
「次、左ね。……あ、ちょっと肩の位置ずれてるから、こっちの方に貼るね」
そう言って、左胸にも一枚が貼られた。
──これだけでも、なんだかもう変な感じだ。
だって、自分の胸に“柔らかい何か”がある。それが揺れる。押さえられる。触れられる。
そして、二枚目が重ねられる。
「うん、これで厚みが出て、谷間ができるよ」
なおが両手で柊の胸を包みこむようにして寄せ、
ヌーブラを中央で軽く押さえると──
「……ほら、見てごらん?」
鏡の中、そこにいたのは胸の膨らみを持った柊だった。
コルセットをまだ着けていない状態でも、ふくらみは明らかに女の子のそれだった。
「え……あ……これ……」
「似合ってる。すごく自然だよ」
「でも、……これ、僕のじゃないのに……」
「ううん。今は、柊くんの胸だよ。動いたとき、揺れたり、服に擦れたりするの、きっとわかるから」
コルセットが後ろから巻かれ、ぎゅっと締められる。
下から押し上げられるように、ヌーブラのボリュームが強調された。
「やだ……歩いたら、これ、ゆれる……っ」
「うん。それがいいの」
なおの声はやさしく、でも確信に満ちていた。
「歩くたびにね、自分の胸があるって、感じられるよ。柊くんの“女の子としての感覚”が、だんだん身体に染み込んでくるから」
柊は頷けなかった。
けれど、鏡に映る自分の姿を目で追っているうちに──心の奥に、ふと気づいてしまった。
(……もっと、このままでいたい)
そんな欲望を、もう否定できなくなっていた。
午後の街は、風が少し強かった。
春の終わり、軽やかな空気の中で、柊は肩をすぼめて歩いていた。
今日の私服は、くすんだピンクのカットソーとフレアスカート。
なおに選んでもらった、“中性的だけど女の子っぽく見える”コーディネートだった。
まだ慣れていないけどウィッグもして女装で外出。
「……コルセット、きつく締めすぎたかな……」
腰を絞られた分、胸が自然と持ち上がっている。
さらにその上には、なおが貼り付けてくれたヌーブラが2枚重ね──
歩くたび、シャツの内側で、胸が微かに揺れた。
身体の中心で、柔らかさが自分の動きに遅れてついてくる。
「……こんなの、変なのに……気持ちよくなってる……」
柊はうつむき気味に、駅前の通りを横切った──そのときだった。
「……あれ、柊?」
びくり、と肩が跳ねる。
視線の先に立っていたのは──佑真だった。
私服のパーカーに黒のジーンズ。
相変わらず飾り気のない服装なのに、そのまっすぐな瞳が、いまの柊にはまぶしすぎた。
「お、おひさしぶり……」
「なんか雰囲気違うなーって思ったけど……やっぱ柊だよな?髪が長いから違うかと思った。」
笑って近づいてくるその目線が──胸元に落ちるのが、わかった。
(やだ……見られてる……女装だし、ヌーブラのライン……わかる?)
柊はとっさにカバンを胸の前に抱きしめた。
「今日、すごい……なんか女の子っぽいっていうか……」
「えっ、そ、そんなこと……ない、と思うけど……」
言い訳はしどろもどろだった。
でも、顔はもう真っ赤だった。
コルセットの中で締めつけられた腰。
ヌーブラで膨らんだ胸。パンストの奥ではフラット型貞操具が鍵付きで装着されたまま。
チェーンは外してきたけれど、“私が作られている”ことを身体が覚えていた。
「……あの、佑真くん……変じゃない……?」
「え? 全然。むしろ、全部似合ってる」
あっさりとしたその返答に、心臓が跳ねた。
よくみると佑真の顔も赤い。
(見られてる……のに……引かれてない……)
「なあ、もしよかったら……ちょっとだけ、どっか寄ってかない?」
「えっ……?」
「駅前のカフェとか、さ」
(だめ……こんなの……デートみたい……)
なのに、柊の口から出た言葉は──
「……うん、いいよ」
その一言だった。
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