受付バイトは女装が必須?

なな

文字の大きさ
177 / 206
第16部:装われたまま、心を重ねて

第二章:ふたりきりの街、ひとりだけの身体

しおりを挟む
鏡の中の自分を、柊はしばらく見つめていた。

ふんわりとしたくすみベージュのロングウィッグ。
前髪は目の上ぎりぎりで揃え、横顔をやさしく包む。
耳の前には、ゆるやかに流れる髪の束。
それが、完全に“女の子の顔”をつくっていた。

(これが、……いまの“わたし”)

白のタイツ越しにプラグが深く沈む感覚。
佑真に選ばれたコーディネートのまま、外を歩く。

外見は、完璧な女の子。
けれど中身は、誰かに“仕込まれた”身体。

「手、つなごうか」

佑真がごく自然に言った。

「……はい……」

差し出された手を取る。
指が絡んだ瞬間、プラグの奥がピクリと跳ねる。

(この身体、もう……全部、つながってるみたい……)

駅前のショッピング通り。
カフェ、雑貨屋、アパレル、どこにいても自然に見える。

柊は何度も“誰かにバレていないか”という不安と、
“それでも見られたい”という快感のあいだで揺れていた。

(こんなに女の子の格好で、外を歩いてるのに……)

(中には……こんな、仕込みがあって……)

カフェで座った瞬間──
スカートの下、椅子の固さがプラグの角度をわずかに変える。

(ん……っ)

声は出さなかった。
でも、腰の奥が小さく震える。

佑真はなにも言わない。
ただ、テーブル越しに目だけを細めて見つめてくる。

(見られてる……。なにもされてないのに、……感じちゃってるの、バレてる)

そんな気がして、柊の脚はさらに内股になった。

「……歩こうか」

「……はい」

外に出た瞬間、冷たい風が襟元をすり抜け、
チョーカーの金具がかすかに冷たさを返す。

(誰にも気づかれずに、
でも、誰かに“ぜんぶ預けてる身体”で、歩くって──)

(こんなに……気持ちよかったんだ)

それは、支配されている快感でもあり、
“選ばれて連れてこられた”という幸福でもあった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

OLサラリーマン

廣瀬純七
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...