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第3部
第11話「モナリザの目的を知る顛末」
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ダイバーネットのリッテンビルがまた場所を変えて、セクター5のネット上に現れた。ダイバーネットのセクター超えは接続に金がかかるから、セクター4の住人はほとんどつないでこない。
ぼくは事前にアポを取っていたヤン・ユーチェンという調合師の館『日本海溝』を訪れる。URLジャンプすると赤い提灯が天井にたくさん下がった小部屋に現れる。背の低い円卓の周りに半裸の美女たちが寝そべっていて、電脳ドラッグの煙管を吹かす。
招福と書かれた暖簾をくぐってヤンが現れる。ギリアンと同じ丸い黒メガネをかけた白髪の老人で、細い口髭を垂らし、曲がった杖をつく。眼鏡の縁からぼくを覗き込む瞳が赤白の太極図になっている。ヤンを見分ける唯一の特徴だ。
「おー、リオくんか、待ってたよ。さあ、そこに掛けて」
赤い壁で囲われた狭い空間に円形のソファがあった。いや、ベッドか。ぼくは縁に腰掛ける。
香盆から立ち上る煙が揺れる。ぼくは肩を覆うシュラグに脚を覆うタイツ、それに天女の羽衣をまとい肌を露出するけど、ここはネット空間だから気にしない。
「老ヤン、イスカリオテのことを知りたいんだ」
「東部のカルテルだね。何が知りたい」
「ぼく、狙われてるみたい」
「彼らの不興を買ったかね」
「それがわからない……。一方的にぼくを名指しで狙ってる。どうしてぼくを狙っているのか、どこまで追跡されているのか」
「なにか……心当たりは?」
「一度、ドラッグ取引で騙したことがある。ぼくは取引の場には出ていないから、彼らはぼくの顔を知らないはずなのに」
「もっと他の理由がありそうだね」
ヤン・ユーチェンは館の場所とその姿を頻繁に変える。
以前ライラと一緒に会ったときは、パンクな女の姿だった。ドラッグの調合師というだけでなく、女衒で、カルテルに顔が利き、金さえ払えばどんな情報でも教えてくれる。ダイバーネットの彼の館で寝そべる女たちは、現実の彼の風俗店で客待ちしてる女たちだ。いや、彼女、かもしれない。ヤンの素性はだれもしらない。
「情報量はいくら?」
「前金で七百。オーバーしそうならその時に伝えるよ」
「いいよ」
トレードウインドウが開いて、七百クレジットをチェックする。ヤンは立ち上がって、寝そべる女三人を手招きして呼ぶ。
三人の美女はぼくの羽衣の内側に寄り添い、露出した肌に手を触れる。ぼくを押し倒す。二人が胸を舐め、一人が陰茎をじゅるりと飲み込む。ヤンは背を向けて暖簾をくぐって出ていってしまう。
「アンタ、アバター変えてないね。顔可愛いけど、年いくつ?」と乳首を舐める女が訊く。
「十八歳……だよ」
「うそだあ、十四ぐらいにみえるよ」
フェラチオしていた女が起き上がって、ぼくを跨ぐ。厚ぼったい唇が濡れていて、ぼくを見下ろす眼差しは夢をみているよう。ちゅるるるっと一気に根元まで沈み、アニメキャラみたいにつるつるした粘膜の凹凸がぼくの陰茎をぬちゅぬちゅとマッサージする。
この時代、男よりも女の方が性欲が強くて、勃起してる男は自由に犯していいと思っている。
「ヤンはセクター5のひとなの?」
「あたしたちはセクター5だけど、ヤンがこっちの人かどうかは知らないよ」と舌ピアスで乳首を刺激する女が言う。
「ぼくはセクター4だけど、セクター5に越境して暮らしていける?」
「北の方なら十分暮らせるよ、南は排他的だね」
「戦争やってるんでしょ?」
「セクター4だって、戦争やってるじゃないか」
ぼくの上で腰をスナップさせる女が、早くも仰け反って絶頂する。ガクガク震えて、天井の提灯も揺れる。腰を浮かして、舌ピアスの女と交代する。
つるつるの割れ目で巨根をぬるりと包む。ものすごくはっきりした襞感を感じる。現実のセックスと違って、粘膜の感覚をとても強調されていて、性器が立てる音も露骨で節操がない。オンラインセックスは日進月歩で、現実を超える日もそう遠くない。
頭を起こすと、窓から外の景色がみえる。輝く空中庭園と、そこを飛び交うアバターの姿がちらつく。なにか料理を作っているのか、香ばしい匂いが漂う。
暖簾をくぐって、ヤン・ユーチェンが慌てて戻ってくる。
「リオくん、ユタニを殺したのは君か」
「そう……です」
「いまラザレフカにいるね」
「どうして、それを?」
「今すぐ逃げなさい。その場所はバレてる」
舌ピアスの女が激しく腰を上下させて、「もうちょっとだから」とセックスをせがむ。ぼくは腰を波打たせて、下から突き上げる。
「ユタニを殺したことと、イスカリオテに……なんの関係が、あっ、ある、イクっ」
名前も知らない舌ピアスの美女に精を噴射する。舌ピアスの女は長い髪を振り乱して、更に腰を上下に打ち鳴らす。脇に寄り添う二人が舌先で乳首を掘り起こすように強く刺激する。結合から精液が噴き出す。
「ユタニ・シュウレイはモナリザの息子だよ」
ぼくは事前にアポを取っていたヤン・ユーチェンという調合師の館『日本海溝』を訪れる。URLジャンプすると赤い提灯が天井にたくさん下がった小部屋に現れる。背の低い円卓の周りに半裸の美女たちが寝そべっていて、電脳ドラッグの煙管を吹かす。
招福と書かれた暖簾をくぐってヤンが現れる。ギリアンと同じ丸い黒メガネをかけた白髪の老人で、細い口髭を垂らし、曲がった杖をつく。眼鏡の縁からぼくを覗き込む瞳が赤白の太極図になっている。ヤンを見分ける唯一の特徴だ。
「おー、リオくんか、待ってたよ。さあ、そこに掛けて」
赤い壁で囲われた狭い空間に円形のソファがあった。いや、ベッドか。ぼくは縁に腰掛ける。
香盆から立ち上る煙が揺れる。ぼくは肩を覆うシュラグに脚を覆うタイツ、それに天女の羽衣をまとい肌を露出するけど、ここはネット空間だから気にしない。
「老ヤン、イスカリオテのことを知りたいんだ」
「東部のカルテルだね。何が知りたい」
「ぼく、狙われてるみたい」
「彼らの不興を買ったかね」
「それがわからない……。一方的にぼくを名指しで狙ってる。どうしてぼくを狙っているのか、どこまで追跡されているのか」
「なにか……心当たりは?」
「一度、ドラッグ取引で騙したことがある。ぼくは取引の場には出ていないから、彼らはぼくの顔を知らないはずなのに」
「もっと他の理由がありそうだね」
ヤン・ユーチェンは館の場所とその姿を頻繁に変える。
以前ライラと一緒に会ったときは、パンクな女の姿だった。ドラッグの調合師というだけでなく、女衒で、カルテルに顔が利き、金さえ払えばどんな情報でも教えてくれる。ダイバーネットの彼の館で寝そべる女たちは、現実の彼の風俗店で客待ちしてる女たちだ。いや、彼女、かもしれない。ヤンの素性はだれもしらない。
「情報量はいくら?」
「前金で七百。オーバーしそうならその時に伝えるよ」
「いいよ」
トレードウインドウが開いて、七百クレジットをチェックする。ヤンは立ち上がって、寝そべる女三人を手招きして呼ぶ。
三人の美女はぼくの羽衣の内側に寄り添い、露出した肌に手を触れる。ぼくを押し倒す。二人が胸を舐め、一人が陰茎をじゅるりと飲み込む。ヤンは背を向けて暖簾をくぐって出ていってしまう。
「アンタ、アバター変えてないね。顔可愛いけど、年いくつ?」と乳首を舐める女が訊く。
「十八歳……だよ」
「うそだあ、十四ぐらいにみえるよ」
フェラチオしていた女が起き上がって、ぼくを跨ぐ。厚ぼったい唇が濡れていて、ぼくを見下ろす眼差しは夢をみているよう。ちゅるるるっと一気に根元まで沈み、アニメキャラみたいにつるつるした粘膜の凹凸がぼくの陰茎をぬちゅぬちゅとマッサージする。
この時代、男よりも女の方が性欲が強くて、勃起してる男は自由に犯していいと思っている。
「ヤンはセクター5のひとなの?」
「あたしたちはセクター5だけど、ヤンがこっちの人かどうかは知らないよ」と舌ピアスで乳首を刺激する女が言う。
「ぼくはセクター4だけど、セクター5に越境して暮らしていける?」
「北の方なら十分暮らせるよ、南は排他的だね」
「戦争やってるんでしょ?」
「セクター4だって、戦争やってるじゃないか」
ぼくの上で腰をスナップさせる女が、早くも仰け反って絶頂する。ガクガク震えて、天井の提灯も揺れる。腰を浮かして、舌ピアスの女と交代する。
つるつるの割れ目で巨根をぬるりと包む。ものすごくはっきりした襞感を感じる。現実のセックスと違って、粘膜の感覚をとても強調されていて、性器が立てる音も露骨で節操がない。オンラインセックスは日進月歩で、現実を超える日もそう遠くない。
頭を起こすと、窓から外の景色がみえる。輝く空中庭園と、そこを飛び交うアバターの姿がちらつく。なにか料理を作っているのか、香ばしい匂いが漂う。
暖簾をくぐって、ヤン・ユーチェンが慌てて戻ってくる。
「リオくん、ユタニを殺したのは君か」
「そう……です」
「いまラザレフカにいるね」
「どうして、それを?」
「今すぐ逃げなさい。その場所はバレてる」
舌ピアスの女が激しく腰を上下させて、「もうちょっとだから」とセックスをせがむ。ぼくは腰を波打たせて、下から突き上げる。
「ユタニを殺したことと、イスカリオテに……なんの関係が、あっ、ある、イクっ」
名前も知らない舌ピアスの美女に精を噴射する。舌ピアスの女は長い髪を振り乱して、更に腰を上下に打ち鳴らす。脇に寄り添う二人が舌先で乳首を掘り起こすように強く刺激する。結合から精液が噴き出す。
「ユタニ・シュウレイはモナリザの息子だよ」
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