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第3部

第19話「マオ・リーライに闇医者仲間のことを訊く顛末」

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 車に乗り込むと、ぼくはバイザーでマオ・リーライを呼び出す。助手席のメアが座席に埋もれて降り続く雨をみる。三コールでマオ・リーライが応答する。

「誰だ」
「ルツのリオです。覚えていますか?」
「あー、フェラーレのリオくんか。ハルトは元気かね?」
「それが、色々事情があって……」
「西部は戦禍に覆われている。ヒバリーヒルも無事ではないだろう」

 マオ・リーライはルツが頼りにしていた闇医者の一人で、傭兵の襲撃を受けたときに多くのメンバーを治療してくれた。プロテウスというセクサロイドをナースとして使っている変態だけど、大戦中はSKFの衛生兵として従軍した立派な経歴を持っている。どうして闇医者に転落して、セクサロイドをコレクションしているかは知らない。

「マオ・ユーハンという闇医者を知っていますか?」
「それは……、義眼の闇医者か?」
「そうです」
「奴がどうした」
「ゲラルディーニ記念病院でぼくを目覚めさせたのがマオ・ユーハンです」
「ほお」
「ゲリラの襲撃で亡くなったと聞きました」

 バイパスを警察車両が猛スピードで通過する。雷光が駐車場を照らす。

「死んだ? そんなバカな、マオ・ユーハンはシャオジエンの雇われをやってる」
「死んでないんですか?」
「先週も眼球パーツを融通したばかりだよ」
「会う方法はありますか」
「何を知りたいのだ」
「ぼくがあの病院で目覚めた理由です。ぼくは脊髄損傷で……呼吸もできない状態だったのに、五十年も経ってから突然目覚めたら、バイオユニットの身体になっていました」
「それはマオ・ユーハンより、モーリス院長に訊いたほうがいい」
「いま、会ってきました」
「それで?」
「マオ・ユーハンは死んだ、と」
「ふん、後ろめたい事情があるんだろう」
「ですよね」
「マオ・ユーハンの通信IDを贈ろう、サービスだよ」
「ありがとう」
「私は奴に信用されていないから、連絡しても聞いてもらえないかもしれないがね」

 通信を切る。車の起動ボタンを押す。

「あたしのお母さん、死んだんですか?」とメアが訊く。
「モーリスはそう言っていたね」とライラが答える。
「もう逢えないんですか」
「逢えることを、期待してたの?」
「はい」
「残念だったね」

 ぼくは車を出す。リカ・アルダンに戻る。バックミラーに映るメアが、窓の外をみつめて泣いている。
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