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1章 領主ファクトリア家

7.初心者魔法使い

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 食堂で食事を終えた俺は部屋に戻ってきた。
 どうやらこの屋敷は、騎士団専用の屋敷で大体の設備は整ってるらしい。

 ちなみに食事はパン...というかナンみたいなやつに何かの肉と何かのサラダ、何かのスープだった。
 これは何肉か、と聞いたらポロ肉と言われた。
 全くわからん。
 が意外なことに味は悪くなかった。
 残念なことといえばスープに魚の眼球が入ってたぐらいだ。

 話は戻るが、午後からの空き時間にマーブルから魔法について詳しく習うことにした。

 『えっと魔法については前に大体話したんだけど、あと3つ。1つ目は属性のことだよ』

 属性か。なんか定番だな。ソシャゲのジャンケンみたいな奴である。

 『属性は火.水.然.風.光の5つだけ。通常魔法の全ての魔法はこの5つに分類されるね』
 『然とは?』
 『然とは自然の力のことだよ。木や土、草みたいな感じかな』

 一つだけなんか随分と特殊な属性でいらっしゃった。

 『2つ目はランク付けのこと。強さによって下から初.中.上.超.極の5段階に分けられているんだ。
 そしてさっきの属性と合わせて、火が超級なら火超級、然が極級なら然極級と呼ばれるようになる』

 『普通の魔法使いはどのくらいのランクなんだ?』

 俺、なんかやっちゃいました?
 とかやりたくないからな。無駄な反感を受けて災難が待っていそうだ。

 『普通ね....まぁその辺の魔法使いは何かの属性が中級までいってる程度じゃない?』

 1つの属性が2段階目か。
 思ったよりは...弱いかな?

 『僕は大体の魔法は超級までは使えるよ』

 まぁマーブルの自慢は置いといて

 『3つ目は?』
 『........3つ目は魔法の種類。通常魔法と治癒魔法、召喚魔法、特殊魔法の4つ』

 自慢を無視したからって説明雑にしないでください。

 『と、取り敢えず通常魔法を教えてよ』
 『....うん。じゃあまずレイの魔力量と適正属性を測るね』

 面倒臭い彼女みたいなマーブルはそう言うとどこからか、にゅっと出てきて空中浮遊しながらネコ手を俺にかざした。
 地味にやってるが感動する。

 「うーーーーーーー」

 マーブルの猫手が白く光る。

 「はぁ」

 小さく息をつくとマーブルは手を下げた。

 「えーっと....魔力量は
 .......ッ!?」

 マーブルがギョッとしたように俺を見た。

 「すごいね。僕と同じぐらいだ」

 どうやら凄いらしい。
 よかった。神を呪わなくて済んだようだ。

 「どのくらいだった?」
 「普通の魔法使いの5倍ぐらいだよ」

 おおっ!まじで!?
 ポイント5倍は嬉しいもんな。

 「適正属性は...風と光だね。2つ持ちなんて珍しいよ」

 なんか俺結構すごいのかも。
 いやいや、待て待て待て。
 取らぬ狸の皮算用だ。
 まだ魔術も使えないんだ。天狗になるにはまだ早い。
 とりあえず魔法をなんか使えるようになろう。



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 焦った。
 まさか特別とは知っていたけど人間があれほどの魔力も持っているなんて。
 あの時は僕と同じぐらいって言っちゃったけど僕より高いし。5倍どころじゃないし。

 しかも特性が2属性持ちなんてね。
 まぁ僕は全属性だからそこは平気なんだけど。

 それにしてもレイの魔法の才能はすごいね。
 初級魔法だったとしても、最初はかなり練習しないと使えないはずなのに1回目で
 「ああ、なるほど」
 とか言って2回目でもう使えちゃってるし。

 魔法をイメージして構成するのって凄く難しいはずなんだけど...。やっぱり特別だからかな?
 そのうち僕超えられちゃうーーーなんて。それは流石にないでしょ。



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 魔法を使う感じは大体わかった。
 体内の力が腕を伝わってギュンってなる感じだ。表現するのはちょっと難しい。
 とりあえずもう一回水初級の魔法「水球」を使ってみる。

 「大いなる水の精霊よ、清らかなる水の力を今ここに『水球ウォーターボール』!」

 そう唱えると俺の手の上に水の球ができた。

 これが水属性魔法の基本中の基本、水球らしい。
 適性はないが初級だしこんなもんなんだろう。
 と考えていたら水球はぼちゃん、と俺の手に落ちた。
 魔法で生み出したおかげか水は綺麗で冷たかった。

 「ねぇレイ。才能あるし無詠唱もいけると思うんだ」
 「無詠唱?」
 「そう。本来詠唱しないと魔法使えないけど感覚がわかる人は詠唱なしでもいけるんだ」

 ほう。いちいち詠唱しなくてもいいというのは良さそうだ。
 大いなる...!とか声に出すの恥ずかしいしな。世の一般魔法使いさんはやってるらしいが。
 早速水球の無詠唱を試してみる。
 力を腕にこめてギュンとする感覚.....
 スウッ、と水球が俺の手の上にできた。
 案外簡単だ。やってみれば出来るもんだな。

 次は火魔法...とやってるうちに今日中に初級魔法はすべて終わらせてしまった。
 光魔法の『光球』は照明代わりになって便利かもしれない。
 風に至っては球ではなく"風の塊"だったが風を起こすことができて面白かったしな。
 そのうちスカートめくりとか出来そうだ。
 いや、しないよ?しないからマーブルは冷たい目で見ないでください。


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