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1章 領主ファクトリア家
8.紹介
しおりを挟むあれから2日が経ち、異世界5日目となった。
朝の訓練は相変わらずキツイが、無理というレベルじゃない。
魔法は風と光が中級になった。
進歩が早いのは適性があるおかげだろうか。
ただ中級になってからは格段に難しくなり、他の属性ではもう少しかかりそうだった。
感覚としては初めて自転車に乗る、そんな感じだ。詠唱は補助輪みたいなものだな。
マーブルによると複数の属性を混ぜた複合魔法もあるそうだが、自転車に乗りながらお手玉をする感覚だったので頓挫した。
もう少し魔法に慣れれば変わってくるのかもしれない。
そして今は火の中級を練習している。
中級になると少し魔法が広範囲になったため屋敷の魔法専用の部屋で練習するようになった。
普段は騎士が使うためのものだ。
「大いなる火の精霊よ、爆烈なる火の輝きを我が力に、火花を散らし燃え尽くせん『炎息』!」
詠唱と共にかざしている手が熱くなり始める。
目の前に赤い炎が燃え広がり、室内の温度がぐわっと上がった。込み上げる汗を気にしながらもさらに魔力を籠める。
そう、ここまではできる。しかしここから....
炎は何かに吹き付けられたようにブワッと揺れ消えてしまった。
まただ。
またこれで消えてしまうのだ。
これで8回目。光と風は3回でできたのに何故だろうか。
もどかしくてムズムズしてくる。
それはそうと、詠唱が読んでて恥ずかしいのはどうにかならないのだろうか...。
『漆黒の翼』とか自称しても平気そうな世界である。
まぁそんなことはどうでもいい。次だ次。
「大いな....」
バンッ!
このドアの開けぐあいはガドだな。
「ここにいたか。来てくれ。領主様が改めて挨拶したいそうだ」
やはりガドだった。
しかし俺はもうあの男に会うのは嫌なんだが。
ーーーーーーーーー
門をくぐり、道を駆け上ってお城に入る。
すると執事に出迎えられた。
執事は中年の細身の男で白髭を生やしている。
じいや、とか呼ばれてそうな執事だ。
「こちらです」
そう言うと執事は奥の部屋へと案内した。
ガチャっとドアを開けると、どうやら接待ルームらしき部屋に通されたらしい。
赤いソファに大理石っぽい机、絨毯はきちんと手入れされ毛玉など一切見当たらない。
踏むのに少し躊躇する。
そこに待っていたのは5人の家族。
領主一家だろう。
何故わかるかって?
後ろに全く同じ姿の絵画がかかっているからな。
「やぁレイ君!今日は来てくれてありがとう!
せっかくだから今日は僕の家族を紹介するね!」
一体なんのせっかくなのだろうか。
家族を俺に紹介する必要があるとも思えない。
俺はガドの息子であっても所詮は得体の知れない子供。
紹介するには値しないはずだが...。
「なんで僕に紹介するんですか?」
「おおっと。そうだね!君には僕の子供と一緒に遊んで欲しいんだよ」
いや、それは変な話だ。
わざわざ俺である必要はない。
「というのは冗談で、君には魔法の先生をして欲しい。噂は聞いているよ。なんでも3日で中級までいったそうじゃないか」
冗談...?
しかし先生か。
確かに大人から教わるより同級生から教わる方がわかりやすい場合もある。
そして教えることでこちらにも理解が深まるメリットがある。WinWinってやつだ。
まあただ働きは嫌だけどな。
「その場合金銭は発生するんですか?」
「おおっと!鋭い質問だね!そうだね、月にアリア大銅貨5枚ぐらいが妥当じゃないかな」
通貨。当然この世界にもあるようだ。
形式は日本と違うが、そのうち慣れるだろう。
「ちなみに巷の教師と比べてどれぐらいですか?」
「うん?そうだね、大体の家庭教師は月に大銅貨10枚ぐらいじゃないかな」
二分の一。
子供だしそんなものだろう。
「喜んでお受けします」
「よし!契約成立だね」
「それでは子供を紹介するよ!」
といって出てきたのは女の子2人に男の子1人。
「まずは長女のエミリア。12歳だよ」
「エミリアよ。よろしくね!」
と言ってウインクしてきた。
薄い黄緑色の長髪に碧目の少女。
顔立ちはまだ幼なげがあるも整った顔立ちから大人らしく見えて可愛い。
まるで2次元のような容姿に領主の長女。
最強だ。
結婚してほしい。
「次は次女のメアリーだ。君と同じ8歳だね。」
「......メアリーです」
無愛想なこの子はやはりエミリアと同じ髪、顔立ちをしているが眠たそうな表情をしていた。
エミリアがお姉さんといえばメアリーはロリ系だろう。
日本に行ったら間違いなくファンクラブが出来るな。
ロリコンの。
「最後は長男のルシアだ。7歳だよ」
「ルシアです!よろしくお願いします!」
この子は熱血タイプだろうか。
散切り頭と燃えるような目をしている。
ぶっちゃけ苦手なタイプだ。
が、マリアさんは好きそうだな。
「君に教えてもらいたいのはエミリアとルシアだ。早速明日から教えてやって欲しい。詳しくはセダンから聞いてくれ。それじゃ、よろしく頼むよ」
セダンというのは車ではなく執事の名前らしい。
あのジト目の子は教えれないのか。少し残念。
「話はそれだけだからもう帰ってもらって構わないよ。それじゃあね」
と言って領主様はどこかへ行ってしまった。
俺とガドもすみやかに部屋を退室する。
ガドはいたのかってぐらい存在感がなかったな。
しかしなぜ領主の奥様は紹介されなかったのか。
ガドに聞いてみると、あの人は領主様の愛人だ、と鋭い目つきで言われた。
領主様は奥様と愛人とを側にはべらせているらしい。
いいのかそれは。
実に羨まけしからん話である。
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