異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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1章 領主ファクトリア家

10.半年後

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 俺が魔法講座をするようになってから半年が経った。
 その間、特に大きなイベントもなく、大きな失敗もなく。
 といった感じの半年だった。

 ガドとの剣術訓練はようやく剣を扱うことを許され、今は型作りと打ち込みをひたすらやっている。
 正直いって辛い。苦しい。むさ苦しい。
 三重苦である。
 練習後に褒めてくれるマリアさんがいなければとっくに投げ出していたかもしれない。

 魔法は光と風が上級、それ以外が中級。
 とかなり成長した。
 マーブルは驚いていたが
 『まあ実践経験のない魔法使いなんてカスだからね』
 と非常に辛辣だった。
 まあ魔物討伐とかしないと強さがわからんしな。

 あ、この世界に魔物はいるようです。
 この前お城の裏の森に魔物が出たと聞いてガドが狩りに行ってた。
 ちらっとその狩りを見ていたが、初めて見るガドの戦いはハンパなかった。

 魔物は中級———魔物も5ランクで大別されるらしい——の大猿ゴリラ2匹。
 それが強いのかは知らなかったが、弱くはなかったと思う。
 そんな相手に何というかハラハラドキドキのエンターテイメントみたいに見せ場があった。
 独特のリズムで魔物を翻弄し、華麗に斬りつけて殺す、なんて戦い方は強くないとできない。
 時間にして30秒ぐらいか。
 わずか30秒で大猿ゴリラ2匹を傷を負わずに倒していた。
 さすが騎士団長といったところだ。

 そんなガドは剣術で超級クラスの実力を持っているらしい。
 普通の剣士は中級になるのが10年、中級から上級まで20年という話だから
 30歳ぐらいのガドは才能があるのだろう。
 単純計算で生まれたてから剣を振るってもガドの域には辿り着かないのだ。
 才能というのは残酷である。

 そしてエミリアはというと、やっと全属性初級って感じだった。
 無詠唱は無理だった。
 マーブルによるとこれが普通らしい。
 俺って魔法の才能あったんだな。
 マーブルにそう言うと「今頃かよ!!」って勢いよくツッコマれた。
 意識せずに「何かやっちゃいました?」をやっちゃっていたようだ。
 自戒せねばな。

 まぁなんだかんだ言って異世界生活は目標通り平和的で楽しく過ごせている。
 これからも続くといいなぁ。
 なんて思ったらフラグになるので思わないでおこう。

 そして今日はなんとエミリアと街へデートに行く予定を取り付けていた。
 デートだ。誰が何と言おうとデートなんだ。
 そんな思いで張り切る。

 待ち合わせの門前に10分前には着いた。
 デキる男は余裕を持ってレディを迎えるモノだ。
 なんて思ってたら、エミリアはもういました。
 なんてやつだ。

 「.....来るのが早いですね」
 「今日の買い物が楽しみでしたからね」
 「そうなんですか。ではどこから行きますか?」
 「そうですね....まずは部屋に飾るお花を見に行きたいので花屋に行きましょう!」

 といって俺とエミリアのデートは始まった。
 後ろでエミリアの護衛が
 「何もするなよ?」
 と俺を睨みつけていたのは言うまでもない。
 とほほ。

 まず訪れたのは花屋だ。
 この町では有名な花屋で身近なものから動くような・・・・・珍しいものも扱っているらしい。

 そしてエミリアが足を止めたのは黄色いガーベラのような花だった。
 「このお花とても綺麗ですね」

 君の方がきれいさ、なんて言葉は言えるはずもなく

 「そうですね」

 としか言えない。
 彼女なんて前世では長らく縁がなかったからな。
 画面の向こうにはたくさんいたが。

 「レイ君はどれが私に似合うと思いますか?」

 おっとセンスが問われるものだ。
 俺は絶望的にセンスが無いから困るんだよな。

 「うーーーーーん」
 この白いユリなんてどうですか?」
 「白いユリですか。実は私もう持っているんですよね」

 迷いに迷って言ったら持ってた、だと...。
 プレゼントとして貰ったら返答に1番困る奴である。

 「で、ではこの黄花獣イエローフラワービーストはどうですか?
 活発で元気なところが実にエミリア様らしい」

 クネクネと絶妙に動く、絶対に持ってなさそうなやつをチョイスしてみた。

 「うーん...それはない.....ですね」

 エミリアは苦笑しながら言う。
 ですよねー。
 後ろの護衛たちはウンウンと頷いていた。
 何なんだ。

 しばらくして花屋を出ると、次は服屋に向かうことにした。
 向かった服屋もこの町1番の服屋で高品質、高価格の高級店だ。
 重厚なドアをくぐると、そこには光魔法で明るく彩られた服と数人のお客。
 いかにも金持ちらしい客層だ。

 後で知ったことだが、この世界では照明は貴重で、光魔法を使える者も限られているので基本的に室内は暗いらしい。
 明るいのは高級店ならではということだ。

 エミリアが店員と色々話してる間に暇な俺は店内を物色していると

 「レイ君、ちょっと来てください!」

 と裾を掴まれて呼ばれた。
 これが美少女の力というモノなのか。
 心臓がバクバクと跳ね、後ろの護衛たちは悔しそうに歯軋りしていた。
 もうファンクラブである。
 エミリアに付いて行ってみると、そこには薄黄色のローブがかかっていた。

 「レイ君って確か魔法専用のローブ持ってませんでしたよね?だからこれ、プレゼントします」
 「魔法専用のローブなんてあるんですか?」
 「ありますともお客様!このローブは月光獣の皮で作られた物ですので光魔法の威力と耐性が付く優れものとなっております!」
  
 とジャパネットた○たのような店員。

 「そんな高そうなもの貰っていいんですか?」
 「いつもお世話になっているので」

 天使だ.....
 『それ以上の意味はないからな!』と後ろから聞こえたような気がするが、気のせいだろう。

 「お値段は....」

 俺が恐る恐る聞くと

 「お値段はアリア金貨1枚となります!」

 うっ。アリア金貨1枚だと...
 俺の給料の20倍だ。

 「買います」
 「お買い上げ有難う御座います!」

 これがセレブか。
 一声で俺の一年半が飛んでいったぞ。
 ピカーとローブが神々しく見えた。

 服屋で買い物を終えると日が傾きかけていた。
 そもそも出かけたのが遅かったからな。
 そろそろ帰らなきゃならん。

 「今日は楽しかったです!また明日ですね」

 門の前に着くとエミリアはそう言いながら丘を駆け上って行った。
 別れは意外と淡白である。
 本当にただのお出かけだったのだ。
 全然楽しかったがな。
 そんな事を思いながら俺は上機嫌で屋敷に戻るのだった。
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