異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

文字の大きさ
64 / 119
5章 奈落の底の魔法使い

54.対面

しおりを挟む
 本日2度目の目覚め。
 なんでこうも今日は気絶したり目覚めたりが多いんだ。
 しかも二回目は縄に縛られているし。どんなプレイだよ。

 「はっ!」

 俺は目覚めた。いや、そっちに目覚めたわけじゃないぞ?俺は断じて痛みを変換できる人間じゃない。

 周りを見渡すと、さっきと同じような洞窟、しかし洞窟の各所に光の玉が浮遊し、代わり映えしない無機質な岩岩が彩られていた。
 これを作った人はセンスがあると思う。

 さらによく見ればゴワゴワしてそうな皮で作られたベッドや机まである。
 ・・・そして圧倒的に目を引いたのは血溜まり・・・・だった。地面の窪みにドップリとした赤々しい生臭い血が入れられている。
 これを作った人はセンスが無いと思う。


 「お、目が覚めたか」


 そんな部屋の主が目の前にいた。
 橙色の明るい色の髪の毛がよく分からないほど盛り付けられ、整った顔には大胆不敵な笑みが宿っている。

 そして、何と言ってもその身からでる圧倒的な強者のオーラ。
 溢れ出るそのオーラに俺の膝は大笑いしていた。よっぽど面白いらしい。

 「さて、お主の身柄は妾が預かっているが、どうして欲しい?」

 どうして欲しい.....これは踏んで欲しい!とか答えなきゃダメなやつ?

 「取り敢えずそのオーラ出すのやめてくれません?」

 俺の膝の爆笑が止まらないので。

 「・・・・ほう。面白い」

 そんなに俺の膝が面白いのか。変なやつだな。

 「良いじゃろう。ならば教えてくれ。お主は一体何者でなぜこんな場所にいた?」

 なぜこんな場所に.....?あれ、てか為されるがままにしているが、なんでこんな所にいるんだ?
 確か象さんを倒して、魚に喰われそうになってーーーそうだ!なぜか気を失ったんだ!
 うん。なんもわからねえ。

 「のう?答えるなら早めに頼むぞ?妾は気が短いでな」

 中々答えない俺にイライラしてたらしい目の前の人はオーラを増していた。
 俺の膝は生まれたての小鹿よりも小鹿だった。

 「迷宮攻略です」

 「じゃろうな」

 当たり前という風に相槌を打たれる。
 というかこの人誰?

 「で、お主は何者なんじゃ?なぜ子供がこんな所におる?」

 「人に名前を尋ねる時は自分からって習いませんでした?」

 「む・・・」

 ちょっと使いたかったセリフを言ってみる。だがその反動で目の前の人は不機嫌になったようだ。地雷踏んじゃった。

 「まあいいじゃろう。妾は・・・ハクリと言う。お主は?」

 「レイ・スペルガーです」

 「レイ.....。ふむ。年齢偽称のやつでは無いな」

 年齢偽称?なんかそれ聞いたことあるぞ。
 緑色の髪の毛を垂らした危険な幼女のことだろ?

 「....その顔を見ると心当たりがあるようじゃの。あの憎々しい肉塊に」

 この人はマーリンに相当の恨みを抱いているらしい。アイツはどんだけ多方向から恨み買ってんだ。
 てか俺関係無いからオーラ出すのやめて欲しい。膝が暴れ馬すぎて痛い。

 「取り敢えずこの縄解いてくれませんか?」

 さっきからずっと絞められっぱなしなのだ。決して俺がそっち方向の趣味なわけでは無い。決してだ。決して。

 「解いてどうするのじゃ?どっちみちお主は死ぬ。余計な手間をかけても面倒じゃからな」

 「・・・・は?」

 死ぬ?勝手に拉致っといて何言ってんだ。冗談じゃない。
 俺は指先に小さな火魔法を灯すと縄を少しずつ焼き切っていく。バレないように、慎重にだ。

 「なに逃げようとしておるのじゃ?雑魚が」

 俺に手のひらを向けられる。その瞬間、俺の体は硬直した。

 動かせない。体が動かせないのだ。

 「お主は妾の暇つぶしになればそれで良い。お主がしていいのは呼吸と瞬きだけじゃ」

 ・・・なにも言い返せなかった。目の前がぶっ飛んでいるからなのかは分からない。強者のオーラに当てられて身じろぎひとつ出来なかったのだ。
 ただ、このままじゃ俺はオモチャにされることだけはわかる。

 「む...子供に躍起になりすぎたかの。取り敢えず動けないようにしておくか」

 ハクリが手の平を向ける。

 メキィッ

 嫌な音がした。骨にヒビが入る音だ。

 「なっ」

 見えない壁があった。俺の前後左右全ての場所に。その壁はだんだん縮まっていき、いずれは俺を押しつぶすことになるのは火を見るよりも明らかだった。

 「ぐっ....!」

 体の拘束は解かれるが壁はそのままだ。
 このままアイツの思い通りにやらせるわけにはいかない。やられたらやり返す!

 ばいがえsーーー


 「そこまでだよ」

 俺と目の前のハクリ、その2人しかいなかった場所に第3の声が響き渡る。
 その瞬間、体が震え上がるほどの重圧が俺たちを襲った。
 洞窟内の照明が瞬く間に揺らぎ、余裕に満ちていたハクリが少し身構える。

 発しているのはハクリじゃない。

 ーーーーーー第3の声の持ち主だ。
 

 「やっと正体を現したか。・・・化け猫が」

 のしっ、のしっ、と鈍い足音が俺の後ろから聞こえ、大きな前足が俺の体に触れる。その途端に見えない壁が消えた。

 「元七大列強4位ハクリ。お前は危険だ。我が主の名に従い、ここで潰えろ」

 出てきたのはマダラ模様のライオンだった。それも巨大な。
 その後ろ姿に微かな思いがよぎる。

 「フンッ。その様子だと奴の犬に成り下がったようじゃのう。消えろクズが」

 ハクリが手のひらを向け、その瞬間ライオンが爆発した。
 パラパラと俺に戦塵が降りかかる。土ボコリがモクモクと舞い、恐るべく威力の魔法だった。

 そんな土ボコリの中に無傷のライオンはいた。
 ライオンの前には薄青色の壁が張られており、傷ひとつついていない。

 俺とは全く次元の違う戦いだった。

 そんなライオンの後ろ姿が俺の見知った者とぴったり重なる。
 だがそんなわけはない。そんな訳があるはずなかった。


 「・・・・・・マーブル?」
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ありふれた聖女のざまぁ

雨野千潤
ファンタジー
突然勇者パーティを追い出された聖女アイリス。 異世界から送られた特別な愛し子聖女の方がふさわしいとのことですが… 「…あの、もう魔王は討伐し終わったんですが」 「何を言う。王都に帰還して陛下に報告するまでが魔王討伐だ」 ※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

処理中です...