異世界に行ったら才能に満ち溢れていました

みずうし

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5章 奈落の底の魔法使い

58.思い

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 私は生まれた時から1人だった。
 誰にも愛されず、誰も愛せない。ただ人形のように存在する私。

 そんな私をいつでも投げ出したかった。

 "血"で決められた長という立場。いつかの決戦に必ず出向かなければならない覚悟。

 3年に一回の7族王会議も行きたくなかったし、ましてや私を物扱いする村にもいたくなかった。

 
 そんな立場を面白いと考え始めたのはいつだっただろうか。
 体の底から無限に湧き出る力、一声で動く体制、圧倒的殺戮の快感。
 それに気付いた時から私は私では無くなった。

 自信がついて一人称が変わり、いつの間にか命を簡単に消せるようになった。1人の人間などゴミ屑以下にしか見えなくなり、たまに来る勇者なども五体不満足にして送り返したこともあった。

 自惚れていたのだ。自らの力に。

 決して苦労せず、負けることのない力に。

 時にはやり過ぎで他部族から諌めが来たが無視し、『王』と戦ったこともあった。結果は妾の圧勝だったが。

 しかし『七人の王』でさえ妾には勝てない。そう思って満足した時、妾の頭は急激に冷えた。いや、冷めた。

 強くなりすぎた故、全てに興味を失ったのだ。
 妾は部族長という立場を放棄し、各地を放浪し始めた。確か20歳ぐらいの時だ。

 その時、初めて『国』というものを見た。溢れかえる人ごみ。活気のある市場。
 全てが新鮮で心地よかった。

 そして彼と出会う。唯一妾を見てくれた男に。
 妾と彼は行動を共にし、各地を歩き回り、やがて相惹かれていった。
 随分幸せな時間だった。人生で一番の。

 しかしそんな長くは続かない。
 【ラグナロクの大迷宮】が出現したのだ。

 国々はパニックに陥り、魔物は活性化、次々と国が滅び、人が死に、様々な種族が滅んだ。
 そんな奴らを彼は助けると言った。

 妾は困惑した。当然妾には助けるなんて考えが無かったからだ。
 自分で自分を守れない奴なんて助けても仕方が無い。そう思っていた。

 仕方なく、後ろ髪を引かれる思いで妾たちは別れ、妾は随分戻っていなかった里へ。彼は迷宮へと別れた。

 その後、里でのんびり暮らしていた妾に一つの報が届いた。
 【迷宮攻略される、七大列強が快挙。惜しくも人間王死す】
 といった軽々しいものだ。

 そして妾は悟る。
 妾を見てくれたただ1人の男は妾と同じ『王』だったのか....と。
 そんな王ももういない。

 そんな時、二つ目の迷宮が出現した。


  ーーーーーーーーーーーーーーーー



 「で?なんでその話を俺にしたんだ?」

 む、何もわかっておらんな此奴は。

 「人生は色々あるのじゃ。機を逃せば大変なことになるぞ?」

 妾がそう言うと少年は露骨にハテナを浮かべる。余りに露骨なので少々イラっとしたが話を続ける。

 「妾は彼と共に迷宮に行かんかったことを悔いておる。お主には悔いていることは無いか?
 お主は先ほどの魔法で何を見せられた?アレは本音を映し出す魔法。見たくも無いものまでな。あの時強く響いた感情こそ、お主が心の奥底で留まらせておる暗い感情じゃよ」

 「・・・・・・」

 妾がそう言ったきり、少年は口をつぐんでしまった。
 外見だけを見ればまだ幼いのに厳しく言ってしまったとか思いそうじゃが、奴の中身は決して子供では無い。
 
 「・・・・お前には信頼できる人物はいるか?」

 「・・・・突然何を言い出すのじゃ?」

 「いや、そうだな。忘れてくれ」

 信頼.....か。

 「いないのぅ」

 少年は妾の言葉に表情をさらに曇らせる。

 「じゃがそれがどうした?別に妾は寂しくも辛くもなんともないぞ?それに数え切れないほど生きてきた妾からすればお主はまだ子供。
 まだ、時間はあるのじゃよ。じゃからくよくよするな。思うままに生きろ。すれば信頼できる者にはいずれ出会うじゃろうて」

 「・・・・・・・・・」

 むぅ....なんか言ってくれんと恥ずかしいんじゃが。
 それにしても久しぶりにクサイことを言ったのう。言うとるこっちも恥ずかしいわ全く。

 そんな思いを感じつつ少年を見ると表情は少し晴れたようだ。
 どうやら妾の言いたいことが少しはわかったようじゃな。

 「・・・わかった。ありがとう」

 突然少年は膝を折りたたみ、頭をさげる。

 「そしてお願いだ。俺を鍛えてくれないか。一から。俺には力が無さ過ぎる。この迷宮に入ってからずっと思ってたことだ。頼む」

 少年は顔を上げない。
 その姿には強い決意を感じた。
 ・・・これには応じてやらなければ『王』の名が廃るわい。

 「顔を上げよ」

 少年が顔を上げる。
 その瞳には先ほどまでのどんよりした靄は無かった。鋭い、決意の目だ。
 彼と同じ....目。

 そんな目をとても懐かしく思った。
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