Level2から始まる召喚魔剣士の異世界成り上がり冒険記

みずうし

文字の大きさ
4 / 22
フェーズ1

1.お勉強のお時間です

しおりを挟む
 "住まい"としてメイドに連れて行かれたのは先程とは違う部屋だった。
 ほのかに香る緑、白の壁に飾られた美しい文字。立派な和室がそこにはあった。
 少し動揺していた俺の心が和室によって少し静まる。
 なんで異世界にこんなのあるのか知らんが、やっぱ日本文化はベリーグッドだ。

 が、感動する俺を他所にメイドはてくてく和室内を進んでいく。

 「・・・・?」

 取り敢えずメイドについて行くと、メイドはふすまの前で立ち止まった。
 そしてふすまをガラッと開け、押入れを露見させる。

 「どうぞ、こちらです」
 「いや俺はドラ○もんか!!!?」
 「ふぐぐっ!」

 メイドは俺のツッコミに顔を背けた。心なしか耳が真っ赤である。な、なんですのこの人。

 「冗談ですよ♪本当はあちらです♪」

 メイドは笑いながら部屋の奥にある庭を指し示した。庭には小さめの池があり、さらにその奥には小さな犬小屋がある。
 ・・・これは、なんと反応すればいいのだろう。

 「・・・もうっ!そこは、俺は犬か!!って突っ込んでくれて良いんですよ?」
 「いや無理だよ!!!!」
 「ふくくっ!」

 再びメイドさんは耳を真っ赤にして大爆笑である。一体なにが面白いのやら。
 しかしこの人、メイドの割には随分と馴れなれしい気がするが。流石異世界、もうなんでもありだ。

 メイドさんはお腹を抱えて笑い終わると、まだ口角をピクピクさせながら俺に向き直った。
 改めてそのメイドさんを見ると、背は小さいながらも出るとこ出ていて、それでいてなかなかの美人だった。真正面から見たこともあって思わずドキリとしてしまう。なんだか妖艶な感じだ。
 まあ単に俺の女子耐性がないだけかもしれないが。

 「では自己紹介をさせて頂きます♪
 私は今回あなた様のお世話をさせて頂くことになったユリエと申します。
 以後よしなにしてくださいね♪」

 ユリエ、はそう言うとニコリと笑う。
 メイド服といい、その容姿といい、対人スキルが皆無な俺にとっては強すぎる刺激なんですが....。
 しかしなんだって雑魚で一文の価値もない俺にこんな良い待遇なんだろうか。どうも都合がよさすぎる気もする。
 ま、いいか。ラッキー!俺は深いことは考えない人間なのだ。

 「あ、はいこちらもどうも」
 「ではでは名前を教えてくださいませんか?別にご主人様とかお呼びしてもいいですけどー」

 ユリエはぶっきらぼうに言いながら上目遣いで見てくる。なんだこれは、天使ですか?

 「うっ....あの....くすのきゆうまって言います」
 「ふふっ、可愛い反応ですね♪」

 そういいユリエは俺に近寄ってくる。
 たじろぐ俺にユリエはそのまま体を密着させると、あのDT殺しで有名な双丘が俺の体に触れた。
 あわわわわわわわわわわわわ。

 「あ.......アッカーーーーン!!!」

 俺はとっさにメイドを突き飛ばして理性を取り戻した。
 なんだなんだなんだなんじゃこりゃ!!!
 こ、これが噂のハニートラップ!?

 動転する俺を他所に、ユリエは一瞬だけ物憂げな表情を見せ、すぐに嬉々とした表情を見せる。

 「もぅ!照れちゃって初々しいですね!ゆうまくん?今のはただの意思疎通ですよ?」
 「あ、あ、あ、あ、あなたは一体何者なんでしゅか!?」

 大事な場面でも冴え渡るコミュ障。なんで俺はコミュ障を克服しておかなかったんだっ!!
 と、ともかくこのユリエさんは精神衛生上よろしくない。こうなれば心を石にするのだ。
 俺は石.....俺は石.....俺は石....俺は石....。

 「何者って、私はメイドですよ?
 あ、そうだ、上からの命令でですね、ゆうまくんにしなきゃダメなことがあるんですよー?」

 俺は石.....俺は石.....俺は石.....俺は石.....。

 「なんだと思いますー?」

 「し、知らない!」

 俺は石.....俺は石.....俺は石だっ!!!

 「お・べ・ん・き・ょ・う♪
  一緒にお勉強しましょう?」

 ああああああああ無理だぁぁぁああああ!!



 ☆☆☆




 「いいですか?この世界には魔法とスキルがありましてですね、スキルは属性のない特殊な能力を、魔法は属性のある不思議な現象を体現しているんですよ♪ちゃんと書き留めて下さいね?」
 「はーーーーい」

 俺は今の言葉をノート、まあ羊皮紙だがそれにメモる。羊皮紙にはすでに多くのことが記入されていて、全てこの世界の常識的なものが書かれているーーーーーって

 「なんで普通の勉強してんだ!!????」

 そう、「お・べ・ん・き・ょ・う♪」とはつまりお勉強・・・だったのだ。決して保健体育でもなんでもなく。
 少しホッとしたようながっかりしたような.....。
 
 「え?なんだと思ったんですか?  
 まさかあんな事やこんな事っ!?
 やだーゆうまくんはえっちぃですねぇー♪」

 そう言うユリエはノリノリである。フリル付きのメイド服をふりふりしながら照れるフリ・・をしていた。
 まあ可愛いから良いけども。

 「私はただの教育係ですよー?そんな期待しないで下さいね♪・・・私も期待しちゃいますから♪」
 「ふぐっ.......」

 なぜ最後の一言を付けるんだ....!
 なんの経験もない「魔法使い」の卵である俺に、その言葉は殺傷能力高めのナイフである。

 「と、ともかく早く続きを!!」

 俺の精神上本当によろしくない。
 それに、授業でユリエが教える異世界の知識はまるで凝ったゲームの設定のようで聞いてて楽しかった。いや本物なんだけどね。

 「ではとっておきの魔法を教えちゃいますよ?
 だれでもできる魔法です!
 いいですか?まずこうして両手を空に向けます!」
 「こうか?」
 
 俺は自分の両手を空に向かって上げた。

 「そうです!そして、次に全身の力を両手に集めます」
 「いや無理なんですけど」
 「感じです!感じでいいんです!」
 「は、はぁ.....」

 取り敢えずなんか手に集める感覚っぽいことをしておく。これでいきなり魔法開花したらいいのになぁ.....。
 そんな俺の心境を知ってか知らないでか、ユリエは俺と目を合わせて興奮したように叫ぶ。

 「これでほぼ完成です!!
  あとはこう叫ぶだけ!
 『オラに元気を分けてくれー』と!」

 「オラに元気を分けーーーーってこれドラ○ンボールじゃねえか!!!!!」
 「ふくくくっ.....!!」

 見事に決まったとばかりにお腹を抑えて耳を真っ赤にするユリエ。
 俺のメイドは元気玉を炸裂させるなかなか大変な人のようです...。
しおりを挟む
感想 22

あなたにおすすめの小説

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。 12/23 HOT男性向け1位

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

転移特典としてゲットしたチートな箱庭で現代技術アリのスローライフをしていたら訳アリの女性たちが迷い込んできました。

山椒
ファンタジー
そのコンビニにいた人たち全員が異世界転移された。 異世界転移する前に神に世界を救うために呼んだと言われ特典のようなものを決めるように言われた。 その中の一人であるフリーターの優斗は異世界に行くのは納得しても世界を救う気などなくまったりと過ごすつもりだった。 攻撃、防御、速度、魔法、特殊の五項目に割り振るためのポイントは一億ポイントあったが、特殊に八割割り振り、魔法に二割割り振ったことでチートな箱庭をゲットする。 そのチートな箱庭は優斗が思った通りにできるチートな箱庭だった。 前の世界でやっている番組が見れるテレビが出せたり、両親に電話できるスマホを出せたりなど異世界にいることを嘲笑っているようであった。 そんなチートな箱庭でまったりと過ごしていれば迷い込んでくる女性たちがいた。 偽物の聖女が現れたせいで追放された本物の聖女やら国を乗っ取られて追放されたサキュバスの王女など。 チートな箱庭で作った現代技術たちを前に、女性たちは現代技術にどっぷりとはまっていく。

処理中です...