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フェーズ1
2.勇者の壁
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チュンチュン
スズメの囀りが聞こえ、俺は布団から体を起き上がらせた。
寝ぼけた視界には2日目にして見慣れた和室がぼんやりと映り、カポーンというししおどしの音が耳に冴え渡ったところで、ようやく今の現状を理解した。
そうだ、俺は異世界召喚されたんだった。
道理でいつものベッドの感覚がしないと思ったよ....。
俺は寝ぼけた目をこすり、布団から這い出ーーーようとした瞬間手首を何者かに掴まれた。
だ、だれーーーー
「お早う御座います、ゆうまくん♪」
「・・・え?」
もはや聞きなれた声。見ると何故かユリエさんがいつの間に布団に入っていた。これが朝チュンというやつか。
いや違う違う違う!!
「な、な、なんでいる!??」
「え、いちゃダメですか?」
布団からの強烈な上目遣い。
あ、あざとすぎるぅぅう!でも最高ぅう!
やはり男とは単純なものなのである。
「うそうそ、冗談ですよ♪少しお伝えしなければならない事があっただけです」
ユリエはニコリと微笑んでいちいち俺の手を掴む。だからなんで。
「今日、九時から勇者組、要は広間で前に出た人達ですね。その人達が剣術の訓練を行います。ゆうまくんもどうですか?
この物騒な世界で剣術は大事ですよー?」
剣術、か。
確かにハヤトとやらも「モンスターがいる」と言っていた。もしもそうならば多少の戦闘能力は必要であろう。
もし手をつけず、その辺のスライムに襲われ死亡、となれば目も当てられない。
しかも俺は一応魔剣士なのだからな。
「じゃあ試しに行ってみます」
「そうですか!それは良かったです!一応ゆうまくんも養われている側ですから、多少の顔も立てとかないと殺されちゃいます♪」
「うぇっ?」
さらっと物騒なこと言われた気がする。
それにしても剣術かぁ。運動するのさえ半年ぶりぐらいだけど、果たしてどのぐらい動けるのやら....。
☆☆☆
「おりゃああああああ!!!」
雄叫びをあげながら振り下ろした渾身の一撃。我ながら言って、正直凄かったと思う。
が、相手にはかすりもしなかった。
「あぶねっ!はあ、今のはマジ危なかった!回避した俺ってスゲェ!」
その相手が自画自賛男、俺と一緒に召喚された「勇者」のユウという奴だ。一応ハルヒトの地球での友達だとユウておった。
・・・駄洒落ではござらんよ?
しかし全く剣が当たらんのだが。なぜか向こうの剣は当たるのに、俺の剣は当たらない始末。
なぜだ!
「じゃあ行くぜ!こっちの番だ!」
「あ、いや、ちょっ、待ち」
俺の言葉を待たずして、ユウは地面を蹴る。
瞬間、一瞬姿がぶれていきなり俺の前に現れた。
「そんなんありかよ!?」
「もーらいっ!」
そして振り下ろされた俺への脳天ショック。
本日何度目かわからない脳天ショックは脳の急所に当たり、俺はよろよろと倒れる。
「やっぱすげえなこの『スキル』!」
そんな俺を他所にキャピキャピする野郎。
そうなのだ。これもすべて「スキル」とやらのせいなのだ。
ご存知の通り、俺が所持しているのは「鑑定(低)」。その名の通り鑑定するスキルだ。・・・異世界語で。全く読めません。
それと違い、ユウがーーーというか、俺以外の召喚者が持っているのは「勇者スキル」というやつで、各々の個性にあったスキルが解放されるらしい。
実際、ユウは回避系のスキル「先読み」と、数歩瞬間移動できる「月歩」持ちだ。
「しかもそもそもステータスが違いすぎるんだよなあ.....」
俺の体にできている無数の傷跡もそれが原因。俺の総合評価はD+なのに、勇者たちはC+なのだ。要は、「赤児」と「大人」の差レベル。
いくら筋トレや策を練ろうと赤児は赤児なのだ。
ーーが、何もしない訳にもいかない。
だから俺は先ほどから剣をひたすら振るい、そして歴戦の騎士たちの戦いを食い入るように見ている。
俺が勇者たちとの圧倒的ステータスの差を解消できるもの、それは熟練度なのだから。
初日でそれに気付けたのは大きい。
「よし、ユウもうひと勝負行こう」
あらかた見終わり、自分のフォームも確認した後、ユウとの再戦を申し込む。
「いいぜ?叩きのめしてやるよ」
そう言ってユウは乗っかってくれた。
ふふふ、その自信満々な鼻をへし折ってやるよ!
「うりゃあああああああ!!!」
始まってすぐに渾身の一撃!上から下へと綺麗に振り下ろされた剣はまっすぐユウの元へとーーー行かず、空を切る。
「あぶねぇ!だが隙が空いてるぜ!」
「あ、ちょっ、待っ」
ズビシッ、と俺の額に剣がのめり込む。
そのまま俺は後ろへ地面に倒れこんだ。
「やっぱリアルは厳しいっすな....」
初日の感想。勇者強すぎぃ!
☆☆☆
ブゥーン、ブゥーン、と心地いい風切り音が庭を震わせる。
そのうち暑くなって裸になった上半身にはあざや傷が多い。取り敢えずの目標はこの傷達を少なくすることだ。
「ゆうまくん、なんだか生き生きしてますねぇ♪そんな顔されたら惚れちゃいますよ?」
「ふぁっ!!??」
「じょーだんですよー♪」
そしてなぜか縁側にはユリエ。いつも通りのメイド服で可愛らしく佇んでいる。
さっきから何が面白いのか、俺の素振りをずって見ているのだ。
「でもなんでいきなり素振りなんです?型もメチャクチャですよー?」
「仕方ないさ、だって俺に指南してくんないんだもん」
訓練中、教官はずっと勇者にベッタリだ。俺には何もしてくれない。この態度の差はなかなか心にくるが、もう無視することにしたのだ。
「・・・じゃあ私が教えましょうか?」
「・・・う?出来んの?」
「出来ますよう♪優しく教えてあげますね♪」
「いちいち言い方が・・・」
そんな会話をしながらも、ユリエは縁側を立ち、かけてあった剣を手に取る。
小柄なユリエには似合わない、大きめの剣だ。
ほんとに振れるのかなぁ......。
「ではしっかり見ておいてくださいよ?」
ユリエは俺の顔を確かめるように確認し、そして剣を振り上げる。
その無駄のない動きに思わず俺は感嘆の声を上げた。
綺麗すぎる。その容姿も相まって、まるで一種の芸術作品のようでーーー
ビュゥオオオオオオ、とものすごい風切り音。
ーー同時に圧倒的破壊の象徴でもあったのだ。
「ひょ、ひょええええ」
「こんな感じです、ゆうまくん♪」
にっこりと笑うユリエ。
俺のメイドが「魔剣士」の俺より強い件について......
スズメの囀りが聞こえ、俺は布団から体を起き上がらせた。
寝ぼけた視界には2日目にして見慣れた和室がぼんやりと映り、カポーンというししおどしの音が耳に冴え渡ったところで、ようやく今の現状を理解した。
そうだ、俺は異世界召喚されたんだった。
道理でいつものベッドの感覚がしないと思ったよ....。
俺は寝ぼけた目をこすり、布団から這い出ーーーようとした瞬間手首を何者かに掴まれた。
だ、だれーーーー
「お早う御座います、ゆうまくん♪」
「・・・え?」
もはや聞きなれた声。見ると何故かユリエさんがいつの間に布団に入っていた。これが朝チュンというやつか。
いや違う違う違う!!
「な、な、なんでいる!??」
「え、いちゃダメですか?」
布団からの強烈な上目遣い。
あ、あざとすぎるぅぅう!でも最高ぅう!
やはり男とは単純なものなのである。
「うそうそ、冗談ですよ♪少しお伝えしなければならない事があっただけです」
ユリエはニコリと微笑んでいちいち俺の手を掴む。だからなんで。
「今日、九時から勇者組、要は広間で前に出た人達ですね。その人達が剣術の訓練を行います。ゆうまくんもどうですか?
この物騒な世界で剣術は大事ですよー?」
剣術、か。
確かにハヤトとやらも「モンスターがいる」と言っていた。もしもそうならば多少の戦闘能力は必要であろう。
もし手をつけず、その辺のスライムに襲われ死亡、となれば目も当てられない。
しかも俺は一応魔剣士なのだからな。
「じゃあ試しに行ってみます」
「そうですか!それは良かったです!一応ゆうまくんも養われている側ですから、多少の顔も立てとかないと殺されちゃいます♪」
「うぇっ?」
さらっと物騒なこと言われた気がする。
それにしても剣術かぁ。運動するのさえ半年ぶりぐらいだけど、果たしてどのぐらい動けるのやら....。
☆☆☆
「おりゃああああああ!!!」
雄叫びをあげながら振り下ろした渾身の一撃。我ながら言って、正直凄かったと思う。
が、相手にはかすりもしなかった。
「あぶねっ!はあ、今のはマジ危なかった!回避した俺ってスゲェ!」
その相手が自画自賛男、俺と一緒に召喚された「勇者」のユウという奴だ。一応ハルヒトの地球での友達だとユウておった。
・・・駄洒落ではござらんよ?
しかし全く剣が当たらんのだが。なぜか向こうの剣は当たるのに、俺の剣は当たらない始末。
なぜだ!
「じゃあ行くぜ!こっちの番だ!」
「あ、いや、ちょっ、待ち」
俺の言葉を待たずして、ユウは地面を蹴る。
瞬間、一瞬姿がぶれていきなり俺の前に現れた。
「そんなんありかよ!?」
「もーらいっ!」
そして振り下ろされた俺への脳天ショック。
本日何度目かわからない脳天ショックは脳の急所に当たり、俺はよろよろと倒れる。
「やっぱすげえなこの『スキル』!」
そんな俺を他所にキャピキャピする野郎。
そうなのだ。これもすべて「スキル」とやらのせいなのだ。
ご存知の通り、俺が所持しているのは「鑑定(低)」。その名の通り鑑定するスキルだ。・・・異世界語で。全く読めません。
それと違い、ユウがーーーというか、俺以外の召喚者が持っているのは「勇者スキル」というやつで、各々の個性にあったスキルが解放されるらしい。
実際、ユウは回避系のスキル「先読み」と、数歩瞬間移動できる「月歩」持ちだ。
「しかもそもそもステータスが違いすぎるんだよなあ.....」
俺の体にできている無数の傷跡もそれが原因。俺の総合評価はD+なのに、勇者たちはC+なのだ。要は、「赤児」と「大人」の差レベル。
いくら筋トレや策を練ろうと赤児は赤児なのだ。
ーーが、何もしない訳にもいかない。
だから俺は先ほどから剣をひたすら振るい、そして歴戦の騎士たちの戦いを食い入るように見ている。
俺が勇者たちとの圧倒的ステータスの差を解消できるもの、それは熟練度なのだから。
初日でそれに気付けたのは大きい。
「よし、ユウもうひと勝負行こう」
あらかた見終わり、自分のフォームも確認した後、ユウとの再戦を申し込む。
「いいぜ?叩きのめしてやるよ」
そう言ってユウは乗っかってくれた。
ふふふ、その自信満々な鼻をへし折ってやるよ!
「うりゃあああああああ!!!」
始まってすぐに渾身の一撃!上から下へと綺麗に振り下ろされた剣はまっすぐユウの元へとーーー行かず、空を切る。
「あぶねぇ!だが隙が空いてるぜ!」
「あ、ちょっ、待っ」
ズビシッ、と俺の額に剣がのめり込む。
そのまま俺は後ろへ地面に倒れこんだ。
「やっぱリアルは厳しいっすな....」
初日の感想。勇者強すぎぃ!
☆☆☆
ブゥーン、ブゥーン、と心地いい風切り音が庭を震わせる。
そのうち暑くなって裸になった上半身にはあざや傷が多い。取り敢えずの目標はこの傷達を少なくすることだ。
「ゆうまくん、なんだか生き生きしてますねぇ♪そんな顔されたら惚れちゃいますよ?」
「ふぁっ!!??」
「じょーだんですよー♪」
そしてなぜか縁側にはユリエ。いつも通りのメイド服で可愛らしく佇んでいる。
さっきから何が面白いのか、俺の素振りをずって見ているのだ。
「でもなんでいきなり素振りなんです?型もメチャクチャですよー?」
「仕方ないさ、だって俺に指南してくんないんだもん」
訓練中、教官はずっと勇者にベッタリだ。俺には何もしてくれない。この態度の差はなかなか心にくるが、もう無視することにしたのだ。
「・・・じゃあ私が教えましょうか?」
「・・・う?出来んの?」
「出来ますよう♪優しく教えてあげますね♪」
「いちいち言い方が・・・」
そんな会話をしながらも、ユリエは縁側を立ち、かけてあった剣を手に取る。
小柄なユリエには似合わない、大きめの剣だ。
ほんとに振れるのかなぁ......。
「ではしっかり見ておいてくださいよ?」
ユリエは俺の顔を確かめるように確認し、そして剣を振り上げる。
その無駄のない動きに思わず俺は感嘆の声を上げた。
綺麗すぎる。その容姿も相まって、まるで一種の芸術作品のようでーーー
ビュゥオオオオオオ、とものすごい風切り音。
ーー同時に圧倒的破壊の象徴でもあったのだ。
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